夫婦それぞれフォロワー10万人以上！SNSで選ばれるサロン経営

幼い頃から美容やファッションに興味があり、中学生の時に担任の先生から理美容師になることを勧められました。高校は美容科に進学して理美容師になろうと思っていたのですが、両親に反対されてしまったんです。その後、海軍に入隊して理髪兵を経験し、兵役を終えてから再度、両親を説得してようやく理美容師になりました。

理美容師になる夢を叶えた僕はソウルの清潭洞（チョンダムドン）でキャリアをスタートさせました。清潭洞は大人世代に人気がある、落ち着いた雰囲気の街です。そこで理美容師である妻と出会い、結婚。清潭洞から橋を渡った漢南洞（ハンナムドン）に1店舗目を出店しました。

清潭洞と漢南洞はとても近いのですが、漢南洞はソウルの中でもファッションの最先端を行く街で、若い人や外国人観光客が多く集まる場所です。SNSを駆使して宣伝やブランディングを行うことで、漢南洞という街の魅力を感じてもらい、サロンへの集客にもつなげようと考えました。その1年半後には、LOAB ATELIERからそう遠くない場所に支店であるLOAB FLAGSHIPを出店し、経営が軌道に乗ってきました。

独立前に勤めていたサロンはメニュー単価が高い方でしたが、LOABをオープンした時に価格を下げたんです。コロナ禍での出店でしたが、価格を下げたことが功を奏し、僕や妻のお客さまの多くがLOABに来てくれて、おかげさまでそれほどコロナの影響を受けませんでした。また、僕は8年間インスタを続けており、フォロワーが約10万人いて他の理美容師さんよりかなり多いほうだと思うので、それも良かったんだと思います。漢南洞エリアは家賃も高いですが、これからもトレンドサロンとしてがんばっていきたいです。

お客さまの95％が女性で、男性は5％です。美容感度の高い若いお客さまが多く、このエリアに住んでいる方ではなく、ショッピングや観光で訪れる方をターゲットにしています。私たちやスタッフのインスタを見て来店される方も多いです。このあたりは地価が高いため、住んでいるのは50代以上の人が多く、そういった方が来店されることもありますが、ほとんどは20代後半〜30代半ばの女性です。男性客も多少いますが、ほとんどが彼女に連れられて来店される方です。また、日本や中国からのお客さまも多くいらっしゃいます。

ホット系パーマが人気で、ホット系パーマ比率は50％、カット＆カラー比率が30％です。2024年の夏はハイトーンカラー、中でもアッシュ系カラーが人気でした。また、LOABではヘアアレンジもとても人気があり、15〜20％の方にオーダーいただいています。漢南洞はセレクトショップやアパレルショップが多く、おしゃれに敏感な若い女性がよく買い物に来るエリアなので、買い物の気分転換でヘアアレンジをオーダーされる方が多いです。店内に自撮りができる部屋もあるので、かわいいヘアスタイルを自撮りしてSNSを映えさせたい若い女性に人気です。

自撮りができる控室はウェディングサロンやブライダルショップ、メイクサロンにあることが多く、通常の美容室にはほとんどありません。LOABは若い女性をターゲットとしたサロンなので、メイク直しをしたり、ヘアを整えたりする人が多いと考え、控室をつくりました。控室では自由に自撮りができます。ヘアスタイルを自撮りし、それをSNSにアップするのが若い女性の間で流行っているので、お客さまからとても好評です。控室で自撮りができることが、LOABでヘアアレンジをするきっかけにもなりますし、SNSにアップしてもらえると良い口コミにもつながります。最近はLOABのように控室をつくるサロンが増えてきました。

独立前に働いていたサロンは清潭洞だったため、大人世代にフィットするよう木材を基調とした内装でしたが、LOABは漢南洞なのでホワイトをベースにし、石を取り入れるなど都会的でファッショナブルな雰囲気にしました。また、椅子や照明、オブジェなどの家具は高級感のある物を選んでインテリアのポイントにしています。例えば待ち合いスペースの椅子はオーダーメイドで1脚9万円以上します。コロナ禍で室内で過ごす時間が増えた時に家具についての興味が深くなり、その知識を生かしながら納得のいく家具を揃えました。ちなみに待合スペースではコーヒーをお出しする他、朝早く来店してお腹が空いているお客さまにはトーストを提供することもあります。

2店舗でスタッフは総勢約30名、そのうちスタイリストは12名在籍していますが、スタッフ教育は「技術」と「SNS」、この2つを軸に考えています。理美容師である以上、技術を磨くのは当然のことで、YouTubeなどのSNS上の様々なコンテンツを通して学んでいく必要があります。僕はそれと同じくらい、自身の技術をSNSを活用して幅広く表現することが大切だと考えています。表現するための感性が備わっていないと、たとえ高い技術を持っていたとしても多くの人には伝わらない、伝わらなければ集客もできないと思うからです。

入社して6カ月経ったら、技術に加えてSNSの活用についても学んでもらっています。常に目標を持って学べるよう課題を出して、6カ月ごとに試験を行います。自分でモデルを選び、そのモデルをどう施術して、それをSNSにあげるまでの一連のテクニックを学べるように、課題に対して細かくフィードバックを重ねていき、2年半かけて必要な技術を習得してデビューする仕組みになっています。ときには先輩が直接教えたり、サロンワークで使用した薬剤のレシピをチャット等で後輩に伝え、どんな狙いでどんなヘアスタイルをつくったのかをレクチャーしたりすることもあります。

入社して1年経つ頃にはヘアスタイルがつくれて、SNSで発信できるような自分らしい表現力も身につき始めます。技術とSNSを同時に教育していく感じですね。以前はアシスタントはシャンプーや簡単な仕事をすることがメインでしたが、今の若い子たちは1年目からSNSで自分の個性を表現できる人が多くなりました。それをちょっと手伝う、背中を押してあげるというイメージで、強制というより楽しくやってもらっています。

シーズンごとにヘアスタイル撮影を行い、LOABのドレンドとしてSNSで発信しています。また、ヘアショーに出演することもあります。2024年11月には、AMOS PROFESSIONAL主催の「SALON 2024 CONNECTION」という大きなヘアショー に出演し、多くの方に見ていただくことができました。ヘアショーはトレンドを伝える場であると同時に、スタッフのモチベーションも上がるので、とても大切な機会だと考えています。

2024年の夏頃から韓国のカラー市場がさらに拡大し、増え続けるカラーニーズに応えることが今まで以上に重要になりました。韓国の方が一番好きなカラーはアッシュ系です。もともと赤みが強い髪質なので、アッシュ系は季節を問わずに人気が高いです。冬はダークトーンが人気でしたが、夏になるとハイトーンや彩度の高いカラーが流行すると思います。カットは、顔周りに独立したラインをつくるのが流行りそうです。顔を包みこんでくれるので小顔に見えますからね。前髪はダブルバングがトレンドになりそうです。ダブルバングにして上段にリボンをつけたりするとかわいくなるので推していこうと考えています。以前は芸能人の真似をしたいというニーズが多かったですが、今は芸能人に限らずSNSで自分がいいと思うヘアスタイルを見つけてそれをオーダーする人が多いので、僕たちもSNSをよく見て研究しています。日本人の美容師さんのインスタもフォローしています！

自分の技術をいろいろな人に発信していくことが大事だと思っています。独立前に働いていたサロンのオーナーはSNSにとても詳しい方で、活用法をたくさん教えていただきました。私はそのオーナーからSNSの重要性を学んだので、とても尊敬しています。その学びがLOABでも活きていますね。

また、お客さまとのコミュニケーションも大切だと思っています。お客さまのこだわりや望んでいることをしっかり把握し、それを踏まえたヘアスタイルを提案できれば、喜んでもらえて、満足してずっと通ってくれます。そのためには丁寧なカウンセリングが重要で、新規のお客さまの場合はアンケート用紙にかなり細かいことまで記入していただき、それに基づいてカウンセリングを行います。

最近、海外からセミナーの依頼をいただくことが増え、上海や台湾に行くことが多くなりました。将来的には世界中で知られるサロンになりたいですね。商品開発にも取り組みたいと考えています。2024年の秋にはメーカーさんとコラボしてヘアオイルをつくったので、それも世界を視野に広めていきたいのですが、まずは日本と中国に進出したいと考えています。LOABというのは略語で「美しい自由」という意味です。あまり堅苦しくなく、型にはまらないという意味も込め、通常のサロンワークのみならず様々なことにチャレンジしつつ、お客さまと一緒に成長できたらと思っています。

以前は1つのサロンで長く働くことが一般的でしたが、今の若い理美容師さんたちは1つのサロンで長く働くことをそれほど望んでいないように思います。でも、LOABの場合はスタイリストになるまで2年半かかるので、最低でもスタイリストになるまでは辛抱してLOABの個性や表現の仕方を学び、サロンの特長を吸収してほしいですね。そこからさらに学びたいことがあったとしても、それはスタイリストになってからでも遅くないと思うんです。

理美容師は自由に様々なヘアスタイルをつくり、それを表現できる仕事です。日々、いろいろな壁にぶち当たることもあると思いますが、スタイリストになるまで努力し続ければ自分の個性を思い切り表現できるようになって、理美容師の本当の面白さに気付ける日が必ず来ます。理美容師は年齢に関係なく続けられる仕事なので、苦労を苦労と思わず、幸せな未来に向けて努力してほしいです。