今回はTABEちゃんが、オーナーの皆さまのお悩みの中で結構多い、「テナントの規模によって空間デザインはどう変わるのか?」「何ができて、何ができないのか?」問題について、経験豊富な空間デザイナー藤井智大さんにズバリ聞いちゃうよ!
藤井さんは、タカラスペースデザインに入社してから大・中・小さまざまな規模の空間デザインを手掛けてきた経験を持つプロフェッショナル。きっとオーナーの皆さまも納得の答えを教えてくれるはず!
インタビュアー:TABEちゃん
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ということで、藤井さん、まずは小規模サロン空間デザインの例として美容室「fig(フィグ)」さんについて教えて〜!
物件情報
対比構造を上手く使った空間デザインで、オーナーさまの想いを表現
「fig」さんは、「Takara Business Creation Awards2023 」※にノミネートされるなど、すごく注目されたデザインだよね。オーナーさまはどんな人で、どんな要望があったのかを教えて!
※タカラベルモントが主催するデザインコンペ。全国のタカラスペースデザイン所属のデザイナーが設計した理・美容サロン、デンタル・メディカルクリニックの中から、特に優れたデザインを選出する年間審査会です。
わかりました!「fig」のオーナーさまは、大阪府内のサロンで働いてから、独立を果たした30代の女性で、明るくハキハキしたお人柄が魅力的です。
最初は、「お客さまと1対1で細やかに接するお店にしたい」ということ以外、デザインイメージやレイアウトなどの要望がほとんどなく、「プロにお任せします!」という感じだったんです。
そういうパターンもあるんだね。じゃあ、空間デザイナーとして藤井さんの自由に発想できて良かったってこと?
いくら自由度があるといっても、デザイナーよがりの空間デザインはしたくなかったんです。なので、「お客さまの想いを大切にした、その方にピッタリの空間デザインは何か?」をもっと引き出すように心がけました。具体的な要望は無かったものの「fig(=イチジク)」という店名は最初から決まっていたので、対話の中で店名の由来について掘り下げて聞いていくと、オーナーさまから明確な言葉が出てきました。それを起点にイメージや思いを言語化して、デザインに落とし込んでいきました。
すごいね!まるでカウンセラーみたい!そこからデザインのコンセプトが決まったってこと?
そうですね。実際にイチジクの断面を見て考える中で、内面の美しさとそれを引き立てる皮との対比に気づき、「対比」をコンセプトに設定しました。
「対比」をデザインで表現するって難しそう…。どんな風にカタチにしたのか、具体的なポイントを教えて!
小規模サロンオーナーさまの想いをカタチにした2つのポイント
>ポイント①:サロンコンセプトとなったイチジクのイメージを空間デザインで表現
>ポイント②:限られた空間を最大活用!+αの多彩な使い方ができる空間に!
ポイント①
サロンコンセプトとなったイチジクのイメージを空間デザインで表現
一目見ると壁のブラウンと床や天井、スタイリングチェアの白がコントラストになってる感じがするけど、これがサロン名にもなったイチジクと関係するのかな?
まさにそうです。全体的にブラウンの壁をイチジクの皮と見立てて、スタイリングチェアを中心に特別な内部空間をつくりあげています。それと壁をよく見ると、一面ブラウンの壁材で覆うのではなく、下部や上部を斜めに切り取り、下地のシルバーの軽量鉄骨がむき出しになるようにしています。
細かなところまでサロンのコンセプトを盛り込んだデザインで統一されているんだね!
わかりますか? 家具の壁面も木材の上に鉄板を貼り、切り込みを入れることで内側の木の部分が見えるようにしているんです。こちらも外側と内側を表現しています。
ポイント②
限られた空間を最大活用!+αの多彩な使い方ができる空間に!
「fig」さんの店舗面積は、8.77坪とかなり小規模だったと思うんだけど、何か工夫はされているの?
基本的には、お店でお客さまと1対1でのサービスを提供することから、小さな空間でも大丈夫なのですが、極力無駄な空間はつくらないよう配慮しています。例えば、エントランスを入ってすぐのところは、準備が整うまでの待ち合いとして使用できるようにし、お子さま連れのお客さまにはお子さまが座って待ってもらえるようにも配慮。
もう一つの工夫としては、壁色をベージュにすることでプロジェクターの映像を映す、スクリーンとして機能させています。これだとテレビモニターなどを置く必要もないですからね。
なるほど〜!シンプルで無駄がないだけじゃなく、そんな使い方も考えられてるんだ!面白いね。
動画をお店で流して、お客さまとワイワイ楽しい時間を過ごしたいと言っていたオーナーさまのご要望も反映したんです。それと実はこの壁にはもう一つ使い道があって、最近ニーズの高いインスタグラムのための撮影背景も意識しておしゃれな感じに仕上げていますよ。
オーナーさまの気持ちも、お客さまの気持ちもしっかり考えた空間デザインだね!サロンが完成したとき、オーナーさまも喜んでくれたんじゃない?
1人オーナー店舗の場合、その方の個性や想いをどれだけデザインで体現できるかが大事だと考えています。今回、オーナーさまのお人柄や信念も反映できたことは良かったと思いますし、オーナーさまにもすごく気に入っていただけました。
次は、中規模サロンの「ETERNALLY(エターナリー)」さんについても聞かせて!
【物件情報】
ヘアカラー技術と独創性が光るサロン空間デザイン!
「ETERNALLY」さんのご要望はどんな感じだったの?
30代のご夫婦で、独立・新規開業したいとのご依頼を受けたのですが、最初にお聞きしたのは、「オープン時は夫婦2人でスタートして将来的にはスタッフを増やしていきたい」との経営面でのお話。そして、「自分たちがこだわっているヘアカラー技術をアピールし、顧客単価もアップしていきたい」というお考えでした。
中規模のサロンとなると、次のステップも考えてる感じなんだね。そこからどんな風にコンセプトを考えて、空間デザインをしたのか教えて〜!
コンセプトを生み出す上で重視したのは、ヘアカラーの技術が優れていることをいかに表現するかです。言葉で表すのは簡単ですが、お店でそれをアピールするのは、なかなか大変だと思うんです。そこで、「魅せる」をコンセプトにして全体のデザインを構築していきました。
たしかに「ヘアカラー技術が業界トップクラス」とか、見かけることはあるけど、ビジュアルで魅せるのはすごく難しそう…。そのあたりも合わせて、藤井さんがこだわったポイントを教えて!
了解しました。では、こちらも2つのポイントをお伝えしますね。
レイアウトの逆転をテーマとした空間デザインの2つのポイント
ポイント①
ヘアカラーを魅せる!技術力を伝えるサロンデザイン
今まで見たことがない感じだけど、このエントランス正面から見えるキッチンみたいなのは何?
これが「ETERNALLY」さんの空間デザインの象徴なんです。家庭用のアイランドキッチンを用いて、カラーリングの薬剤を調合する空間として大胆に見せています。通常の理美容室だと、薬剤の調合はお店の裏手の調合室で行ったものを持ってきて使うことがほとんどだと思います。それを逆転の発想で魅せてしまおうと考えました。
これは提案したとき、オーナーさまもびっくりしたんじゃない?
それはもう、かなり(笑)。でも、2回目の提案のときには「これはすごい!面白い!」と言ってもらえました。
この空間があることで、オーナーさまのご要望であるヘアカラー技術の素晴らしさをアピールできますし、お客さまも自分のためだけにこだわって薬剤を調合してくれているという特別感も味わえます。
またお客さまには、入店時にカラーのカウンセリングを行いながら、陳列棚に並べられたカラーの薬剤を、まるでおしゃれなバーでお酒をオーダーするかのような体験を味わっていただけるのも面白いところだと思います。
イメージ的にはラボっぽいし、高級感もあって良い感じ♪
まさにそのイメージで、カラーの多彩な色合いのボトルが目立つように全体の色調を抑えているのと、キッチンのステンレス、床は黒色を使うことでメリハリもつけています。それと、ここは調合だけでなく、受付やカウンセリングもできるようにしているんですよ。
ポイント②
幅広いお客さまにお越しいただくため、半個室空間やVIPルームも完備!
半個室ってどんな感じかな?
「ETERNALLY」のオーナーさまとお打ち合わせが始まった頃は、ちょうどコロナ禍に突入する直前でセット面の個室化も検討されていました。中規模サロンで、お客さまの層もお子さまから薄毛などの髪悩みがある大人まで幅広いということでしたので、パーテーションではなく、厚みのある壁を仕切りとし、半個室化する方法を提案しました。
これによりお客さまは、隣の席の方にセットや施術をする姿を見られることがありません。壁が迫って狭く感じられるかもしれませんが、大きめのミラーを設置することで視覚的には広く感じてもらえる工夫もしています。
また、これらとは別に完全な個室のVIPルームも設けました。この部屋では、高単価のお客さまはもちろん、髪のお悩みを相談したいけれどあまり人には聞かれたくない方、お子さま連れの方など、様々なお客さまのメニューやご希望に対応できるようにしています。
お店の個性をしっかり打ち出すだけじゃなく、色々なお客さまのことを考えた空間も確保されているんだね!オーナーさまの反応はどうだったの?
オーナーさまからは、自分たちが求めていた要望がすべて実現されているのとともに、おしゃれな空間に仕上がったことを喜んでいただけました。特に自分たちが売りにしたいヘアカラー技術の素晴らしさが伝わるお店になったこと、また施術単価もこの地域としては高めに設定できるようになったことには、感謝のお言葉もいただきましたね。
お店の売上アップにも貢献したってことだよね?
そうですね。オープンしてしばらくしてお店を訪問したときは、売上も順調に推移しているというお話しを聞きましたし、2年経った今は予定通りスタッフさんも増えてお店も成長できていると聞いています。「ETERNALLY」さんのような中規模サロンのデザインをする時は「ライバル店との差別化」「スタッフさんの採用や成長ビジョンなど、オーナーさまの経営の考えや将来のビジョンを反映することがすごく大事。これらをしっかりと押さえて設計したことがポイントですね。
本当に良かった!じゃあ最後は大規模サロンの空間デザインとして「Pacific Dazzle copain(パシフィック ダズール コパン)」さんについても教えてほしいな!
【物件情報】
動線と目線を意識した大規模サロンの魅せる空間デザイン
「Pacific Dazzle copain」さんは既存店のリニューアルということだけど、オーナーさまやお店の情報、どんなご要望があったのか教えて〜!
神戸市で4店舗を展開されているオーナーさまからの依頼でした。リニューアルを任されたのは、その内の郊外にある店舗。
今回のリニューアルでは、サロンの中央にあった噴水を無くし、お客さまの目を楽しませるために四季折々のお花や、セレクト商品を設置・発信できる空間にしました。
大規模なお店をつくる上での苦労はなかったの?
苦労というか、色々なことを意識してデザインしましたよ。大規模な空間だと色々なことができるのですが、だからといってやり過ぎるとせっかくの広い空間が狭く感じられたり、お客さまやスタッフさんの動線が悪くなってしまうこともあります。
しかも今回はL字型の空間だったので、いかに効果的に活用するかを考えました。
具体的には、お店に入ってきたときにディスプレイ空間の作品やセレクト商品が目に入り、スタイリングチェアに座ると中庭の風景を楽しんでもらえる工夫、そして移動するときには目に入るものにバリエーションを持たせることで、お客さまの動線を意識して、何度行っても楽しいと思っていただけるように配慮しました。
なるほど〜!移動する中で色々なものが目に入って楽しませてくれる空間なんだね。
これまで話してもらった例から最後に藤井さんに教えてほしいのは、小規模・中規模・大規模のお店をつくる場合、オーナーさまはどういうことを意識したら良いの?ってこと。少しでもヒントになる情報をお願いします!
そうですね。まず大規模な店舗の場合は、オーナーさまがやりたいことは、それほど悩まず実現できます。ただ敷地の形状や庭があるなどの特徴を活かすこと、さらにお客さまに対する考え方や提供するサービスに合わせた空間デザインを私たちは考えますので、オーナーさまには、経営的観点からどういうお店にしたいかを考えておいていただけたらと思います。
逆に小規模だと、全然違うのかな?
全然違いますね。小規模の場合は、大体個人事業主でおひとりで開業されるオーナーさまが多いので、それこそ自分の個性や好きなものをお店に全面的に反映した方が良いと思います。その代わり、やりたいことと、自分が将来目指す美容師のイメージをあらかじめ明確にしておくことが大切です。
空間の都合でできることは限られますから、本当に大事なことだけに絞り込んでおくことで、よりオリジナリティあふれるお店、他にないお店になりますよ。
もちろん、予算など悩ましいことはあるかと思いますが、高級な素材や設備を使わなくても、私たち空間デザイナーが知恵を絞ってその課題はクリアしますから、心配は不要です。
それはすごく心強いね!中規模の場合はどうなの?
中規模は、やはりスタッフさんも雇用したりしていくことが想定されますので、オーナーさまの好きなこと、やりたいことだけを判断軸に持つのは危険です。
3~10席くらいまでの中規模店は、すごく多いので、どれだけ他店と差別化できる強みを持っているかは意識しておいた方が良いです。そしてその強みは売上にどうつながるかも考えておくと、より理想的です。
こうした差別化や経営面をどう考えるかについては、タカラベルモントの開業支援も活用してもらえれば、明確になるかと思います。
藤井さん本当にありがとう!TABEちゃんもすごく勉強になったよ!最後にこれからお店をつくりたいと考えているオーナーさまにメッセージをお願い!
私たちタカラスペースデザインの空間デザイナーは、ただオーナーさまの要望をカタチにするだけでなく、ご本人が気づいていないことも丁寧なヒアリングを通して明確にしていきます。
デザインイメージはもちろん、お店の強みやオーナーさまの好きなこと、想いも含めて対話を通して引き出し、その人にピッタリの空間デザインを提供しますので、まずは何も決まっていなくても自分だけで抱え込まず、お気軽に何でもご相談ください!
経験豊富な空間デザイナー!話を聞いた藤井さんのプロフィール
藤井智大(ふじい・ともひろ)
1994年兵庫県生まれ。名古屋市立大学芸術工学部建築都市デザイン学科卒。二級建築士。大学卒業後、お客さまとの会話を通して想いを引き出し、イメージを具体的な空間デザインに落とし込んでいく空間デザイナーの仕事に魅力を感じて2017年タカラスペースデザイン株式会社に入社。TBCAへのノミネートだけでなく、アイランドキッチンを使用したユニークな発想が評価され、住宅設備機器メーカーが行うデザインアワードで最優秀賞を受賞した実力派の空間デザイナー。
受賞歴
2021年 サンワカンパニーデザインアワード2021 施工事例部門 最優秀賞『ETERNALLY』
2023年 Takara Business Creation Awards ノミネート『fig』
※2024年7月現在
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TBCA2024金賞・銀賞決定。 非日常やトレンドを体現する作品が並んだ最終審査会。
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