「誰も教えてくれない○○の話」は、誰に聞けばいいのかわからない「サロン経営のさまざまな悩み」を、専門家に解説してもらうシリーズ。今回は、サロンワークにおいて、避けては通れないお客さまからの「クレーム」がテーマです。クレーム対応の極意を全3回シリーズでお届けします!
第1回目は、「自分は悪くない!と思うクレームへの対応」。オーダー通りに施術したにも関わらず、お客さまからクレームを受けてしまったヘアサロン・セラヴィのオーナーの矢島さんとジュニアスタイリストの甲斐さん。美容業界の人材育成コンサルタント「苺谷千尋」先生に、クレーム対応の心構えと正しい対応手順を教えていただきます!
連載:“人材育成コンサルタント”が解説する「誰も教えてくれないクレームの話」(全3回)
第1回 自分は悪くない!と思うクレームへの対応 ★今回はコチラ
第2回 値上げ後の常連ロイヤルカスタマーからのクレーム
第3回 リピート客が驚愕のカスタマーハラスメントモンスター化!
登場人物
苺谷千尋(株式会社ソルフォア コンサルティンググループ コンサルタント)
レセプショニスト、美容師、美容専門学校教員を経て、美容に携わる業種の人材育成をメインとしたコンサルタント。美容業界経験者だからこそわかるサロンが抱える課題に、スタッフ研修、業界講演など通じて精力的に取り組んでいる。
矢島さん(オーナー兼スタイリスト)
40歳女性。20代で独立。過去にスタイリストデビューをなかなかさせてもらえず悔しい思いをした経験があり、スタッフの早期育成に力を入れている。「美容師は実践教育で育つ」というのが持論。
甲斐さん(ジュニアスタイリスト)
23歳男性。アシスタントとしてもう少し経験を積みたかったが、オーナーの育成方針で早々にスタイリストデビュー。しかし本人は経験不足を感じており、特にカウンセリング力と提案力が課題だと思っている。
※2024年4月現在
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お客さまが選んだ色でカラーリングしたのにクレームが・・・。
スタイリストとお客さま、非があるのはどっち!?
―ある日、オーナーの矢島さん宛にお客さまから1本の電話が・・・。矢島さんが不在のため、ジュニアスタイリストの甲斐さんが対応したものの、お客さまはお怒りモードに。矢島さんと甲斐さんはどう対処すべきか悩み、苺谷先生に相談することにしました。
苺谷先生、こちらの不手際なら、平謝りでお直しか返金するのが正しい対応だと思うんです。でも今回、微妙な感じで・・・。これから私が、お客さまに連絡することになっているのですが、悩んでいます。
電話対応をされたのは甲斐さんですよね?クレームの詳細を教えてもらえますか?
私が施術を担当したお客さまのお母さまから電話があったんです。「娘は担当者に落ち着いた髪色にして欲しいと伝えたのに、明るい色になってしまったと言っている」と。私は、「カラーチャートを見せて色を指定してもらい、その色で施術しました」と伝えたのですが…。
なるほど。では、お客さまが色を選び間違えたということですか?
はい。それなのに、お母さまは「娘は会社の上司から髪色が明るすぎると注意されたんです。それで、落ち着いた色にしたくてそちらの美容室に行ったのに明るいままだから、先輩からも白い目で見られ、もう会社に行きたくないと言っているんですよ。そもそも矢島さんに連絡したから、矢島さんが担当してくれると思っていたのに残念です」とまくし立ててきて・・・。
この状態はマズイと思ったので、オーナーから連絡させていただくことを約束して、電話を切りました。
甲斐の電話対応が、お母さまの怒りを収めるどころか火に油を注ぐ結果になってしまったのかもしれません。ただ、その娘さんにも多少このクレームにつながる原因があるのでは?と私は思うんです。
事情はわかりました。そもそも甲斐さんは、なぜ明るい色味にカラーリングしたのですか?カウンセリングでのやりとりは、どのような感じだったのでしょう?
娘さんからは「上司から髪色が明るすぎると注意されたけど、本当は今の色が気に入っていて変えたくない」と伺いました。どのように提案して良いか迷いもあったので、カラーチャートを見せて本人に選んでもらったんです。
ひとまず、お客さまと甲斐さんの話を整理してみましょう。
お客さまとスタイリストの言い分
お母さま
⚫︎娘は会社で注意されたので、落ち着いた色にするためにサロンに行った。
⚫︎仕上がりの色が、要望と違って明るすぎた。
⚫︎髪色が明るいままだから、会社で白い目で見られている。
甲斐さん
⚫︎お客さまの指定の色にカラーリングした。
●オーダー通りに施術したから、自分は悪くない。
本来なら落ち着いた色にしなければいけない、という状況だったということですね。今の色自体を気に入っているお客さまに選ばせたことで、心理的に明るめの色を選択してしまったのでしょう。お客さまからすると、担当者に事情は話したし、何も言われないからこの色で大丈夫だと考えたのかもしれませんね。
確かに、先生がおっしゃる通りです。私は、どう対応すべきですか?
押さえておくべき!クレーム対応の基本ステップ
矢島さん、クレーム対応には『初期謝罪』『傾聴(現状分析)』『感謝&本謝罪』『解決策の提案』という4つの基本手順があります。
まずは、下記の図をご覧ください。
それでは、今回のクレームに対する具体的な対処法を説明していきますね。
STEP① 迷惑をかけたことを素直に謝罪
初期謝罪は、この出来事を引き起こしてご迷惑をおかけしてたことについて、申し訳なく思う気持ちを伝えることです。具体的には、「この度は、娘さまの髪のお色味の件で、大変ご迷惑をおかけして申し訳ありません」と伝えてください。
STEP② 相手の言い分をよく聞き、事実を確認
お母さまの話を相づちを打ちながら『傾聴』し、事実確認を行います。具体的に何が起きて、お客さまが何を望んでいるのかを正確に把握しましょう。要は『現状分析』ですね。
途中で「申し訳ございません」などの謝罪を入れつつ、お母さまが言いたいことが言い終わるまで、しっかり聞いてください。
STEP③ 感謝の言葉を伝え、改めて謝罪
先生、この「感謝」とは?何に対して感謝すればいいのでしょうか?
話しにくい事情を伝えてくれたことに対する『感謝』を伝えてください。それから把握した経緯を要約し、改めて『謝罪(本謝罪)』しましょう。
STEP④ クレームへの対応策を提示
今回の解決策の提案は、カラーのお直しが良いかと思うのですが・・・。
そうですね。相手の口調やトーンに少し変化が見られたら、応急処置としてカラーのお直しをさせていただきたいと『解決策の提案』をしましょう。もしご来店いただけるのであれば、対応は必ず矢島さんがすることを約束し、色味も矢島さんが決めてくださいね。
返金の話などは、この時点ではしなくていいのですか?
返金や他に何かするかは、お直しで来店されてからで大丈夫ですよ。
お客さまがご来店されたキッカケは、会社で注意された髪色を変えること。その目的を果たすためにも、再度ご来店いただき、会社で認められる色味にすることが肝心です。
ーその後、矢島さんは先生にお聞きした通り、お母さまに謝罪の連絡をし、後日親子でご来店いただきました。矢島さんが担当し、落ち着いた髪色に仕上げると「前回の色は娘が指定したらしいので、今回のカラー代もちゃんと取ってくださいね」と、全額支払って帰られたそうです。
このクレームに関して、お客さまのオーダー通りに施術しているので、一見サロン側に落ち度がないように見えますよね。
注文通りに仕上げたので自分は悪くない!という思いがあって・・・。電話口で謝罪の言葉を言えませんでした。
クレームを回避するカウンセリング力を身につける!
今回の件は、どちらに非があるというわけではありません。ただ、お客さまが「会社から色が明るすぎると注意された」ことと、「選んだ色」との違和感に気付くべきでしたね。
そこに気付いていれば、もっとトーンを暗くする提案もできたし、「この色で会社の指摘に対しては大丈夫ですか?」の一言につながりますよね。
そうですよね。自分のカウンセリングの掘り下げ方が浅かったのだと思います。
お客さまから伺ったご要望は、否定せずにいったん受け入れましょう。しかし、それを鵜吞みにしてはいけません。お客さまのなりたいイメージや印象なども細かく聞き出し、「そのイメージに近づきたいのなら、こうしたほうがいいのでは?」と、提案する流れをつくることが大切ですよ。
私が早期育成にこだわり、技術面の指導に力を入れ、カウンセリング力の育成が疎かになっていたのかもしれません。反省です・・・。
早期育成でいち早く若手を活躍させ、サロンの生産性を高めるのも大切なことです。ただ、育成の期間を縮めることはできても、経験不足だけはカバーできません。特にこういったコミュニケーションの分野は、とても大切なんですよ。
サロンで働く以上、お客さまからのクレームは、避けては通れないものだと思うんです。どのように若手を教育すればいいのでしょうか?
育成プログラムの中で、事例を集めてケーススタディをさせてはいかがでしょう?コミュニケーションスキルの高さで、仕上がりの精度は確実に変わりますからね。また、過去の事例を学んでもらうことで、経験の時間短縮を図ると良いかもしれません。
なるほど!早速、取り入れてみます。コミュニケーション力が上がれば、甲斐も今より自信を持って、カウンセリングできるようになると思うんですよね。
経験不足をカバーするためにも、オーナーぜひお願いします!
【今回の話から学ぶこと】 クレーム対応のポイント:初期対応は負けに行け!
人は誰しも「自分は悪くない」と思いたいものです。クレームを受けると、つい自己防衛をしてしまいがちですが、ビジネスにおけるクレーム対応、とりわけ初期対応については、お客さまを感情的にしてしまったことについて丁寧に謝り続けることが大切です。
「クレームの初期対応は負けに行け!」ですね。
次回「誰も教えてくれない〇〇の話」
“美容業界の人材育成コンサルタント”が解説する「誰も教えてくれないクレーム対応の話」
第2回「値上げ後の常連ロイヤルカスタマーからのクレーム」
更新日:2024年9月10日予定
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