古民家を活かしたで賞！期待の若手空間デザイナー宍倉さんにインタビューしてきたよ！

インタビュアー：TABEちゃん

はじめまして～！インタビュアーのTABEちゃんです。
今日は「BASK.」をデザインした、宍倉さんにサロンデザインのポイントについていろいろ聞いちゃいます！
古民家からサロンに生まれ変わった「BASK.」って、どんな要望があったのか教えて！

「BASK.」は、鎌倉駅から徒歩4分の場所にある、築60年の木造住宅を改装した美容室です。私は新規オープンに向けた空間のデザインを担当しました。

通りから少し入った裏路地にあり、隣家の視線が気にならない落ち着いた雰囲気で、家の前には広々とした庭もある、とても贅沢な空間でした。おじいさまの代から家族で住んでいるということで、オーナーさまからは「祖父が住んでいた家を残しつつ、お店づくりがしたい」「家の装飾を最大限に活かしたい」といった要望をいただきました。

※BASK.のサロンコンセプト：「おざなりになりがちな基礎技術を大切に。日向ぼっこをするような心落ち着ける空間を」BASK.には日向ぼっこの意味があり、ロゴは見方を変えるとBASIC（基本、基礎）という裏テーマが見える。

「家を残しつつ、お店にする」って一体どんな感じのサロンに変身するのかまったく想像がつかない！
あれ？この図面ではどこがお店の入り口なの〜？

現地を見たときから庭の広さに魅力を感じていて、「この特徴を活かさないともったいない」と思い、庭を通ってウッドデッキを抜けてからサロンに入るプランをご提案しました。

他の会社からもご提案がありましたが、私だけ庭を通るプランだったそうで、その点を大変気に入ってくださいました！

庭を通ってお店に入るなんて、斬新なアイデアだね！お客さんもワクワクするだろうな～！
「BASK.」のこと、もっと知りたくなっちゃった！デザインでこだわったポイントを教えてもらってもいい？

「５つのポイント」をご紹介しますね！

「おじいさまが住んでいた家の雰囲気を継承しつつ、いかにして過ごしやすい空間に仕上げるか」にこだわりました。居心地の良い美容室にするには、内装の美しさだけではなく、機能面とのバランスを意識しました。

シャンプー台2台とセット面4席を設置することは決まっていたので、機能面では給排水にも配慮しつつ、最適な設置場所を考えて設計しています。また、快適に移動できる動線を意識しながら、各部屋の壁を取り払い、鎌倉彫師であるおじいさまの作業場だった離れとつなげることで開放的な空間デザインにしました。

いつもデザインを考えるときは、あらゆるバリエーションの中で、一番気持ちいい空間を追求しようと心掛けているんです。「BASK.」の場合は日当たりが抜群に良かったため、ひだまりができる場所や光の当たり具合、風が抜ける方向、庭の緑がどう見えるかなど、細かい部分まで考慮して設計しました。

そんな細かいところまでこだわりが詰まっているんだ～！空間デザインって内装だけじゃなくて、快適な動線までしっかりと考えられているんだね。

わ～！すてきな眺め！間仕切の格子も素敵だね！

実は、以前から使われていた雪見障子を、あえて障子紙を剥がして、そのまま活かすことにしました。奥にはシャンプー台があるのですが、シャンプーが終わると障子から庭の景色を眺められるようにしました！

奥に見えるウッドデッキはサロンの入り口にもなっていて、お客さまが待つスペースとして活用できるようにもなっています。

おじいさまが住んでいた頃からあったものを活かした点は、他にもありますよ！

古いものを活かすなんて素敵✨まだまだ工夫のポイントがありそうだね！
それにしてもシャンプーが終わってからこんな素敵な眺めが見られるなんて、リラックスできるだろうな～♪

このポイントも古いものを活かした工夫なのかな？
宍倉さん、この「伝統装飾」ってなんのこと？

たとえば「長押（なげし）」と「柱」です。長押は和室の柱を固定するための構造物で、縦と横の柱を水平につなぐ日本建築のひとつです。

その長押や柱を残すことで、想いを受け継ぎながら昔の雰囲気も創出できると考え、長押をコート掛けとして機能させつつ空間を緩やかにつなげたデザインをご提案いたしました。

昔の装飾や家具を活かす提案はオーナーさまにも喜んでいただけて、とても嬉しかったですね！

まさかもともとある構造を活かして、別のものとして活用しちゃうなんて！
宍倉さんはたっくさんの提案をされているんだね✨

あれ？お店のミラー、変わった形をしているね！2枚重なっているように見えるよ！

ミラーは最もこだわりを注いだ部分です。オーナーさまは、私が過去に手掛けた曲線を取り入れたミラーや空間デザインを気に入ってくださっていたようで、今回も曲線を活かしたミラーを作ることになりました。

曲線の形を決めるときに悩んだポイントは、鎌倉の魅力である自然と「BASK.」のコンセプトをいかにして融合させるかでした。オーナーさまと相談しながら試行錯誤し、無骨な形が美しく見える石をテーマにするアイデアへと行き着いたんです。

オーナーさまにも鎌倉の神社へと足を運んでいただき、さまざまな石の写真を撮影したものをトレースして作りました。

石の重なりやゴツゴツ感を表現するために、ミラーを重ねて立体感を出しています。2枚のミラーを違和感なく見えるバランスにするには苦労しましたね。

石がテーマに作られていたんだね！ミラー1つにもこんなにこだわりを持って作ってもらえるなんて知らなかったな！
空間って本当に細かなところまで重要なんだね。

写真の真ん中に写っている、この白い台はなに～？

これは受付台で、今はパソコンを置いて使用しているそうです。収納付きで、移動できるようにもなっているんですよ。

木造住宅の装飾の存在感を活かすには、他の小物はできるだけシンプルにする必要がありました。受付台も必要な機能だけを残して、極力シンプルにデザインしています。オーナーさまは、すっきりした見た目と、移動しやすい点を気に入ってくださっているようです。

そんなこだわりもあったんだね！まさか受付台だとは思わなかった！周りの人はどんな反応だったの？

元の家の形を最大限に活かしたリノベーションだったので、オーナーさまは喜んでくださいました。見た目が普通の住宅なので「何屋さんだろう？」と覗かれる方も多いようです。

完成後に伺ったときは、美容室の予約がいっぱいで大盛況でした。

こんな素敵なお店、TABEちゃんも行ってみたいな～✨「BASK.」みたいなデザインのアイデアってどうやって生まれるのか、知りたくなっちゃった。デザインのアイデアを生み出す秘訣とかあるの？

ふとしたときに生まれてくることが、ほとんどです。散歩中に建築物を観て回ったり、さまざまな展示会に足を運んだりするのが好きなので、暇を見つけては行くようにしていますね。

美しいものをいくつも観ていると、記憶に残っていてアイデアのヒントになる場合があります。もちろんあくまでもヒントなので、そこから全然違うものに展開させることが多いです。面白いものができないか試行錯誤する日々はとても楽しいですね。

普段から空間デザインのヒントをたくさん集めているんだね！すごいな～！
宍倉さんはお仕事するときにはどんなことに気を付けているの？

お打ち合わせすると、お客さまから必ず興味深いキーワードとなる言葉が出てくるので、なるべく拾い上げて、デザインや色につなげるようにしています。

お客さまとは「ご一緒にお店づくりをしていきましょう」という気持ちを込めて、最初に自分の中にあるコンセプトを共有しています。目線を合わせることで完成系をイメージしやすくなりますし、私自身もお客さまに喜んでいただけるご提案がしやすくなります。

ご要望に寄り添いつつ、既存のデザインを超えたご提案をして、お客さまの満足度を高めていければと思っています。そのためにはひとつのアイデアだけではなく、何通りもご提案することがありますね。

やはり、ご一緒にお仕事をさせていただくからには、私に任せて良かったと思っていただけたら嬉しいです。丁寧なヒアリングを心掛け、ワクワクするポイントを探し、お客さまと共に楽しみながら仕事をしていければと考えています。

そんなに寄り添って考えてくれるデザイナーさんにお願いできたら心強いだろうな～✨打合せも楽しく進みそうだね！
宍倉さんがデザインをするときに、大切にしていることはなに～？

「箱」がポイントだと思っています。私が考える箱とは、土地や建物の間取りを含めた“全体の空間”のことで、いかにして箱の形状を活かせるデザインを追求するかが重要だと感じています。

「BASK.」のように特徴的な形状の店舗は、一見するとデザインが難しいと思われがちですが、私はとても好きなんですよね。どのように最適な答えを見つけ出そうかと、ワクワクするんです。既存の枠に捉われない大胆なアイデアを生み出せるのは、前職（ハウスメーカー）で注文住宅設計をしていたときに、さまざまな設計に触れた経験が活きているからだと思いますね。

ほかにも「箱」の形状を活かしたお店ってあるの～？

あります！

お客さまのご要望をより忠実に再現するために、サロンの世界観に合うインテリア探しにも率先して取り組んでいます。探し出したものをそのまま配置するのではなく、たとえばクローゼットを“大胆に”加工するなど、イメージに合うものがなければ「箱」を自分で作ってしまう場合もありますね。

インテリアも一緒に考えてくれるの！？加工までするときもあるなんて、空間デザインが完成するまでにはたくさんの工夫が積み重なってできているんだね。

じゃあ最後に、宍倉さんが将来チャレンジしたいことを教えてほしいな〜！

この先もオーナーさまやサロンに訪れるお客さまに、心地良いと思っていただける空間づくりをしていきたいですね。そのうえで、「トレンドに強い万能デザイナー」になりたいです。私自身の強みでもある、素材やもともとの形状を活かしたシンプルなデザインに、今までにない設計や年齢が高い方にも好まれる空間づくりを取り入れて、デザインの幅をさらに広げたいです。

また、仕事を続けるからには、お客さまに喜ばれる空間づくりで「トップに立ちたい」という目標があります。前回の「Takara Business Creation Awards」では、サロンデザイン銀賞でしたので、次は金賞を目指したいですね。

負けず嫌いな性格には、尊敬している父の影響が大きいのだと思います。父は営業をしているのですが、私たち家族には大変さを一切見せずに営業成績1位を取ってくる人で、子ども心にすごいなと思っていました。私も父のような人になりたいです。

これからもお客さまに信頼されるデザインを提案し、さまざまなサロンのお役に立てればと思っています。

デザイナーの考えがこんなにもサロンデザインに反映されるんだね！他の空間事例も見たくなっちゃった！

宍倉さんの「BASK.」には、「古民家を活かしたで賞」を贈ります✨
これからも素敵なサロン空間をデザインしてくださいね！宍倉さん、がんばれ～！