TABEちゃんが選ぶ!サロン空間アワードの第三弾!今回は細長くて狭い空間を大胆なデザインで見事に解決した「縁と縁(えんとゆかり)」さんです!このサロンは「Takara Business Creation Awards2022」※でサロンデザイン銀賞を受賞したんだって~!
このサロンをつくったのは、タカラベルモントグループの空間デザイナー 林優佑さん。お客さまの想いを汲み取りながら「本質的なデザイン」を追究し続ける、情熱を秘めた若手デザイナーだよ。そんな林さんに、受賞作品や仕事に対する姿勢について聞いてきたよ~!
※全国で活躍する所属デザイナーが設計した作品の中で、特に優れたデザインを選出する社内コンペ
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物件情報
商店街にあったレトロで細長い空間を美容室とアイラッシュサロン併設空間へと大改装!広く見せる工夫を随所にちりばめ、落ち着いた空間へ。
今日は「縁と縁(えんとゆかり)」をデザインした林さんに、サロンデザインのコンセプトや一番こだわり抜いたポイントについて聞いちゃいます!
まずは、「縁と縁」さんのサロン情報とご要望について教えて!
「縁と縁」は、小田急沿線の駅から徒歩30秒の場所にあり、閑静な住宅街が多いエリアにあったレトロな喫茶店を改装して生まれた美容室(東京都世田谷区)です。
店名の「縁と縁(えんとゆかり)」は、「地域や人との縁を大事にしたい」という想いを込めて、オーナーさまが自ら命名されたお名前でした。そこでオーナーさまの想い(サロンコンセプト)をうまくデザインに落とし込んで、このお店にしかない空間をつくろうと決意したのを今でも覚えています。
デザインのポイントは、「細長い空間をどのように活かすか」「狭い空間をいかに広く見せるか」が腕の見せどころでした。普通であればサロンには適さないような空間かもしれませんが、オーナーさまが店舗を見たときに特別な縁を感じたとのことで、自分のデザインで少しでもお役に立てればと強く思いました。
オーナーさまはスタイリスト、オーナーの奥さまはまつ毛エクステンションなどを施術するアイリストといった異なる職種でした。そのため、美容室スペースとは別に、奥さま用のアイラッシュサロンスペースも作ってほしいとのオーダーがありました。落ち着いた空間にしたいと希望されていたので、アイラッシュサロンは一番奥へ、美容室スペースは自然光が入る商店街側に配置するプランを提案しました。
最終的には、アイラッシュ2台、セット面3台、シャンプー台2台、さらに将来的にセット面をもう1台置きたいとのご要望があったので、スペースの確保がとても大変でしたね。
細長い空間にたくさんの機器を入れながら、居心地良い空間をデザインするなんて難しそう…。どんなサロン空間に仕上がったのか、完成系が楽しみになってきちゃった〜!
「縁と縁」のデザインで、特にこだわったポイントを教えてもらっていい?
はい!「5つのポイント」に絞ってご紹介します。
細長い空間を広くそして、落ち着いた空間へと生まれ変わらせるための5つのポイント
>ポイント①:広さと落ち着きの両方を実現する切妻型※のアーチが連続する天井デザイン
>ポイント②:照明の位置と角度にこだわり、優しい光が降り注ぐ空間をつくる
>ポイント③:簡単に取り外しできる“のれん”で、半個室空間を設計
ポイント①
広さと落ち着きの両方を実現する切妻型※のアーチが連続する天井デザイン
この天井はなに!?変わったデザインだね!どうやって思いついたの?
店舗が極端に細長い形状だったので、その特徴を活かしつつどのように広い空間に見せるかが課題でした。そこで、あえて壁などは極力シンプルにして、天井を大胆にデザインすることで奥行きと広がりを表現しました。
天井は低いほうが落ち着いた雰囲気になるので、あえて低めの位置で調整。2本の木材を組んで「切妻型のアーチ」が連続する天井を設計しました。
天井は、店名の「縁と縁」から人々がつながる様子を波型で表現しているんです。天井の隣り合う木材がアーチの形を微妙にずらし、三角の頂点を辿ると“柔らかくうねる波”が現れるよう工夫しています。波が始まる位置や、場所ごとの考え方、天井の高さやバランスなど、あらゆる要素を考慮しながらベストな配置を考えましたね。
へぇ〜!天井のデザインひとつでここまで印象が変わっちゃうんだね〜。ずっと見ていると、お店の奥に吸い込まれそうになる、不思議な感覚…!
そうなんです。天井のデザインで印象を変えることが出来るんです!また、店舗を外から見上げたときに、大きな窓の奥に天井が見えるように設計したのもポイントです。「縁と縁」は宣伝用の大きな看板を出していないので、天井にお店の顔としての役割も持たせています。
商店街の入口に立地しているので、地上から見上げるとかなり象徴的です。
天井のデザイン、外からの見え方まで計算されていたなんてびっくり!デザインにかけるこだわりがすご〜い♪
ポイント②
照明の位置と角度にこだわり、優しい光が降り注ぐ空間をつくる
天井に木材がたくさんあるから、照明を付けるのが大変そう!って思っちゃった。照明の位置と角度を工夫したってあるけど、どういうこと~?
照明は本当に職人さん泣かせでしたね(笑)通常の美容室では、頭と顔が見やすいように2方向から照明を当てます。照明を取り付けるためのレールは、セット面に対して一列に流したほうが効率的なので、普通はそのように配置します。しかし今回は、レールや照明の存在感を消すために木材と木材の間に設置しました。
設置する場所や高さ、角度によっては影や光のムラができるので、レールは木材の傾斜に合わせて斜めに吊り、現場で位置を調整しながら一つずつ丁寧に取り付けました。影や光が集中する部分を減らすことで、安定した光量と過ごしやすい空間を両立しています。
難しい施工をしてくれた職人さんに感謝だね〜!細部までこだわって作られているからこそ、お客さまにとって居心地の良い空間が出来上がるんだね!
ポイント③
簡単に取り外しできる“のれん”で、半個室空間を設計
天井から吊るされている布がポイントなのかな〜?
はい。この布は、空間の仕切りとして活用している「のれん」です。オーナーさまは半個室空間を希望されていましたが、一度壁やパーテーションで空間を区切ると圧迫感が出てしまいますし、空間を変更したいときに大変です。そこで簡単に取り外しができる「のれん」を採用しました。
「のれん」を吊るすポール類は、商業施設などの天井を吊る建材や、ボルトやナットを使用し、デザイン性を考慮しつつコストを抑えました。高い場所だと危ないので、ひょいと取り外しできる場所に設置したのもポイントです。
「のれん」を付けるだけで半個室にできちゃうなんて…とってもナイスなアイデア!そんな発想、どこから沸いてくるの?
実は工事の直前まで設置方法に悩んでいたんです。ある日現場に行ったら、ちょうど今回採用した建材を職人さんが使用していて、「これらの部品をうまく活かせないかな?」と閃いたのが始まりです。
すごい!工事が始まるまで悩んだ甲斐があったんだね〜!アイデアがふと沸いてきたのも、ある意味「縁」なのかもって思ったよ。
ポイント④
あえて狭いゾーンをつくることによる、”空間を広く見せるテクニック”!?
ところで、入り口の扉の前にある柱みたいなものはなに〜?
これが次にお話しようと思っていた、“空間を広く見せるテクニック”です。棒状の木材を何本も横に並べて、背の高い「柵」のような形状に仕上げました。
目隠しの役割に加えて、壁や廊下を作らなくても空間を仕切れるメリットがあります。あえて少し狭いゾーンをつくったことで、移動したときに空間がより広く感じられるんです。
確かに狭い路地を抜けた途端、「めちゃくちゃ開放感がある〜!」って感じることがあるね。壁やパーテーションを使わなくても、アイデア次第で空間は仕切れるんだね〜。
その通りです!狭い通路から抜ける感覚を体験してほしくて、あえてスタッフルームを店舗の真ん中に配置しています。
通路を細長くすることで、その先にあるシャンプースペースに入ったときの開放感をプラス。扉を付けずにゾーン分けしたのもこだわりのポイントですね。
なるほど〜!小さな空間なのに仕掛けがいっぱいで驚いちゃった〜!
シャンプー台のある場所、入り口付近の壁色は白系統だったのに、ここは黒色に変わってる!なにか理由があるの?
シャンプー台は心地良くリラックスできる場所にしたかったので、照明の数を減らして、壁や配管を黒く塗っています。
うわ!白黒に分かれた天井の配管なんて、じっくりみるの初めて〜!
配色による空間デザインに加えて、シャンプー台の横に高さ1mほどの収納ケースを設置しています。歩く場所がわかりやすくなって、仕切りの壁が無くても空間に自然と「通路」ができるんです。実際に、1mの高さは荷物を置くのにちょうど良く、シャンプー台で寝ていても圧迫感がありません。奥にあるアイラッシュサロンに行きたい人の目線が抜けやすいので、狭さを感じにくいんです。
確かにシャンプー台が置いてあるだけだと、「ここ通っていいの?」って不安になっちゃうかも。お客さまの気持ち・目線・見え方まで考えた優しい設計なんだね〜!
ポイント⑤
サロンコンセプトをさらに際立たせるため、SNSフォロワーとのお店づくりを提案
空間デザイン以外にも、「縁と縁」のサロンコンセプトを表現する提案を行ったんですよ。
工事のときに前の店舗(喫茶店)で使われていた床材を剥がしたのですが、もともとのコンクリートの状態ではイメージに合わなかったので、エイジング塗装※をすることになったんです。ただエイジング塗装は、業者さんに頼むとコストがかかってしまいます。そこで、協力してくれる方々と一緒に床のエイジング塗装をしたほうが、縁やつながりを大切にするお店のストーリーに合っている気がしたので、「自分たちで一緒に塗装しませんか?」と提案させていただきました。
すると、お店を始める前からSNSを活用されていたオーナーさまは、なんと!お客さまとInstagramのフォロワーさんたちにアンケートをとって提案にのってくれたんです。
※家具や建具の表面に重ね塗りを施したり、塗膜をわざとはがすことによってアンティークのような古めかしい風合いに仕上げる工法
普段はこんなやり方はしないのですが、オーナーさまご自身とお知り合いの方々、そして弊社の社員たちが協力し、わいわいと塗装に取り組みました。大人数での作業はとても楽しかったですし、思い出深いエピソードですね。
素敵!そこまでしてくれるデザイナーさんもいるんだね〜!完成後のオーナーさまの反応はどうだったの?
オーナーさまはすごく喜んでくださって、お客さまからも評判が良いそうです。天井のデザインについて質問を受けることが多いらしく、そのたびに縁を大切する想いをお話してくださっていると聞きました。お店の人が自らサロンコンセプトを語るシーンはあまりないと思うので、素直に嬉しいですね。
オーナーさまの理想をしっかりと反映した、まさに狙い通りのデザインなんだね!ますますお店に行ってみたくなっちゃった〜。
それにしても林さんは発想力が豊かだね。デザインのアイデアはどこから探してるの?
実際に建築物やインテリアを見ているときに、アイデアを思いつくことがほとんどなんです。出かける前に気になる場所や建築を担当したデザイナーさんを調べて見に行っています。写真だと分からない照明の入れ方や色使い、細かなつくりなどを研究しています。プライベートでも色見本帳を持ち歩いていたりするので、それと照らし合わせたり。あらゆるところから刺激を受けていますね。
色見本帳を持ち歩いているんだ!設計のお仕事がすごく好きなのがすごく伝わってきたよ。ちなみに林さんは、お仕事をするときにどんなことに気を付けているの?
ご要望をヒアリングする際に、好きなお店などの画像を見せてもらい「なぜ好きなのか」を深堀りして聞くようにしていますね。あと、“どんな思いでお店づくりをしたいか”ということにフォーカスして設計を行っています。
オーナーさまが根本的な部分で何を大切にしているのかを理解できれば、より尖っていてインパクトの強いデザインを提案できると思っています!
うんうん。お客さまの想いをしっかり聞いてくれるデザイナーさん、ほんと素敵だな。ほかにも、インパクトの強いデザインを実現したことってある?
「Holy Grail」さんですね。店名の由来からイメージを膨らませて、「ギザギザした岩山の先にある聖杯を探しにいく」という聖杯伝説のストーリーをデザインに落とし、提案しました。聖杯伝説における最後の目的地は、サロンでいうところのセット席。岩山を超えた先で新しい自分に生まれ変わることで、お客さまが冒険物語を疑似体験できるように空間設計しました。
オリジナリティをなによりも重視しているので、王道的でパターン化されたデザインはしません。特殊な技術で壁をギザギザに切り取ったり、あえて壁をつくらずに空間を区切ったりと、これまでの常識を覆すデザインに挑戦しています。コンセプトに合わせて、一つひとつの要素をこだわり抜くことが得意ですね。
「ここは本当にサロンの中!?」って思っちゃうほど、自然を感じる空間だね。それじゃあ最後に、林さんは将来どんなデザイナーになりたいか教えてほしいな〜!
おかしな話なんですが、実は僕「サロンをデザインしている」という認識で設計していなくて、オーナーさまに合ったオリジナルの空間を作っているイメージのほうが近いんです。「こういうお店にしたい」というオーナーさまの想いを自分なりに解釈して、理想により近い空間をつくりだす。それがデザイナーの仕事だと思っています。
今後も対話を重視してオリジナルの空間をご提案し、自分のデザインを通じてオーナーさまやサロンを利用されるお客さまのお役に立てれば嬉しいですね。
林さんは、オーナーさまの本当の気持ちに寄り添ったデザインに、真っ直ぐ取り組んでいるんだな〜って、ひしひしと感じたよ!
林さんがデザインした「縁と縁」には、「空間を広く見せる達人で賞」を贈ります✨
これからもオリジナリティ溢れる空間をデザインしてくださいね。応援してます〜!
今期待の若手空間デザイナー!話を聞いた林さんのプロフィール
林優佑(はやし・ゆうすけ)
1994年奈良県生まれ。大阪市立大学工学部都市学科卒。京都府立大学大学院生命環境科学研究科環境科学専攻修了。2019年タカラスペースデザイン株式会社入社。世界観やストーリーを重視した設計で、シンプルかつ独創的なサロン空間デザインを手掛ける。近年、各業界紙・建築雑誌などにも多く取り上げられている期待の若手デザイナー。
受賞歴
2021年 Takara Business Creation Awards ノミネート『calm by Re:berta』
2022年 Takara Business Creation Awards サロンデザイン 銀賞『縁と縁』
※2023年7月現在
ライター:夏野 久万 カメラマン:岡田 久輝
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