「誰も教えてくれない○○の話」は、誰に聞けばいいのかわからない「サロン経営のさまざまな悩み」を、専門家に解説してもらうシリーズ。第1~3回まで、サロンワークにおいて、避けては通れないお客さまからの「クレーム」がテーマです。
第2回となる今回は、「“値上げで失客!?”ロイヤルカスタマーへの正しい対応方法」。値上げをキッカケに常連客を次々と失客してしまったヘアサロン・セラヴィのオーナー矢島さんと店舗マネジメント担当の野村さん。美容業界の人材育成コンサルタント「苺谷千尋」先生に、ロイヤルカスタマーに対する適切なアプローチ方法を教えていただきます!
連載:“美容業界の人材育成コンサルタント”が解説する「誰も教えてくれないクレーム対応の話」(全3回)
第2回 “値上げで失客!?”ロイヤルカスタマーへの正しい対応方法 ★今回はコチラ
第3回 リピート客が驚愕のカスタマーハラスメントモンスター化!
登場人物
苺谷千尋(株式会社ソルフォア コンサルティンググループ コンサルタント)
レセプショニスト、美容師、美容専門学校教員を経て、美容に携わる業種の人材育成をメインとしたコンサルタント。美容業界経験者だからこそわかるサロンが抱える課題に、スタッフ研修、業界講演など通じて精力的に取り組んでいる。
矢島さん(オーナー兼スタイリスト)
40歳女性。20代で独立。過去にスタイリストデビューをなかなかさせてもらえず悔しい思いをした経験があり、スタッフの早期育成に力を入れている。「美容師は実践教育で育つ」というのが持論。
野村さん(店舗マネジメント担当兼スタイリスト)
30歳男性。オーナーが現役美容師として顧客対応することが多いため、店舗マネジメントを任されている。以前は全国チェーン展開の大型店に勤務。店舗マネジメントの細かい部分まで行き届かず、オーナーから注意されることもしばしば。
※2024年9月現在
【目次】
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値上げ後にロイヤルカスタマーを失客…。本当の原因は?
—この春以降、メニューの値上げを機に長年通い続けてくれたロイヤルカスタマーの失客が増えているヘアサロン・セラヴィ。さらに、次回予約を入れていないお客さまも多数おり、批判的な口コミも…。危機感を覚えたオーナーの矢島さんと店舗マネジメント担当の野村さんは、以前お世話になった苺谷先生に相談することにしました。
4月に全メニューを20%値上げしてから、ロイヤルカスタマーの失客が続いているんです。把握しているだけでも4人…。他にも失客の可能性のあるお客さまがいるようで。
もちろん事前に告知はしましたが、特に長く通って頂いているお客さまたちに悪い印象を与えてしまったみたいで、どうしたらいいのか困っているんです。
なるほど。告知はどのような方法で行なったのですか?
私がホームページとLINE公式アカウントで告知しました。ただ「ホームページもLINEも見ていなくて、来店時にスタッフから聞いて驚いた」というお客さまが多くいまして…。
ホームページもLINEも正直あまり見ないでしょうから仕方ないと思いますが、それだけで失客につながるとは考えにくいですね。
告知期間はどれくらい設けたのですか?
また、値上げの理由はどのように説明されましたか?
約1ヶ月間、「物価高騰による原材料費の増加に伴い値上げ致します。ご理解のほどお願いします」と告知しました。
また、ご来店いただいたお客さまには、スタッフが口頭で伝えるよう徹底していました。
事情は判りました。まず、告知期間があまりにも短すぎますね。他業種でも値上げが話題になっている「今しかない」と焦ったのではないですか?
また、今の社会情勢をみれば、ロイヤルカスタマーなら理解してくれるだろうという甘えもあったのでは?
おっしゃる通り、今のタイミングならお客さまも納得してくれると思いました。
失客した可能性のあるお客さまに電話をかけたのですが、前回の施術から時間が経っているせいか、なかなか出てもらえず…。ようやく電話に出てくださったお客さまからは、「長年通っている馴染みのあるサロンなのに、説明の仕方が他の客と一律に扱われたような気がして…。他のサロンに行くことにした」と…。
先生、そのお客さまからお伺いできた内容を下記にまとめています。
ロイヤルカスタマーの値上げに対する不満ポイント
●「原材料の高騰」と、値上げを当然かのような説明を受けた。
● 20%という値上げ幅が許容範囲を超えている。
● 長年の常連なのに、他の客と一律に扱われ嫌になった。
今回のような値上げの伝え方では、お客さまは自分の存在を軽視されたと感じたのかもしれませんね。
ロイヤルカスタマーは、サロンの一番のファンです。同時に、最も要求度の高いお客さまとも言えます。スタッフから値上げを伝えるだけでなく、オーナー直々に挨拶すべきでしたね。
落ち着いて考えれば、そうですよね…。
苺谷先生、今からお客さまを取り戻す方法はありますか?
お客さまを取り戻すための対応策!
矢島オーナー、いいですか。一旦信頼を失ったのですから、ロイヤルカスタマーをすぐに呼び戻す魔法のような方法などありません。とはいえ、今後の取り組み次第で戻って来てくださるロイヤルカスタマーもいるはずですし、失客を防ぐこともできるはずですよ。
対応策① お客さまに有益な情報をまめに提供
別のサロンへ行き始めたお客さまの中には、やはりヘアサロン・セラヴィが良いと思ってくださる方もいるでしょうからSNSやメールなどで、サロンからの情報をまめに提供し続けてください。サロン独自の取り組みやお客さまのベネフィット(利益)を訴求し続けることが大切です。
先生、お客さまのベネフィットとは何ですか?
ベネフィットとは、ヘアサロン・セラヴィでしか得られない付加価値のことです。お客さまの立場に立って、どのような付加価値があれば嬉しいのかを検討しながら、サロンの強みを生かしたサービスやメニューを考えましょう。
対応策② 失客予備軍へのアプローチ
現時点で次回予約を入れていない失客予備軍に対しては、お客さまごとに担当者名で季節的に考えられるホームケアのアドバイスなどを送ってください。ここで大切なのは、お客さまに価格以外で価値や魅力を感じてもらうことです。
わかりました。できることは全てやりつくします。
ロイヤルカスタマーの顧客心理とは!?
—その後、先生のアドバイス通り情報提供を続けたところ、失客数は思ったより増えず、批判的な口コミも減っていきました。また、矢島オーナーが電話をかけたお客さまは、「あの時、全部話せてスッキリしたわ」と再びお店に戻ってきてくれたそうです。
今回の件は、値上げが失客の主要な原因ではなく、値上げを告知するための準備が明らかに不足していたことです。
次に問題なのは、ロイヤルカスタマーへの対応の仕方ですね。スタッフがどのように対応していたか確認しましたか?指導はできていましたか?
値上げを決めた段階で、野村と告知方法やスタッフへの指導などをしっかり話し合うべきでした。反省です。
今回のようにロイヤルカスタマーへの対応方法を間違えると、失客につながってしまいます。まずは、下記のグラフをご覧ください。ロイヤルカスタマーの顧客心理のイメージを表しています。
この図のように、お客さまのサロンに対する愛着や思い入れ(エンゲージメント)と、サロンに対する期待値(要求度)は比例します。
愛着を持ってくれるお客さまほど、技術や接客に高い期待感を持っているという認識でいてください。そうすれば、接客態度も変わってくるはずですよ。
ロイヤルカスタマーほど、サロンに求めることが増えていくということですね!
そうです。また、今回の件では、サイレント・クレーマー※にアプローチしなかったことも反省すべきです。このお客さまを放置した場合、サロンへの批判的コメントの拡散につながり、潜在顧客さえ失う可能性があるんです。そもそもお客さまとコミュニケーションを取らなければ、何が悪かったかという理由すらわからず、サービスの改善ができませんからね。
ロイヤルカスタマーなら尚更です。直接コミュニケーションを取って、特別な扱いをすべきなんですよ。
※何も言わずに突如来店しなくなるお客さまのこと。
特別な扱い…ですか?
まずは、お客さまへの感謝の気持ちを常日頃から言葉にして伝えることです。そして、お客さまから共感を得る努力をし続けることです。
値上げを伝える際に、例えば「物価高が続く中、ギリギリまで頑張ったものの、このままではお客さまへのサービスの質が下がりご迷惑をかけてしまうかもしれない。それだけは何としてでも避けたい」という気持ちを丁寧に説明し、共感を得られていれば、引き続き応援したいと思ってくださる方もいたと思います。
確かに…。長年の常連さんだから大丈夫、という私の甘えがありました。
今やどの業界でも値上げを実施しているため、ある程度仕方ないことだと理解いただけるとは思います。しかし、それに甘えず、お客さまにベネフィットをより多く与えられないか、何かできないかなど、改めて考える機会になったのではないですか?
例えばですが、ロイヤルカスタマーだけに特別お値引きをするとか、何かプレゼントを贈るなどでもいいのでしょうか?
金銭的なサービスが悪いわけではないですが、今回特に考えて頂きたいのは、価格が20%アップしようが通い続けたいと思えるような付加価値ですね。サロンのコンセプトに伴ったサービスを考えると良いでしょう。ヘアサロン・セラヴィのことをもっと好きになってもうらためにも、サービスの質を向上させることが大切です。
はい、わかりました! お客さまの立場に立って考えてみます。
実際に、大幅な値上げをしたり、指名料などを頂いたり、割引制度やポイント還元を廃止しても、それほど失客していないサロンもあるんです。ヘアサロン・セラヴィでも、顧客ベネフィットを満たす企画をいろいろと考えてみてくださいね。
今回の件を教訓に、お客さまへの感謝の気持ちを忘れず、私たちのサロンに魅力を感じてもらえるよう取り組んでいきます。先生、本当にありがとうございました!
【今回の話から学ぶこと】 クレーム対応のポイント:値上げは共感を得よ!改めて価値創造を!
今回は「値上げ」の告知を通じて、ロイヤルカスタマーの顧客心理にフォーカスしました。値上げ自体はサロンが存続していくためには必要なことです。肝心なのは、お客さまに共感して頂くことと、顧客ベネフィットを満たすこと。社会情勢に便乗するかのような値上げと、相手の気持ちに寄り添う説明が不足していたら、その姿勢に誠意を感じられず、信頼関係を軽んじていると思われても仕方ありません。「値上げは共感を得よ!改めて価値創造を!」ですね。
次回「誰も教えてくれない〇〇の話」
“美容業界の人材育成コンサルタント”が解説する「誰も教えてくれないクレーム対応の話」
第3回 リピート客が驚愕のカスタマーハラスメントモンスター化!
更新日:2025年1月14日予定
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