ママ理美容師の「ふく活」応援セミナー開催レポート

子育てと仕事を両立するママ理美容師さんたちを応援したいというキャリア支援プロジェクトの想いから、名古屋(2025年3月10日 / 35名参加)・大阪(2025年3月17日 / 44名参加)にて、「ママ理美容師『ふく活』のヒント」をテーマにしたセミナーを開催。講師には岡山県のサロン「LIOS」のオーナーであるMAYUさんをお招きしました。会場に集まった現役ママ理美容師やオーナーの皆さまへ、産休・育休復帰後の働き方に対する不安の解消法や、前向きな一歩を踏み出すためのヒントをたくさんお聞きしました。

今回は名古屋会場の様子を中心にセミナーレポートをお届けします。

「ふく活」ってなに？

ふく活とは「復職活動」を意味します。理美容師としてのキャリアを続けていくためには、産休・育休前後や復帰後の多様な働き方について、当事者だけでなくサロンみんなの在り方を考えていくことが大切です。

講師

LIOSオーナー　MAYUさん

東京の大手サロンで経験を積んだ後、28歳で地元岡山県に「LIOS」をオープン。結婚・出産後、時短勤務でありながら個人月間売上1,300万円以上を達成。妻として、母として、社長として、プレイヤーとしてたくさんの壁を乗り越えキャリアを築いている。ご自身の経験をリアルな言葉で届けるべく全国でセミナーを行うなど、《一生輝き続ける女性を増やす》ため精力的に活動中。二児の母。

※2025年5月現在

本セミナーは２部構成となっており、第１部はタカラベルモントのキャリア支援プロジェクトの活動紹介とMAYUさんによるトークショー、第２部はMAYUさんを交えたママ理美容師座談会でした。

【index】
・第1部：「ふく活について」

・第2部：「ママ理美容師座談会」

・セミナーを終えて

■第1部：「ふく活について」

まずは、参加者のみなさまへキャリア支援プロジェクトについてご紹介しました。

特に、【ママ理美容師のためのキャリアヒントBOOK 】については、実際に手元の冊子を興味深そうに見られている参加者も多くいました。

簡単にプロジェクトの概要を説明した後は、早速MAYUさんをゲストにお迎えしたトークショーへ。

拍手と共に登場したMAYUさんの明るい笑顔に会場の緊張もほぐれ、和やかな雰囲気でスタート。まずはMAYUさんのご経験についてお伺いしました。

「ママ美容師として働く中で、大変だったことはありますか？」と司会者が問いかけると、MAYUさんは「私の場合は本当につわりがひどくて、皆さんが想像する５倍はひどかったです(笑)　食事も十分に摂れず、テレビに映る食べ物の映像だけで吐き気がするほどでした」と当時のことを語られました。

つわりの影響でサロンワーク以外の生活シーンにも支障をきたしていたため、泣きながら帰宅したこともあったそう。特に MAYUさんが一番辛かったことは、周りに理解してもらえなかったこと、とのお話も。「この冊子のように、いつ何が起こるのか知ることができれば周りの人にも伝えやすかったのかなと思います」と語られました。

MAYUさんは【ママ理美容師のためのキャリアヒントBOOK】の中で特に印象に残ったものとして、「時にはSNSと距離を置くことも大切」という部分をあげました。妊娠・出産期を含む5年間、毎日ブログを更新し、現在もInstagramで積極的に発信を続けるMAYUさんですが、経営者としても美容師としても活躍されるMAYUさんに対して当時は周囲から心無い声もあったと語ります。また、ほかの美容師の近況をSNSで見た時に世の中から取り残されたような気持ちになり、SNSを見ることが辛くなったこともあると語りました。

MAYUさん

とはいえ負けたくないという気持ちは強かったので、子供を言い訳にせず、やるべきこともやりたいこともすべてやろうと決めていました。この間、長男が「美容師になるのが夢の妹と、ママを守るために弁護士になりたい」と言ってくれた時、仕事を通じて格好いい背中を見せられているんだと実感できました。私にとってはこれが正解。でも、どの働き方やキャリアにも、それぞれの正解があると思っています。

「どのキャリアも正解」という言葉には、会場全体が大きくうなずいた瞬間でした。【ママ理美容師のためのキャリアヒントBOOK 】でも紹介されているように、100%子育てに注力すること、売上を重視すること、両立を目指すこと、どれも自分で選んだ道なら正解だと、タカラベルモントは考えています。

ここで話題はMAYUさんのサロン「LIOS」で昨年復帰したママ美容師Aさんへ。復帰にあたり、「日々のSNS発信がお客さまやスタッフなど周囲の人との信頼関係構築につながるし、復帰後のスタートダッシュにも繋がる」とアドバイス。MAYUさん自身も、SNSでは施術に関することだけでなく日常のありのままを発信し続けたことが共感者を増やし、自分自身のモチベーションにも繋がったと経験を語りました。

続いては【働きやすさCHECK！シート】の話題に。

労働環境についてはサロンや状況によって変わることに触れつつも、「大事なのは取り組みと意識」と語ったMAYUさん。時短勤務の中で、施術だけの売上には限界を感じていた時に店販に注力したことで、個人月間売上1,300万円を達成した時のエピソードを語られました。

MAYUさん

施術による売り上げを伸ばそうとすると時間も体力も気力も限界はあるけど、店販は天井がない世界なので、「店販力を上げよう！」というコミュニケーションはお店でも役立つと思います。

育児と両立しながら売上を生み出すために試行錯誤した時のエピソードなど、笑いを交えながらもサロンワークへの熱い思いが語られ、親近感のあるMAYUさんの人柄に会場が引き込まれていきました。

第１部の最後に、ママ理美容師のみなさま・これからママになる方・オーナーのみなさまへ素敵なメッセージをいただきました。

ママ理美容師のみなさまへ

MAYUさん

繰り返しになるけど、諦めるのは本当にもったいない！美容業界には“これが限界”という天井がないからこそ、私は今も未来にワクワクしています。だからこそ20〜30代の若手美容師には絶対に諦めてほしくないし、心から応援したい。これまで乗り越えてきた壁は、きっと未来で自分を守ってくれる盾になると思います。

これからママになる方へ

MAYUさん

妊娠は希望通りのタイミングで訪れるとは限らず、ある日突然やってくるもの。だからこそ、美容師を目指した時の思いやビジョンを大切にしながら、将来のイメージを日頃から描いてほしいと思います。

オーナーのみなさまへ

MAYUさん

「大変でしょ」「大丈夫？」ってすごく温かい言葉だと思うけど、妊娠中にかけられて嬉しい言葉は「一緒に仕事できて本当に楽しい」「復帰したらまた一緒に頑張っていこうね」のような頼られる言葉でした。今の自分に期待してもらえるってとても嬉しいことなので、覚えておいてほしいです。

MAYUさんが真剣な表情で会場に語り掛ける姿がとても印象的で、参加者の中には「私も同じ気持ちだった…」と涙ぐむ方もおり、共感の輪が広がる温かい時間となりました。

■第2部：「ママ理美容師座談会」

第２部の座談会では、復帰に関する悩みやSNS発信の工夫など、さまざまな質問をMAYUさんにご回答いただきました。実際にMAYUさん自身も同じ経験を乗り越えたからこそ、一人ひとりに寄り添ったママ理美容師のみなさまに染み渡る言葉が会場中に広がりました。

参加者(ママ理美容師)

頑張ろうと思っても、育児で疲れて夜になるとすぐ寝てしまう…そんな自分に落ち込むこともあった。

MAYUさん

“頑張る”ではなく、具体的な小さな目標を立てることが大切。また、自分のための目標以外にも、「復帰したら育休中の気付きをサロンに共有して役立てたい」など、誰かのためになる目標を持つことや周囲を巻き込むことも、モチベーションにつながりますよ！

参加者(ママ理美容師)

1人目の復帰後にお客さまが離れてしまい大変だった。現在は2人目を妊娠中。次の復帰ではどうすればいいの？

MAYUさん

復帰してからじゃなく産前から準備！復帰する時に向けて、SNSで自分のことを発信してファンを作りましょう。

リアルな日常や、産前の悩み＆アドバイスをシェアするのもいいし、撮りためたスタイル写真を混ぜるのもアリ。大事なのは、お客様に忘れられないこと。

参加者(男性オーナー)

妊娠したスタッフや育休から復帰するスタッフに、どんな声をかければモチベーションを上げられますか？

MAYUさん

普段から会話をしていないと、いざという時に何と声をかけたらいいのか迷ってしまうと思います。だからこそ、日頃からキャリアについての考え方を共有することや、産休に入る前・育休から復帰する前にあらかじめ計画を立てておくことが大切。

参加者(男性オーナー)

ママ美容師スタッフのモチベーションを保ち、やる気を引き出すような目標設定がわからない。

MAYUさん

“給与が増えます”よりも、“あなたに期待している”と伝えることが大切。また、本人が頑張った分だけ結果につながるシステム（歩合の比率を変えるなど）にすることで、期待に応えることに対してのモチベーションも生まれますし、経営側としてもスタッフの力を引き出せてwin-winな状態になれると思います。

セミナー終了後には、MAYUさんが一人ひとりを見送りながら交流。「一緒に頑張ろうね！」と励まし、抱きしめる場面も印象的でした。

■セミナーを終えて

育児や仕事の悩みは人それぞれですが、共感できる部分は必ずあります。みんなで共感し、受け入れ、一緒に乗り越えていくことが将来の大きな支えになります。

キャリア支援プロジェクトは、ママ理美容師さまが出産や育児を経ても安心して働ける環境が当たり前になることを目指しています。理美容業界全体がもっともっと働きやすくなるようにみなさんと共に伴走し、共感者を業界全体に広げ、一歩ずつ一緒に前へ進んでいく。それが、キャリア支援プロジェクトのできることだと改めて感じた2日間となりました。