今、⽇本では韓国のヘア&メイクが⼤⼈気。韓国ヘアを得意とする理美容師さんもたくさんいますが、サロン経営、サロン運営についても、きっと参考になる事がたくさんあるはず!そこで、韓国のサロン事情を知るために、韓国の個性ある⼈気6サロンのオーナーにインタビューしてきました。
第3回は、ソウルの流行の最先端、清潭洞(チョンダムドン)エリアで2店舗を展開するAT NOWN PLACE代表 シン フさん。デザインサロンとしてお客さまのために何ができるか、教育はどうあるべきかを追求し、オープンから4年経った今、人気サロンへと成長しました。シン フさんに美容師としての考え方から韓国の最新トレンドまで、幅広くお話を伺いました。
この記事は参考になる!
この記事をあとで読む!
あなたの興味のある「#タグ」や「カテゴリ」「シリーズ」などを「気になる!」登録すると、関連するコンテンツがMy:TB-PLUSに自動で表示されるようになり、最新のコンテンツを見落とす心配や、コンテンツを探す必要がなくなりとっても便利です。

シン フさん
AT NOWN PLACEオーナー。2021年、AT NOWNを、2022年にAT NOWN PLACEを清潭洞にオープン。雑誌撮影や、様々なブランドのルックブックなど広告のヘアメイクを担当。2024年にマレーシア、シンガポールでカット&セミナー講師を務めるなど、韓国国内のみならず世界各国で活躍中。
2025年1月時点
――独立までの経緯を教えてください。

学生時代、トレンドに合わせてヘアスタイルが刻々と変化することに興味を持ち、美容師になろうと思いました。兵役中も理髪兵として仕事をしていたので、美容師歴はトータルで約20年になります。数多くの美容室が軒を連ねる清潭洞(チョンダムドン)でキャリアを重ね、独立前に勤務していたサロンでは約10年間お世話になりました。そのサロンではスタイリストとして順調に売上を伸ばし、店舗の代表も務めましたが、お店の将来的な方向性や人材育成に対する自分なりの考え方が芽生え、自分の価値観を存分に発揮できる場所をつくりたいと思い、2021年にAT NOWNをオープンしました。エッジの効いた個性的なヘアスタイルというより、ライフスタイルになじみ、多くの人に愛されるヘアスタイルを提供することをコンセプトとしています。
――1店舗目をオープンした1年後にAT NOWN PLACEをオープンした狙いは何ですか?

AT NOWNから徒歩十数分の場所に、2店舗目のAT NOWN PLACEをオープンしたのですが、派手になりすぎない、モダンでソフトミニマルな内装にしました。2つの店舗が近いのでお客さま層は大きくは変わりませんが、AT NOWN PLACEではブライダルメニューを取り入れ、ブライダルを手掛ける企業と連携しながらお客さまの人生最良の日のお手伝いをしています。ブライダルは前々からやってみたかったのですが、ブライダルだけでなく、お客さまによりビューティの文化を幅広く楽しんでもらおうと思い、AT NOWNよりも大きな規模のサロンをつくり、随所に面白い体験ができる工夫を施しています。
――AT NOWN PLACEの特長は?

AT NOWNは1フロアでスタッフは8名ですが、AT NOWN PLACEは3階建ての構造で広さが2倍ほどあり、スタッフも16名ほど在籍しています。清潭洞は芸能人のヘアメイクやブライダルを手掛けるサロンが多いのですが、僕はそれとは違う打ち出しをしたいと思いました。スタイリストによってそれぞれシグネチャースタイル(特徴的な得意なヘアスタイル)があり、それを強みにしています。なので、カラーが得意な人もいればパーマが得意な人もいて、サロン全体としてはあらゆるニーズに対応できるようになっています。お客さま層も20〜50代まで幅広く、清潭洞の方のみならず、シグネチャースタイルを求めて遠方から来るお客さまもたくさんいます。
――大人世代のお客さまも多いとのことですが、ヘッドスパは人気がありますか?
シャンプー台を備えた個室があるので、それを生かすべく2024年の秋頃からヘッドスパメニューの開発に取りかかっています。以前はそれほど関心がなかったのですが、お客さまの頭皮環境への意識が高まり、ヘッドスパを導入するサロンも増えているので導入することにしました。健やかな頭皮環境と癒し、この両面からアプローチできるメニューを提案したいと考えています。
――男性客も多いですか?

僕自身のお客さまは男性と女性がだいたい半分ずつですが、若手スタイリストはシグネチャースタイルを求める女性客を数多く抱えています。中には男性客のほうが多いスタイリストもいます。最近の男性客はカットだけでなくカラーやパーマもする人が多いので、AT NOWN PLACEで売上1位、2位になるスタイリストは多くの男性客を抱えています。中でもユウン君というスタイリストはお客さまを男性だけに絞り、男性向けのシグネチャースタイルを打ち出して多くのお客さまからの人気を集めています。
――AT NOWN PLACEのインテリアのこだわりは?

お客さまから見える所にワゴンやツールがたくさん置いてあるような、ごちゃごちゃとした空間にはしたくなかったので、なるべく物は置かないようにしたり、見えない所に置くようにしたりして、シンプルな空間になるよう心掛けています。高級感をベースに、配管をあえて見せて天井を高く感じさせるユニークな内装も取り入れ、インテリアのアクセントにしています。全体としてはブラックとホワイトを基調にしたいと考え、以前から知っていたタカラベルモントさんのスタイリングチェア「RABBIT CAPTAIN Ⅱ」のホワイトを採用しました。インテリアになじみ、高級感を際立たせてくれるのはもちろん、お客さまからは「座りやすくて疲れにくいですね」とのお声をいただいています。
――AT NOWN PLACE は3階建てとのことですが、各階の役割の違いは?

AT NOWNがセット面14席であるのに対し、AT NOWN PLACEは20席。AT NOWN PLACEのほうがかなり広いので、各セット面に余裕を持たせています。もっとセット面を増やしてスタッフも多めに採用することもできましたが、お客さまがプライベートな雰囲気を感じられる空間にしたいと思い、1階は半個室にしています。半個室はスタッフの動線的には不便に感じる部分もありますが、お客さま満足につながりましたし、コロナ禍での感染対策にフィットしました。2階はヘアとメイクを同時にできるスペースになっており、3階は施術ができると同時に講習会などのアカデミックな場所としても活用できるよう、イスなどを動かせるようになっています。3階では年に1回は展示会を行ったり、撮影をしたりして、マルチな空間として活用したいと考えています。
――スタッフ教育はどのようにされていますか?

オープンしてまだ3年なので教育システムがしっかり体系化できているわけではありませんが、2カ月に1回設けている、先輩と一緒にいろいろな工夫を凝らしたり修正したりしながらヘアスタイルをつくる時間が教育になっています。
さらに、スタイリストにはレベル1、レベル2というように階級があり、年2回ある昇給試験を受けて合格すると階級が上がる仕組みです。試験では、シグネチャースタイルをつくり、それについてしっかり解説します。解説ができるようになるということは、自分自身の技術や知識がしっかり整理できている証拠であると同時に、解説により他のスタッフもそのヘアスタイルについて学ぶことができます。
また、自分たちが表現したいヘアスタイルを年3回ほどシーズンごとに撮影してデザインブックをつくり、教育の一貫として活用しています。カジュアルでもコンサバでもなく、AT NOWNだからこそ提案できるヘアスタイルをつくって個性を表現し、その価値観をスタッフ全員で共有することを大切にしています。ハイブランドのルックブックのようなものですね。お客さまに配布することはありませんが、店内に作品を飾ったり、「こういう本をつくりました!」ということをSNSにアップし、ブランディングに役立てたりしています。
――その他に教育の一貫として行っていることはありますか?

独立前に働いていたサロンではヘアショーのステージに出ることもあったのですが、AT NOWNを設立してからはなかなか機会がありませんでした。2024年9月に開催された日本のイベントで久しぶりにステージに出演し、改めてヘアショーに出ることの意義を感じたんです。2025年はヘアショーに積極的に参加したいですね。美容師はいろいろな分野に興味を持ち、様々なことを吸収し、感性を磨かなくてはなりません。ヘアショーやコンテストに積極的に参加することでモチベーションが上がり、技術の向上にもつながると考えています。以前はデビューまで5年かかるのが普通でしたが、最近は3年ほどに短くなりました。5年で身につけていたことを3年で習得するのはなかなかハードルが高いですが、デザインサロンとしてどんな教育をするべきか、模索中です。短期間でなるべく多くのことが身につけられるよう、試行錯誤しています。
――トレンドはどのように掴んでいますか?

コロナ禍以前は展示会やグラフィックデザインの美術館などに行って着想を得たり分析したりしていたのですが、最近はYouTubeなどのSNSがより活発になり、スマホでトレンドをチェックすることが多くなりました。中でもミラノやパリなどで行われるファッションショーをよく見ます。プラダやバレンシアガ、ルイヴィトンなどはクリエイティブディレクターが変わるたびにデザインも変わるため、そこに注目し、来シーズンにどんなヘアスタイルが流行るのかを予測するための参考にしています。また、WEBで雑誌が読めるようになったので、ファッションショーと雑誌、主にこのふたつからトレンド情報を収集しています。今までは自分1人でトレンドを生み出そうとしていましたが、これからはスタッフと一緒に分析し、トレンドを肌で感じて把握していきたいです。
――韓国のトレンドについて教えてください。

韓国はトレンドの変化が早いですね。この1〜2年で流行しているのはレイヤースタイルに強すぎないカールをつけるレイヤーパーマや、毛先にカールをつけて動きを出し軽やかに見せる毛先パーマ、根元から毛先までカールをつけ、ドライな質感を楽しむビンテージパーマなどが流行っています。いずれもロングヘアがベースですが、ミディアムも人気があります。カラーは地域によってトレンドが異なります。弘大(ホンデ)や梨泰院(イテウォン)はブリーチやパステルカラー、デザインカラーが流行っていますが、漢南洞(ハンナムドン)や清潭洞ではエレガントな色をポイントで入れたり、洗練されたダークトーンカラーが流行っています。
――パーマはホット系パーマが主流ですか?
韓国ではホット系パーマがとても流行っているので、前述のパーマはホット系パーマで施術することがほとんどです。キャリアが長い美容師はホット系もコールドも両方できますが、若手の美容師だとホット系パーマを中心に学んでいるため、コールドパーマには自信のない人が多いと聞きます。最初にホット系パーマが流行った頃は「ダメージが大きい」と感じるお客さまが多かったのですが、時を経て技術や粧剤がアップデートされてダメージの心配が軽減し、今では「長持ちして手入れが簡単」という印象を持たれることが多くなりました。ホット系パーマはコールドパーマの約2倍の料金ですが、コールドパーマを繰り返すよりもホット系パーマを好む方が多いです。
――2025年の春頃に流行りそうなヘアスタイルは?

女性の場合はカールデザインが流行ると予測しています。男性の場合は最近はうしろ髪を短くするさっぱりとしたダンディスタイルが流行っていたのですが、これからはうしろ髪を長めに残すヘアスタイルが流行しそうです。ヘアスタイルのトレンドはすぐに移り変わっていくのですが、以前流行っていたものがまた流行る、ということを繰り返す側面もある気がします。カラーでいえば、ずっとアッシュ系が人気でしたが、最近はシアーなレッドやオレンジが流行っています。若手スタイリストたちがそれにキャッチーな名前をつけて発信することが多いです。
――ご自身の夢と、若い美容師さんへのメッセージをお願いします!

僕は有名サロンで長く働き、キャリアを重ねていく過程で自分のスタイルを徐々に確立していきました。若い時はお客さまとよく話したり、ファッションに強い興味を持ったりする情熱的なタイプでしたが、年齢と共に時には技術者として黙々とカットをし、落ち着いた感じになってきたと思います。その間、ずっと変わらずに大切にしてきたことは「芯を持って仕事をし、美容師として成長すること」です。今の若い美容師さんは派手なことばかりに興味が行きがちですが、美容の本質を見極め、美容師としてのあり方を考えて行動してほしいですね。僕個人の夢としては、AT NOWNをもっと成長させ、AT NOWNからスター美容師を輩出したいです!
<韓国関連記事>
~TABEちゃん海外探訪記~ 韓国でヘアサロンと生活者のリアルを現地調査!トレンドスポットも紹介!
韓国サロン訪問レポート #1 Kカルチャーを彩るヘアメイク――高い再現性で魅力を引き出す
韓国サロン訪問レポート #2 韓国のガールズグループを手掛け、世界を舞台に活躍!
韓国サロン訪問レポート #3 トレンドを敏感に掴み、シグネチャースタイルをサロンの売りに ★今回はコチラ
韓国サロン訪問レポート #4
韓国サロン訪問レポート #5
韓国サロン訪問レポート #6
-
ECILA導入サロンが登壇! 美容師が本音で語る、DXの前と後
この記事は
参考になる!
この記事を
あとで読む!
-
理美容師もキャリアの選択肢が広がっている? TABEちゃんが密着取材!
この記事は
参考になる!
この記事を
あとで読む!
-
ドラマチックなW受賞に大歓声! 『id 2024』ファイナルステージレポ
この記事は
参考になる!
この記事を
あとで読む!
TB-PLUSは、タカラベルモント株式会社が運営している<サロンとあなたの“明日”に役立つ情報サイト>。
クリエイティビティを刺激するトレンド情報からサロン経営のヒントまで、成長と意欲につながるトピックやノウハウをお届けし、あなたのサロン人生を応援していきます。
\友だち追加 お願いします♪/
LINE公式アカウント タカラベルモント for salonで、最新情報を発信中!
この記事は参考に
なりましたか?
この記事は参考になる!
この記事をあとで読む!
あなたの興味のある「#タグ」や「カテゴリ」「シリーズ」などを「気になる!」登録すると、関連するコンテンツがMy:TB-PLUSに自動で表示されるようになり、最新のコンテンツを見落とす心配や、コンテンツを探す必要がなくなりとっても便利です。