2024年7月、TB-SQUARE osakaで開催された「Takara Business Creation Awards(TBCA)」の最終審査会で、湯口巌さんがデザインした「Teal(ティール)」が見事金賞を受賞しました。この記事では前回の最終審査会レポートではお伝えできなかったプレゼンテーション内容や「Teal」のデザイン意図などを紹介します。
TBCA最終審査会のレポートはこちら
Takara Business Creation Awards(TBCA)とは?
1991年にスタートしたタカラベルモント主催のグループ内デザインコンペティション。
設計・デザイン力・提案力の向上を目指し、その1年間に全国のタカラスペースデザイン所属のデザイナーが設計した理容・美容サロンとクリニックから、特に優れたデザインを選出します。
予選審査、事前審査を経て、最終審査会では外部審査員を招き、デザイナー自ら作品のプレゼンテーションを行い金賞・銀賞を決定。TBCAの優秀作品は、これまでにも日本空間デザイン賞などで数多くの賞も獲得しています。
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金賞受賞作品「Teal」の紹介
TBCA2024サロン部門で金賞を受賞した「Teal」は築50年のマンションの1階にある、1席のみのメンズオンリーヘアサロンです。男性にとっての居心地の良さ、くつろぎを追求した空間デザインが審査員の支持を得て金賞受賞となりました。
デザイナー:湯口巌
所在:東京都世田谷区
面積:55.00㎡(16.6坪)
竣工:2023年8月
立地:商業エリア
種別:内装(新装)
業種:理容
デザイナー 湯口巌(ゆぐち・いわお)
1976年福岡県生まれ。九州芸術工科大学大学院 博士前期課程修了。2001年にタカラスペースデザイン株式会社へ入社。新規開業・小規模サロンの空間デザインに長年携わり、近年はクリニックや新築デザインを主なフィールドとして活躍中。
サロン・クリニック問わず、立地や物件の良さを引き出し、シンプルながらもクオリティーの高いデザイン、ハイグレードな空間を提案し続けている。日本空間デザイン賞やJCDデザインアワードでの受賞歴多数。
空間デザインのベースになった1枚の写真
メンズオンリーヘアサロンを謳う「Teal」のオーナーさまは、独立前も男性客限定のバーバーで勤められていたそう。そのため、男性のお客さまにとって“居心地の良さ”とは何か?その本質の追求から本プロジェクトがスタートしたと湯口さん。
オーナーさまと“男性が真にくつろげる空間”についてのお話をしている時に、ある写真を見せてもらいました。写真は街中にあるちょっとした広場で、数名のご年配の方々がペタンクというスポーツをしている風景を撮ったものでした。オーナーさまは『これがお店の理想なんだよ』とおっしゃったのです。
男性にとって居心地の良い空間と、ペタンクの写真。一見、関係のなさそうなこの2つのどこに、共通項を見出したのでしょうか。
そこは、人工物が立ち並ぶ街中のポケットパークのような場所でありながら、何をするって決まっている訳ではないんです。環境としては木々の下にベンチがあったり、風が吹き抜けたり。そんな写真から、そこに訪れる人が思い思いに過ごせる自由な空間と理解しました。
この解釈をもとに、「Teal」の空間デザインにおけるテーマが設定されました。
オープンエアーを感じることができるサロンへ
湯口さんはデザインするにあたって2つのテーマを挙げました。その1つが「亜外部(あがいぶ)」。亜外部とは建築の分野でよく使われる言葉で、屋内でも屋外でもなくその間に位置する特別な空間、リラックスできる空間を意味するとのこと。
空間構成では、亜熱帯地域の建造物に見られる風が通り抜ける軒下やピロティなどを想定しました。日は遮られているが、心地良い風やオープンエアーを感じられる。そのような空間が1つの回答と考えました。そして、その考えを実現するために、素材は土壁を思わせる粒の大きな左官材を選定しています。また、建築構造を思わせる巨大な壁や梁による空間構成と組み合わせることで、外部空間の印象を店内に持ち込むよう企図しました。
「亜外部」という考え方をベースにしてつくられた、まるで邸宅を思わせる空間。そこでは、ペタンクの写真に表れていた、ゆったりとした時間の流れや飾らない居心地の良さを感じることができるのでしょう。
「1席のあり方」にフォーカスした平面計画
空間デザインのテーマの2つ目、それが「1席のあり方」でした。
平面プランニングでは、広い空間にレイアウトされるただ1席のあり方に着目しました。平面図から見て取れるように、席を中心に木板壁や壁柱、巨大な造作梁、段差、パーテーションなどを配置してゆるく囲い込んでいます。
いったん席を緩く囲ってから周囲との関係性や奥行感を調整。席に座ると隙間から景色や諸室が見え隠れするため、開放感や広がりとともに落ち着きや安心感をもたらします。この併存が、洗練された居心地やくつろぎにつながると考えました。
テーマを実現するためにマテリアルを厳選
マテリアルはテーマに沿って、絞り込みました。荒々しい土壁風の塗り壁のほか、茶に染色することで時間が経過したかのような表情を持つコンクリート床、石材を模したタイルなどを採用しています。
また、シャンプーブースのパーテーションには、住宅解体時に出た廃材を活用しました。シャンプーブースは暗いのが通例ですが、光もテーマにしたいと思っていたので板と板の隙間をわざと設けて、そこから漏れ出る光も空間演出の材料として扱っています。
理論と感性が織りなす空間デザイン
TBCA2024最終審査会では、国内外でインテリア・建築・家具・プロダクトと多岐に渡るデザインを手がけられている二俣公一(ふたつまた・こういち)氏が、「Teal」のデザインについてコメントをされました。
スケール感、柱や壁の厚み、間合いなど空間認識に対しての理解度が深いと感じました。少しでも壁のサイズや厚み、余白の取り方が違っていたら心地よさを感じる空間にはならないはずなので。そこにはテクニックだけでなく、感性も必要だと思いますね。
理論と感性の融合によって生まれた「Teal」の心地よい空間。湯口さんは空間を設計する際、理論と感性のどちらに重きを置いているのでしょうか。
設計プロセスを理論と直感に区分けすることは難しいですね。むしろ理論と直感を重ね合わせて考えることが大切と思っています。プロセスに特に決まった手順はなく、〈知覚における空間構成〉や〈モンタージュ〉など古典的な手法や視点を頼りに、試行錯誤を繰り返しています。
「Teal」の空間デザイン以降、より一層「居心地」について考えることが増えたとも語る湯口さん。長年培ってきた経験、知識、技術、そして独自の感性で、今後もお客さまに贅沢なひとときを提供するサロン空間をつくり出してくれるはずです。
以上、TBCA2024金賞受賞作品「Teal」のデザインレポートでした。次回は銀賞を受賞した「tukka」「Private salon u」「Arete」「Lamin」のデザインコンセプトや手法を紹介します。ご期待ください!
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