データ de 考えるサロン運営とは?
タカラベルモントが定期的に実施している調査データから見えてくる課題にフォーカスし、サロンの課題解決の糸口を探そう! というシリーズコンテンツです。
実際にサロンを運営しているオーナーさまやスタッフさま、ときには生活者さまをお招きし「実際はどうしてる?」「理想のカタチ」「何をどうすればいい?」を語っていただきます。
サロン運営のヒントが盛りだくさんです!
ファシリテーター: 江﨑 江美
サロンのデータ分析を核に、サロンの売上改善や人材教育など、サロン作りをトータルでサポートするフリーのコンサルタントとして活動中。
これまでの3,000店舗以上の売上データ分析の経験を核に、データを活用したサロン運営のサポート、利益の出る店販導入のみならず、サロン内の人間関係の悩み解決、店長教育をはじめとする人材教育にも注力している。2018年までタカラベルモントに在籍。
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INDEX
> 店販の立ち位置:お客さまのヘアケアへの意識の高まりとともに、店販の重要性もアップ
> 信頼関係が果たす役割:「美容のプロ」として信頼感があれば、購入につながる
「データ de 考えるサロン運営」今回のテーマ
今回の調査データは『生活者への調査「ホームケアの意向について」』と『理美容師さまへの調査「店販への取り組みについて」』。
このデータを見て、わたしが気になったのは、生活者の「ホームケア意向に対する想い」と、理美容師さまの「店販品販売の取り組みへの積極性」に生まれるギャップ。
そこで今回は3サロンのオーナー、店長さまにお集まりいただき、お客さまと理美容師さま側の意識のずれを解消し、上手に店販をおすすめするためにどんな工夫が必要なのかをテーマに語っていただきました。
調査データ①
生活者のホームケアの意向について
生活者の約77% はホームケアについて、
「プロからのアドバイスがほしい」と思っている!
調査データ②
理美容師さまの店販への取り組みについて
今回のテーマについて一緒に考えてくださる、サロンの方々をご紹介。
Elme 代表 武田雅俊 さま
表参道・青山・蔵前の3店舗のオーナー兼スタイリスト。
全国でのセミナーや商品開発、多くの雑誌で表紙や特集を担当する髪のプロフェッショナルとして各界の著名人からの信頼も厚い。丁寧な技術と的確なアドバイスで多くのゲストを魅了している。特にカット技術に定評あり。
i+toe 代表 千葉雄平 さま
2019年にi+toe(イト)を開業。「何歳になってもヘアデザインを楽しむ」をコンセプトに、未来のために今の髪を大切に守ることを大事にしている。髪を通して生活を豊かにする"ヘアライフプランナー"としてお客さまの髪に触れる。
Blossom 成増店店長 寺山靖晃 さま
関東近郊に約40店舗展開するブロッサムグループ所属。
サロンワークを基本としながら直営事業部のメンバー教育を行いつつ、撮影やクリエイティブ活動を通しグループのキービジュアルやコンテスト等で活動中。
※50音順
※2023年4月25日現在
店販の立ち位置
お客さまのヘアケアへの意識の高まりとともに、店販の重要性もアップ
店販品についてはどのようなイメージをお持ちですか?
カリスマ美容師ブームの頃は、特に表参道や原宿界隈のデザイン系のサロンは店販にはそれほど注力していなかったかもしれません。しかし時代は変わり、一般の方のヘアケアへの意識が高まって店販の重要性が増した今、美容師側の店販への意識も大きく変わりました。売れば売っただけ自分の給料が増える仕組みを採用するサロンも増え、そうなれば若いスタッフもがんばりますよね。僕はオーナーになって経営と向き合うようになった今、改めて店販の大切さを痛感しています。技術売上に比べれば利幅は少ないですが、それでもチリツモです。
同感です。僕は、実はアシスタントの頃から結構、店販を売っているタイプでしたから、当時のオーナーに「店販手当をください」と直訴したんですよ。
すごい!なぜそんなに店販が売れたのですか?誰かに言われたとか……?
いえいえ。その商品を使えば髪の状態が良くなるのはわかっているので、それをどんな風に伝えたら理解していただけるか?というクエスチョンを解いていくのが面白かったんです。
ちょっとゲームっぽい感じですね。
そうですね。当時は店販売上が給料に反映する仕組みがなかったので、自分がしっかり結果を出せばオーナーに納得してもらえるし、手当ももらえるかも!と思ってがんばっていました。
ご自身でお店を出された時も、店販は大事にしようと考えていたのですか?
はい。店販を購入するお客さまは長く通ってくださっているような気がします。
お客さまとの信頼関係を築ける人財を育てられれば、自然と店販も売れると思います。
信頼関係が果たす役割
「美容のプロ」として信頼感があれば、購入につながる
お客さまとの信頼関係を築くことは大事ですね。
美容師が「美容のプロ」としてお客さまに認識され、日頃から「この人に任せておけば安心」という信頼感を持っていただくことが大切です。店販はその延長線で、「この人が言うのなら、間違いない」と思っていただけるのではないでしょうか。信頼関係があれば僕がお客さまのためを思っておすすめしていることを受け止めてくれるので、強く推さなくても購入してくださいます。
なるほど。ちなみに一般的な店販比率は約13%で、中には7〜8%のサロンもあります。みなさんはこの数字をどう思いますか?
人によって、または店舗によって違うと思いますが、平均すればそのくらいなのではないでしょうか。
地方はもっと高いかもしれませんね。地方はサロンの数が少ないこともあり、美容師さんへの信頼度が高いように思います。中には1人で月に300万円も店販を売る美容師さんがいると聞きます。
すごいですね……。『Blossom』では以前から店販をしっかりおすすめすることは文化にはなっていたのですが、近年、店販を改めて見直して強化しよう、やり方を変えて進化させようとしているところです。「数」よりも「質」を重視し、僕ら美容師が今以上に勉強を重ねてお客さまに自信を持っておすすめできるよう、みんなで取り組んでいます。たくさん売るよりも継続的に買っていただくことや、よりその人に合った商品のご案内をすることなどにシフトしています。
商品説明の重要性
伝えたつもりでも、伝わっていない
店販について、生活者の立場では商品の説明を長々と受けるイメージがあります。しかも、全然頭に入ってこないという……(笑)。調査結果にも、「おすすめしているがうまくできていない」とあるように、肝心なことが伝わっていないかもしれません。
男性美容師は成分や香りについて説明しがちですよね。女性はそういう説明はあまり求めていない気がします。
そうですね、聞いても覚えていないこともあります。
お客さまはアドバイスはほしいけれど、押し売りされたくはないわけです。僕もそこは気をつけていて、商品の説明ばかりにならないようにしているのですが、その心配りが逆に「説明してくれなかった」という気持ちにさせているのかもしれません。
僕は、逆にスタイリング方法やスタイリング剤の使い方を何回説明してもわからないと言われることもあります。そういう時はお客さまに自分で1回やってもらいます。
経験が浅いスタッフに大切な事
お客さまの満足度を上げ、必要な情報を的確に伝える
今日、ここにお集まりのみなさんなら、ヘアケアのアドバイスなども受け入れてもらいやすいと思いますが、若くて経験が浅いスタッフはどのようにすればよいのでしょうか。
それは一番悩ましい問題ですね。
特に若いスタッフの方が、大人世代の女性におすすめするのは、世代のギャップがあってより難しいと思うのですが……。
そうですね、でも話がうまい子もいるんですよ。もともと持っているコミュニケーション能力が高いというか。ただ、どんなにおすすめ上手でも、その日できあがったヘアスタイルが気にいらなければ店販は買いません。仕上がりを見て「かわいい!」と思って気分が上がれば、その気分の延長で店販を購入される場合もありますが、思っていたのと違うとなったら、店販を買うことはまずないでしょう。そうなると年齢やキャリアに関わらず技術力+接客力で総合的にお客さまの満足度を上げることが重要になってきます。
たしかに。あとは、まず自分で使ってみて良いと思えば、おすすめしやすくなると思います。使用感が実感できていないものはおすすめしづらいですよね。
その通りです。若いスタッフは大人のお客さまと世間話をしてもなかなか話が合いません。でも髪の話はできます。若くてもちゃんと知識があって、シャンプーも上手で、1つひとつの作業が丁寧で、心を込めてやっていることが手から伝われば、世代や性別が異なっていても買っていただけると思うんです。商品の説明ではなく、そのお客さまに必要な情報を的確に伝えることが大事だと思います。
店販に必要な教育
①ロールプレイングで美容師力を上げる
そうすると、技術力+接客力、つまり「美容のプロ」として高い意識でお客さまと接することが大事になります。
そうですね。自分のことを振り返ると、アシスタント、スタイリスト、店長、独立してオーナーへとポジションが上がっていくにつれて、店販も買っていただきやすくなったと感じています。美容師力の向上と比例しているのかもしれません。
オーナーになられた今、サロン全体の取り組みとして何か工夫をされていますか?
『i+toe』は特に店販手当を設けていませんが、毎日、ロールプレイングを行うようにしたことで、スタッフみんながお客さまに合った商品を的確に選んで必要な説明ができるようになりました。
すごいですね。具体的にはどのようにやっていらっしゃるのですか?
スタイリストのカウンセリング終了後、ケアリストがシャンプーのカウンセリングをして、お客さまと一緒に シャンプーを選んでいきます。次に実際にシャンプーをしている時に、洗い方は○○で、香りは○○で……という説明をします。それを毎回、相モデルになって立場を入れ替え、3分以内で行います。お客さま役になったときは、「ブリーチで髪が傷んで……」とか「パーマで髪がパサつく」など、設定を各自で工夫して行っています。
これを毎日やっていたら、すごい効果がありそうですね。
ありました!店販購入率が上がりましたし、トークもうまくなります。店販がうまく売れない人は、説明ができてないケースが多い気がしています。
恥ずかしいとか、あまりやりたくないという反応はないですか?
多分、照れているとは思います(笑)。ただ僕は「これも仕事だよ」と伝えています。髪に触れることだけが仕事ではないと。ロールプレイングがうまくできるようになればカウンセリングが上手になり、お客さまに寄り添える人になれると思うんです。小規模サロンだからできることかもしれませんが、ロールプレイングは仕事の一貫として続けてもらおうと思っています。
店販に必要な教育
②美容師のマインド教育が必須
みなさんのお話を聞いていても、店販を売っていくのは本当に難しい問題だと感じましたが、それ以前の問題として美容師側のマインドの問題があると僕は思うんです。若いスタッフだと「あ、それは量販店で売っています」と普通に言ってしまうこともあるわけで、自分で商品についてとても細かく調べているお客さまも多く、ますます美容師側の知識や情報はもちろん、マインドそのものを変えていかないと店販は売れない時代なのではないかと思います。
ロールプレイングも大事ですが、その前にマインド教育ですね。
答え、出ました!
マインド教育という話になると、結局、美容師力を上げるというところにまた話が戻ります。あなたは何のために美容師になったのか、どんな想いでお客さまに接したいのかという原点に立ち帰るということですから。
美容師力を上げることはお客さまとの信頼関係を築くことでもあります。信頼関係があれば、もしかすると車や家でも売れるのかもしれないですよね。
たしかに!売ろうとは思わないですけど、可能性はありそうです(笑)。
実は飲食店の経営を昨年から始めたのですが、 『Elme』のお客さまもよく来てくださっていて 、「信用している美容師さんのお店だから行ってみようかな」と思って来ていただいてるのもあるかなと思います。
それは武田さんがお客さまから信頼されている証拠ですよ。
店販力UPの鍵
美容師力を上げることが大事
スタッフのマインド教育は時間がかかりそうですね。
そうですね、仕組みを作っても機能するかどうかは別問題です。
僕は美容師という仕事の底上げのためにも店販をしっかり売っていくことは大事だと思っています。そのためには勉強することも大事ですし、マインドそのものを変えていくことが重要になってくると思います。
ホームケア商品を美容師さんからおすすめされることは「私の美容人生の面倒を見てくれている」という気持ちにさせることでもあると思うんです。サロンでの時間だけで終わりではないですよというメッセージでもあります。
あちこちから情報を得るより、通っているサロンの美容師さんから教えてもらえたらすごく楽ですし、信頼している美容師さんから「これいいよ」と言われたら使ってみようと思いますよね。なので、おすすめしないのはもったいないと思うんです。
僕は店販購入率と再来率は連動性があるような気がしていて、こうなるともう、店販を売るのがうまい、下手ということではなく、美容師としての能力が高いかどうかという話になりそうです。
そうですね。みんなで美容師力を上げ、お客さまの心に響くトークで店販を売っていきましょう。
「データ de 考えるサロン運営」今回のまとめ
高いプロ意識を持ち、信頼関係を築くことが肝心
一番大切なのは"マインド"という点で認識が一致したことにとても感銘を受けました。
やっぱりそうか!…という感じ。
どうしても、"どうやっているのか?"という"やり方"を知りたくなっていまいますが、"マインド"がなければうまくいかない。ホームケア提案も美容師力がカギとなり、お客さまとの信頼関係がポイントとなりますね。
そのうえで、今回参加してくださった皆さんは、しっかりやるべきことをされているという印象でした。
取り扱っている商品が「なぜこの商品じゃなきゃダメなのか」ということをスタッフがしっかり腑に落とした上で、調査データにあった「もっとアドバイスが欲しい」「自分に合ったケア方法が知りたい」というお客さまの気持ちに寄り添うことができれば、自然と店販への苦手意識が薄れてくるはず。
担当してくれる美容師さんからオススメされたものは「絶対に良いもの」と考えているお客さまはたくさんいます。自信を持ってオススメしてくださいね!
こぼれ話
オンラインショップを自社で運営する難しさに直面
うちは都心からは少しだけ離れた所にあるのですが、どこかに出かける前に来店されるお客さまがとても多く、重い店販品を持って帰りたくないという方が多いんです。それをどう乗り越えればいいか、思案中です。
店販品を持ち歩きたくないというのは、すごくよくわかります。シャンプーとトリートメントで2kgですからね(笑)。
みなさんはオンライン販売についてはどうお考えですか?3サロンさんともHPの中にオンラインショップをお持ちですが。
『Elme』は「ピトレティカ」を導入していますが、自社のオンラインショップはそれほど動いていないというのが正直なところで……。「ピトレティカ」サイドで梱包や発送をしていただくシステムを活用しています。これがとてもお客さまに好評です。4月からは「ビューティーシティ」というサロン専売品のサイトに替わると聞いています。
お客さま的にはオンラインショップは手軽で便利ですよね。ただ、サロンからすると梱包作業や発送作業が本当に大変なんです。
そうですね。実際にサロンがオンラインショップを運営するのは難しいですよね。結局、店販を現場でしっかり動かす教育をしようという原点に立ち返ったところです。
お客さまからしても、その場でお金だけ払ってあとから自宅に送られてくるのは本当に楽でいいですし、急に「シャンプーがない!」となった時に、気軽にサロンのオンラインショップで買えたら便利だなと思います。サロンにとっては、面倒な作業がいらないメーカーのオンラインショップも活用できると、よりいいってことですね!
『特集:支持され、発展し、ながく続くサロンづくりのヒント』他の記事
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第1回 理美容室の売上アップを目指すためにみるべきデータ
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初回来店のお客さまが「行ってみたい」と思うサロンとは?生活者 座談会 【男性編】~データ de 考えるサロン運営~
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初回来店のお客さまが「行ってみたい」と思うサロンとは?生活者 座談会 【女性編】~データ de 考えるサロン運営~
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