大阪・関西万博を契機に、タカラベルモント(株)・読売新聞社・(株)金森合金の3社共同で立ち上げた「サステナビリティ×工芸」プロジェクト。異なる分野の3社がつながり、持続可能な社会を実現するため、資源の循環をテーマにした新しい“ものづくり”の形を提示しました。今回は、共同制作された工芸品「ORIZARA」の誕生秘話と、2025年6月に大阪・関西万博で開催された体験型ワークショップの様子をレポートします!
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「サステナビリティ×工芸」プロジェクトメンバーのプロフィール

金森合金 24代目 高下 裕子さん
創業1714年、加賀藩主・前田家に仕えた鋳物師七人衆をルーツに持つ金森合金で、現在24代目として事業を承継中。地域の金属廃材をマイクロサイクルする、循環型ものづくりを継承しています。

読売新聞大阪本社 役員室幹事 兼 万博事務局長 吉田 光一さん
スポーツ、文化、エンタメなど多様なジャンルで、30年以上にわたりイベントの企画・制作・実施に携わってきました。本プロジェクトとの出会いに感謝し、多くの方と想いを共鳴できると信じています。

タカラベルモント サステナビリティ推進室 室長 中山 健太郎さん
理美容機器の企画・設計・開発を担当。2023年よりサステナビリティ推進プロジェクトのリーダーを務め、2025年4月にサステナビリティ推進室の室長に就任。グループ全体でサステナビリティを軸とした経営の実践を目指し、日々尽力しています。
※2025年7月現在
レポーター

はまもとゆま
元美容師。現在は取材ライター・カメラマンとして活動中。今回は、美容師時代によく使っていたヘアカラー剤のチューブがどんな姿に生まれ変わるのか、ワクワクしながら取材に伺いました!
※2025年7月現在
使用済み素材から生まれた工芸品「ORIZARA」

使い終えた素材に新たな価値を与え、地球環境に配慮した持続可能な仕組みを通じて、伝統的な技法を活かした“工芸”の文化を未来へつなぐことを目指す本プロジェクト。使用済みのヘアカラー剤のアルミチューブと、新聞の刷版を金森合金の鋳造技術で再生し、工芸品『ORIZARA』が生まれました。
一般的には、アルミ素材は軽量で熱伝導率が高く、何度も再利用できるリサイクルに適した優秀な素材です。一方で、使用済みヘアカラー剤のアルミチューブは中に残る薬剤の処理が難しく、再利用されにくいという課題がありました。この課題に挑んだのが、石川県金沢市で300年以上にわたって砂型鋳造技術を継承する金森合金です。

高下裕子さん(金森合金 24代目)
高下さん「私たち金森合金は、昔は流通網が発達していなかったことから、地域の使い終えた金属を精錬し、新たな製品へと生まれ変わらせてきました。そうした中でも、今回のアルミチューブという素材はこれまで扱ったことがなく、初めての挑戦となりました。
加工に入る前に、まず入念に成分分析を行うところから始まりました。使用済アルミチューブを精錬すると鉄分が多くなる傾向があります。製造業として、日本産業規格(JIS)に適合する素材でなければ製造業のサイクルに乗せることができません。そのため、鉄の比率を抑えることが大きな課題となりました。
私たちは長年にわたり、金属素材を調合して日本産業規格に適合させる精錬技術を磨いてきたので、今回もその知見を活かし800度以上の高温で素材を溶解しながら、JISに適合する安定した品質へと仕上げることができました。
初めて扱う素材であっても、技術を尽くせば再び命を吹き込むことができる。そんなものづくりの本質を改めて感じました。」
ORIZARAがもたらす工芸品としての新たな形

工芸品と聞くと敷居が高く感じますが、「ORIZARA」は、生活の中に自然と溶け込むデザインと用途の広さが特徴的です。万博に出展参加するタカラベルモントの展示のモチーフになった「インフレータブル構造」の原点でもある「折り紙」から着想を得たデザインで、光の当たり方によって表面の模様が様々な表情をみせてくれます。重厚感のある見た目とは裏腹に、手に取ると驚くほど軽いのも特徴的。お皿として使うのはもちろん、アクセサリーのトレイやインテリアとしても活躍してくれそうです。アルミという身近な素材である点も、より現代的な親しみやすさを感じさせてくれます。
理美容業界と“つくる責任、つかう責任”
ヘアカラーは今やヘアサロンの主力メニューのひとつになっています。その一方で、見過ごされがちなのが、使用済みヘアカラー剤のアルミチューブの存在です。
令和5年経済産業省生産動態統計をもとに推計すると、約2,500トンが流通しているとされますが、中に残る薬剤や素材の分別が難しいことからリサイクルのハードルが依然として高いのが現状です。
「リサイクル」という言葉は知っていても、何気なく使っている資材の“その後”がどうなっているのか知らない人も多いのではないでしょうか。資源の有限性が叫ばれる今、「使い終えたものを資源と捉え、循環させていく」という視点は、これからの美容業界にとっても欠かせないテーマです。今回の「サステナビリティ×工芸」プロジェクトは、そんな課題に向き合いました。

中山健太郎さん(タカラベルモント サステナビリティ推進室 室長)
中山さん「ヘアカラー剤のアルミチューブは多くのサロンで使われていますが、回収や再資源化の仕組みはまだ整っていません。現状は、関心の高い理美容サロンの方々がボランティアベースで取り組んでいる状況です。今後はこの取り組みを業界全体のスタンダードへと育て、使い終えたものが再び価値あるものとして循環する仕組みを構築していきたいと考えています。」
「EXPO共鳴フェス」ワークショップレポート

大阪・関西万博内のEXPOメッセ「WASSE」にて2025年6月18日、19日に開催された「EXPO共鳴フェスー万博から描く未来社会の技術、デザインー」にて、タカラベルモント、金森合金の「サステナビリティ×工芸」の再生材を使用した2種類のワークショップが行われました。
菓子切り刻印体験

石川県金沢市にある金森合金にちなんで、地元の伝統文化でもある茶道具に欠かせない「菓子切り」を使った刻印体験が行われました。
今回のプロジェクトでつくられた再生アルミ素材から製品を作り、雉・魚・卯の3種類のモチーフから好きな形を選んで、アルファベットや数字を刻印。世界にひとつだけのオリジナル菓子切りを作ります。
参加者の方は「どんなデザインにしよう?」とワクワクした様子でハンマーで刻印を打ち込みます。作業は簡単そうに見えて実は難しく、何度も練習しながら取り組む姿が印象的でした。完成した作品を手にして、うれしそうな表情を見せてくれました。

レザーの端切れを用いたポーチづくり
タカラベルモントが展開する「Re:bonis(リボニス)」は、自社工場で椅子を製造する過程で生まれるレザーの端切れに新たな価値を与える取り組みです。その一環として、今回のワークショップでは端材を使用した「レザーの端切れを用いたポーチづくり体験」が行われました。


Re:bonisの取り組みについてはこちら
https://www.takarabelmont.com/rebonis/
体験では、好みの色や質感のレザーの端切れを選び、自分だけのオリジナルポーチを作成しました。

ワークショップ全体を通して大人からお子さままで様々な年齢層の参加者が集まり、「楽しかった!」という声が多く聞かれました。ワークショップブースでは工芸品「ORIZARA」も展示され、「いつもしているヘアカラーで使われている素材でできているなんて驚いた!」「とても素晴らしい取り組みだと思う」といった反応がありました。
「サステナビリティ×工芸」プロジェクトの今後の展望
大阪・関西万博のコンセプトである“未来社会の実験場”として3社が共鳴してスタートした今回の実験的なプロジェクト。今後の展望について伺いました。

吉田光一さん(読売新聞大阪本社役員室幹事兼万博事務局長)
吉田さん「使い終えた素材が工芸品として形を変え、完成したものは、何十年、あるいは何百年先の未来にまで受け継がれていきます。そんな“未来に残るものづくり”を、これからもっと広げていきたいと考えています。この志に共感してくださる方はもちろん、使用済み素材の活用に関心をお寄せいただける企業やデザイナー、完成品を導入してくださるホテルなど、新たな仲間ともつながっていけたら嬉しいです。限りある資源を大切にし、未来に残す——そんな想いを共鳴させながら、このプロジェクトを広げていきたいですね。」
中山さん「工芸品には“長く使い続けることで愛着が深まり、文化的価値も高まっていく”という魅力があります。今回のようにアルミ素材に限らず、さまざまな素材をアップサイクルし、パートナーと協力しながら多様な工芸品を生み出していくことで、サステナビリティという価値観が作品と共に未来へ受け継がれていく取り組みを今後も広げていきたいと思っています。」
「ORIZARA」はどこで手に取れるの?


「ORIZARA」は中皿(税込5,500円)と、小皿(税込4,000円)の2種類のサイズ展開。大阪・関西万博の会期中は宮田裕章シグネチャーパビリオン「Better Co-Being」のショップにて購入可能です。ぜひ足を運んでみてくださいね。
まとめ
「サステナビリティ×工芸」プロジェクトは、異なる分野の企業が手を取り合い、使い終えた素材にもう一度命を吹き込む、“未来に残るものづくり”を形にした取り組みです。
使い終えたものたちが伝統技法によって美しい工芸品へと生まれ変わった姿を見て、驚きとその可能性の素晴らしさに心が躍りました!同時に、これまで見過ごしがちだった“使った後”の資材の行方に意識を向けるきっかけをもらった貴重な体験となりました。
※2025年7月時点の情報です。
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