今、⽇本では韓国のヘア&メイクが⼤⼈気。韓国ヘアを得意とする理美容師さんもたくさんいますが、サロン経営、サロン運営についても、きっと参考になる事がたくさんあるはず!そこで、韓国のサロン事情を知るために、韓国の個性ある⼈気6サロンのオーナーにインタビューしてきました。
第6回は、サブカルチャーの発信地としても有名な弘大(ホンデ)エリアで、16年間トレンドをリードしているYANGLEE HAIR(ヤンリー ヘアー)代表のヤンリーさん。コンテストへの出場、韓国初の技術解説本やヘアカタログの出版にも取り組み、韓国の理美容業界の発展に貢献してきました。今回は幅広い世代の顧客に対応できる技術力を養うための工夫や、長きにわたって顧客を魅了し続ける秘訣などをお聞きしました。
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ヤンリー
YANGLEE HAIRオーナー。1974年生まれ。韓国でのヘアスタイル撮影の先駆者で、ヘアフォトシューティング講師国内第1号として活動。カット、カラー、ブランディング等のセミナー講師としても人気が高い。サロンワークをベースに様々なコンテストに出場し、多数の受賞歴を誇る。また、ICD ASIA HAIR SHOWにチームKOREAとして参加するなど、国内外のヘアショーに参加。
2025年3月時点
――理美容師を目指したきっかけは?

以前は化粧品会社に勤めていたのですが、兵役中に理髪兵から髪を切ってもらった仲間がとても喜んでいたのを見て、自分も理美容師になりたいと思ったのがきっかけです。最初は特に美容そのものに興味があったわけではありませんでしたが、勉強を重ねるうちに興味が湧き、意外に自分に合っていると感じたんです。美容師免許を取得し、サロンに就職してスタイリストになりました。その後、店長になり、2009年、弘大にYANGLEE(ヤンリー)をオープンしました。一般企業で4年間会社員を経験してから理美容師になったので、スタートが遅い分、他の人よりも一生懸命がんばってきた自負はあります。
――サロンのコンセプトは?

弘大は流行に敏感な若者が集まる街なので、20〜30代に流行しているヘアスタイルを提供し、トレンド最先端のサロンとして多くの人から支持されたいと考えました。また、弘大はサブカルチャーの発信地としても知られており、街中がアートであふれる場所でもあるので、他の人とは違うちょっと個性的なヘアスタイルを提案することも大切にしています。清潭洞(チョンダムドン)は大手のブランドサロンが複数ありますが、弘大にはスタイリストの個性を活かすことで人気を得ているサロンが多く、当店もその1つといえると思います。韓国全体でも、人気サロンは、ブランドサロンやフランチャイズサロンからトレンドサロンやスタイリッシュサロンに移行しつつあるように感じています。
――主なお客さま層を教えてください。
25〜35歳が中心ではありますが、スタイリストの年齢によってお客さま層が異なります。僕は美容師歴26年なので40〜70歳くらいの方が中心ですが、若いスタイリストは20〜30歳のお客さまが中心です。弘大はスタイリストもお客さまも若い人ばかりと思われがちですが、長年経営しているサロンなので、結婚や出産を経て復帰したスタイリストもいますし、お客さまの年代も幅広いです。1人のお客さまと長くお付き合いできるのは、美容師冥利につきますね。
――価格設定はどのようにされていますか?

スタイリストのキャリアによって異なりますが、カットは3,000〜6,000円くらいです。指名料はありません。技術力が上がれば本来もっと価格を上げるべきだと思いますが、上げすぎると20〜30代のお客さまが来店しづらくなってしまいます。最初は比較的、気軽に来店いただき、長く通うようになれば価格が上がっても受け入れられると考えています。スタイリストによって基本の価格は決まっていますが、万が一、お客さまが仕上がりに納得できなかった場合は施術料金を無料にしてもよい、逆に大きな満足を得られた場合は基本の価格より多くいただいてもよい、というルールにしています。「なぜ無料にしたんだ!」と言って僕が怒ることはありません。
――人気のメニューを教えてください。
弘大といえばカラー、というイメージがあるかもしれませんが、カラーもパーマも両方人気があります。ただ、落ち着いた色味のカラーが中心の清潭洞と比較すると、弘大はダークトーンからハイトーンまで、色味もデザインも幅広いニーズがあります。今はブラウン系カラーをオーダーする人が減り、完全な黒髪や全頭ブリーチ、シルバーなど単色のブリーチオンカラーが流行っています。パーマに関しては、清潭洞はホット系パーマでつくる上品なパーマが多いですが、弘大は個性的なパーマが人気です。弘大の理美容師はみんな、カラーが得意なのでパーマを学ぶ人が多く、清潭洞の理美容師さんたちはその逆で、カラーを勉強する人が多いです。
――YANGLEEさんの強みは何ですか?
基本的にはカット技術を大切にしています。リピーターを数多く抱えるにはカット技術が高いことがとても大事なんです。5年前からカラーに注力したところ、カラーも上手なサロンだと言われるようになったのですが、カラーばかりに注力してしまうとバランスが悪いので、カットをベースとしつつパーマもしっかり提案できるよう心がけています。最近はカラー特化型のサロンが増えていますが、長い目で見るとお客さまの髪をケアすることが難しくなってしまいます。トータル的に高い技術を身に付けたスタイリストが、さらにそれぞれ得意分野を持てば、サロン全体で様々なトレンドに応えることができます。そのバランスを考えるのもオーナーの役目です。
――スタッフはどのように学んでいますか?
興味のあるメニューだけを集中的に学ぶというよりはバランスを重視し、トレンドを押さえながら様々な技術をすべて網羅するようにすることを大切にしています。何かに特化してそのメニューだけ学ばせたり、1年ほどの短期間でスタイリストにさせたりするサロンもありますが、それでは成長できないと思い、3年かけてすべての技術を習得する仕組みになっています。また、InstagramやYouTubeなどのSNSから最新の技術や情報を収集することが多いですが、見ただけで「できるから、いいや」とやり過ごさず、しっかりウィッグで練習を重ねるのが当店スタッフの強みです。僕が継続的にスタッフに直接指導もしますし、実際に手を動かすことの大切さを伝えていることがスタッフの練習意欲につながっていると思います。
――今後、力を入れたいメニューは何ですか?
メンズヘアです。男性にもパーマを提案して単価をアップしたり、新しいデザインを生み出したいです。現在の客数比率は、男性4:女性6ですが、売上比率では男性5:女性5です。僕が美容師になった頃と比べて、男性の美意識は劇的に高くなりました。韓国全体でもメンズパーマが流行っているので、今後はもっと違うデザインのメンズパーマを提案したいです。男性はトレンドを取り入れつつ基本のスタイルは守りたい方が多いので、基本となるカット技術もさらに向上させていきたいです。
――ヘアショーやコンテストに関してはどのようなお考えですか?
僕はファッションデザイナーがファッションショーに出るように、理美容師ももっと積極的にヘアショーのステージに立ち、自分のアイデンティティを表現したほうがいいのではないかと常々思っていました。日本でヘアショーを観てとても印象に残ったことも、興味を持つきっかけになりました。これまで数多くのヘアショーに出演したことは、26年のキャリアの中で力を注いできたことの1つです。また、韓国ではコンテストに興味を持ったり出場したりする理美容師が少なかったのですが、僕は2004年から積極的に参加し、賞も獲りました。2022年までは自分が出場していましたが、その後はスタッフが様々なコンテストに出場して入賞や優勝するようになっています。韓国の中でも当店のコンテスト受賞歴はトップクラスだと思います。
――セミナー講師もされていますが、どのような内容が多いですか?

3〜5年前までは技術的なセミナーが多かったですが、最近は経営に関するセミナーが多いです。僕は韓国ではいち早くヘアカタログの撮影を取り入れたので、撮影用のヘアスタイルのつくり方や写真の撮り方もこれまでたくさんレクチャーしました。さらに、セミナーを通して培われた技術や理論をまとめたカットやカラーの技術本やスタイルブックなども出版しています。「ハイライト」の技術本も出版し、大きな反響がありました。もともと韓国には技術に特化した本がなかったんです。日本を訪れた際にそういった技術本を目にして興味を持ったことが出版への第一歩でした。1998年以降、頻繁に日本を訪れたことがヘアショーや本の出版へと僕を導いてくれましたし、日本の理美容師さんから学んだことがたくさんありました。
――インテリアのこだわりを教えてください。

照明をウォームトーンにするとアッシュ系カラーが色ブレして見えることがあるので、カラーが分かりやすいクールトーンの照明にしています。クールトーンの照明は顔色もよく見えるので、お客さまから好評です。また、セット面でカットからパーマまですべて施術できるよう、可動式の機器を取り入れています。基本的にインテリアはシンプルにし、スタッフのファッションやヘアスタイルが際立つように考えました。オープン当初は観葉植物を11個ほど置いていたのですが、いらなかったかなと(笑)。ここで働く人たちが生き生きと見えるよう無駄な物は置かず、お客さまやスタッフがスムーズに動ける動線を確保することをいちばん大事にしています。庭は喫煙スペースとして活用したり、お客さまが子どもやペットを遊ばせたりもしています。それを見ると幸せな気持ちになりますね。
――お店が1階と5階に分かれていますが、コンセプトが異なるのですか?

最初は1階だけだったのですが、お客さまやスタッフが増え2024年に5階に増床したので、コンセプトそのものは一緒です。ただ、スタッフの中でもより自分の個性を強く打ち出せるメンバーを選出して5階に配置したので、5階のインテリアは多少1階より個性的な雰囲気にしています。1階はセット面が22面、スタイリスト6名、アシスタント6名、5階はセット面が14面、スタイリストが4名、アシスタントが4名です。増床してからもお客さまが増えてきたので、スタッフを募集しようと考えています。

――美容師として大切にしていることは?
お客さまとスタッフの信頼関係を大切にすることです。売上が伸びてくると価格を一気に上げたり、丁寧さを忘れたりする人もいるようですが、お客さまから信じて任せてもらえる理美容師であり続けることが大事です。
スタッフとオーナーの信頼関係も大事です。成長できる環境があり、オーナーもそれを見守ってくれている、そんな関係性を築けることが理想的です。長年勤めているスタッフが多いのはうれしいことですね。いろいろなスタッフがいるので人間関係がうまくいかないときもありますが、うまくいかなくて当たり前という覚悟を持ち、スタッフを信じることを大切にしています。
――採用は新卒が中心ですか?
中途採用は行っていないので、すべて新卒採用です。2時間かけて面接を行い、お互いにリラックスして話ができるかどうかを見ます。技術は教えれば上達しますが、気持ちが通じ合わない人を変えることはできません。それを判断するためにじっくり話をしています。新卒の子を一から育て、「YANGLEE」らしさを培いながらどんどん成長できるサロンづくりを心がけています。堅苦しい雰囲気ではなく、スタッフ同士が友人や家族のように接することができるようなサロンでありたいです。

――多店舗展開についてはどうお考えですか?
お客さまの増加に伴ってスタッフも増えているので、自ずと店舗を増やさなければいけない状況になっていますが、多店舗展開はあまり考えていません。店舗が増えると経営と向き合う時間が増え、僕自身がサロンワークをする時間が取りづらくなります。できる限りハサミを置くことなくサロンに立っていたいんです。マーケティングやブランディングを上手にしているサロンもありますが、僕は基本的に「近所にあるサロン」という感じで、お客さまが楽しくお話できるようなリラックスできる空間を提供したいと思っています。大きな売上を上げることより、お客さまと生涯寄り添い、おもしろいことを一緒にやりましょう、という気持ちが強いです。店舗数を増やしたり儲けたりすることよりも、スタッフが技術を身に着け人としても成長できることを大切にしています。
――海外からのお客さまも来店されますか?
日本や台湾、香港からも来ますし、在韓米軍のアメリカ人の方も来店されます。観光客が多く、日本から韓国に来たら弘大を訪れる人も多いと思います。英語が話せるスタッフもいますが、翻訳機があるので特に問題なくコミュニケーションができています。今の若い世代は英語ができなくても積極的にコミュニケーションを取るのですごいなと感じています。

――長きにわたって弘大で人気サロンであり続けている秘訣は?
弘大ではサロンが新規出店したり、廃業したりすることがよく起こり、16年間続けているサロンは少ないと思います。常に最新のトレンドを追い求めて走り続けてきましたが、当然お客さまも年齢を重ね、そこにフィットした提案ができなければいけません。特に僕のお客さまはグレイカラーをオーダーする方が増えてきたので、グレイカラーの勉強は欠かせません。2014〜2015年にかけて、流行のヘアスタイルから普遍的なヘアスタイルまで対応できるよう、ボブを中心にカットスキルを強化しました。それをきっかけにスタッフのモチベーションが上がったと感じています。お客さまに合わせてスキルアップすることは、本来当たり前のことですが、この「当たり前」が意外とできていない人もいます。理美容業を仕事と捉えるのではなく、お客さまやスタッフとコミュニケーションを取るための機会と捉えれば、楽しく勉強が続けられると思います。
――2024年にメンバーになられたICD※の活動についてお聞かせください。
2024年に東京で行われたICDのヘアショーに出演しました。またヨーロッパでも様々な国のスタイリストと話をする機会を持つことができました。「売上はいくらですか?」とか「何店舗経営しているのですか?」ということではなく、今までつくった作品のことや店舗で実践していることなど、理美容師の仕事について深い話をたくさんできたことがうれしかったです。
※インターコワフュール モンディアル。世界の美容家で組織された国際機構。パリに本部が置かれ世界約50カ国に支部があり、加盟サロンは2,000軒を超える。
――世界中の理美容師にメッセージをお願いします。

最近は早くスタイリストになり、売上や社会的な地位を上げようとする人が多いように思いますが、自分がやりたいことを長く元気に続けることの大切さも知ってほしいと思います。
僕も50代になり、若いスタッフから「疲れていませんか?」とよく聞かれます。正直、疲れることもありますが、たとえどんなにしんどくても、お客さまのためにスタッフのためにがんばる理美容師でいたいですね。理美容師として恥ずかしくない行動、技術、接客を心がけ、真摯に美容と向き合っていきたいです。立ち仕事ですし、夜遅くまで仕事をすることもあって大変ですが、理美容師のようにお客さまと長く接することができる仕事は他にありません。たくさんのお客さまから支持され、ヘアスタイルを任せていただけるのは本当にありがたいことです。それを思えば苦しいことばかりではないはずです。僕は生まれ変わってもまた理美容師になりたいです。みなさんも体に気をつけて、理美容師としての仕事を長く続けてください。
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