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キャリア支援プロジェクト

「人口750人の地域でカット料金2,000円UPに成功したサロンの秘訣」セミナー開催レポート

スタッフ一人ひとりが成長し、長く活躍できるサロンづくりを考える今回のセミナー。講師には、鳥取市でトータルビューティーサロン「i-dee」などを展開する有限会社i-dee代表の松岡 真さんをお招きしました。「人口750人の地域でカット料金2,000円UPに成功したサロンの秘訣」をテーマに、料金改定に向けた準備や、お客さま・スタッフの声を生かした組織づくりについて、具体的な取り組みをお聞きしました。

今回は、松岡さんのお話と参加者の皆さまから寄せられた質問を中心に、セミナーレポートをお届けします。

講師

有限会社i-dee 代表 松岡 真さん

有限会社i-dee 代表 松岡 真さん

1972年兵庫県生まれ。27歳で独立し、鳥取市に「i-dee」を開業。「日本一働きたい会社」を掲げ、スタッフ育成と理念経営に注力。

※2026年10月現在

サロン情報

有限会社 i-dee


〒680-0844 鳥取市興南町45

 

サロン規模

スタッフ数:38名

店舗数:4店舗

サロンの写真

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開く

■テーマ1:「オーナーのお客さまが絶賛失客中!?そのわけとは」

最初のテーマは、少し意外な「失客」のお話です。ご自身のお客さまを意図的に若手へ引き継いでいるという松岡さん。その理由を司会者がお伺いすると、「一番の目的は、幹部育成とスタッフ育成のためです」とお話しされました。

長年担当してきたお客さまがオーナーに集中していると、若いスタイリストが活躍する機会をつくりにくい。そんな課題を感じたことから、本店では松岡さん自身の出勤日数を減らし、若手への引き継ぎを進めていったそうです。

同時に、ご自身のカット料金を6,600円から11,000円へ改定。お客さま一人ひとりに理由を説明し、信頼するスタイリストを紹介しました。

松岡さん

松岡さん

会社やスタッフの成長のために、次回からは別のスタイリストをご紹介させてくださいと、正直にお伝えしました。施術中に若手スタッフを会話に巻き込み、お客さまと私とスタッフの三者で話しながら、引き継ぎを進めていきました。

 

担当するお客さまが増えた若手は、自分の目標に近づくとともに、オーナーのお客さまを任される緊張感から、言葉遣いや技術にも変化が生まれたといいます。

「失客」という言葉には驚きますが、その背景にあったのは、サロン全体でお客さまを大切にしながら、次の世代が成長する機会をつくるという思いでした。

オーナーの取り組み

カット料金2,000円アップに向けて、接客や技術を見直し

ここで話題は、キャリアのある女性美容師が活躍する「Pros-Proca by i-dee  (以下、「プロスプロカ店」)」へ。こちらでも「失客プロジェクト」を実施しましたが、本店の顧客引き継ぎとは異なり、一人ひとりのお客さまに提供する価値を高めるための取り組みだったそうです。

松岡さん

松岡さん

30代・40代の女性スタッフが、20代の若手と体力や客数で競うのではなく、一段階上のステージでチャレンジできるようにしたかったんです。そのために、プロスプロカ店全体でカット料金を2,000円引き上げました。

 

目指したのは、スタッフが積み重ねてきた経験や技術を生かせるサロン。そのために、12月の繁忙期にもカウンセリングや技術練習の動画撮影、ロールプレイングを重ね、サービスの質を高めていきました。こうした準備を経て、鳥取では高価格帯となるカット料金7,000円台のサロンへと転換したといいます。

 

「値上げに対して、不安や怖さはありましたか?」と司会者が尋ねると、松岡さんは「当然怖さはありました」と率直にお答えくださいました。「この人に担当してほしい」と思ってくださるお客さまに選ばれるサロンを目指したとお話しされました。

料金改定を、スタッフのこれからの働き方や成長と一緒に考える。サロンの価値を見直すうえでも、参考にしたい視点です。

■テーマ2:「制度の前に『これ』を学ぶべし」

続いては、本店で取り組んできた組織づくりのお話です。松岡さんは、2022年からお客さま満足度アンケートと社員満足度アンケートを導入。その背景には、スタッフが自ら考えて動ける組織にしたいという思いがありました。

松岡さん

松岡さん

以前は、私からのトップダウンで進めることが多く、スタッフには、自分たちの行動がお店をつくっているという意識が薄かったんです。単に売上や料金を上げようとするだけでは、お客さまが離れてしまったり、「やらされている」という気持ちがスタッフに生まれてしまいます。

アンケートを取ってみると、技術や対応のばらつき、価格への納得感には厳しい声があった一方で、スタッフの人柄や挨拶、親しみやすさを評価していただいていることが分かりました。その声を全スタッフで仕分けして、話し合いながら行動指針となる「オペレーションマップ」をつくってもらいました。私はそこには一切口を出さず、スタッフに任せました。

アンケート現状
取り組み

お客さまが何を求めているか、自分たちの強みはどこにあるか。スタッフ自身がお客さまの声を受け止め、日々の行動を考えることから始めたそうです。

翌2023年度には、スタッフの異動によるベテラン不足などを背景に、技術や対応のばらつきについての指摘が増加。カウンセリングや次回の提案などにも課題が見られ、さらなる改善に取り組みました。また、各部門の発足や店長・各リーダーの就任など、組織体制の変化もあった年でした。

はじめに

|スタッフの声から生まれた、月1回の「LCMday」

続いて紹介されたのは、2024年度に始まった「LCMday」。レッスン・クリーン・ミーティングの時間を設ける取り組みで、社員アンケートに寄せられた声から生まれました。

3年目
松岡さん

松岡さん

スタッフから「もっと他店舗のスタッフや外部の人とコミュニケーションをとりたい」という声があったんです。そこで、毎月第2月曜日を全員の出勤日として、掃除やミーティング、レッスンの時間にしました。

午前は1時間半の大掃除と部門ごとのミーティング、午後は外部講師による講習や個別レッスンなどをしています。月曜日に出勤した分は、別の営業日に振替休日を取ってもらっています。

 

日々のサロンワークを離れ、店舗を越えて交流したり、一緒に学んだりする時間。こうした機会も、スタッフの声をもとに形になったものでした。

アンケートを始めて4年目には、分析を担う「アンケートキャプテン」がスタッフの中から生まれました。指示がなくてもデータを分析し、改善策を提案するようになったそうです。資料によると、本店の2025年度の年間総売上は、アンケートを導入した2022年度と比べて約1.4倍になりました。

|日々の小さな負担にも目を向ける

小さなストレス

働く環境を整える工夫として、2店舗へのセルフレジ「LinQ Rece(リンクレセ)」の導入も紹介されました。

セルフレジ「LinQ Rece(リンクレセ)」
松岡さん

松岡さん

毎日のレジ締めで金額が合わなかったり、集計に時間がかかったりすることが、スタッフのストレスになっていました。セルフレジを導入してからは、そうしたミスや計算の負担が減り、締め作業の時間も短くなりました。

 

また、「笑顔で心からのありがとう」という理念のもと、松岡さん自身も洗濯や掃除、シャンプーなどに取り組んでいるといいます。

お客さまやスタッフの声に耳を傾け、必要な取り組みを考えること。そして、経営者自身も日々の行動で思いを伝えること。「制度の前に『これ』を学ぶべし」というテーマにつながる、具体的なお話をお聞きできました。

■参加者の皆さまからの質問にお答え!

質疑応答では、アンケートの進め方からスタッフとの関わり方、評価制度まで、さまざまな質問が寄せられました。ここでは、その一部をご紹介します。

仮

参加者

短期間でさまざまな取り組みを進めるなかで、スタッフの気持ちをどう合わせていったのでしょうか?

松岡さん

松岡さん

自分の思いや本気を、直接話して伝え続けました。また、社長個人の意見だけでなく、アンケートに寄せられたお客さまや社員の声をもとに、全員で課題解決に取り組んだことで、方向性が一つになりました。

参加者1

参加者

若いスタッフとの温度差や価値観の違いには、どのように向き合っていますか?

松岡さん

松岡さん

同じ目線の高さで話を聞くことを意識しています。面接や普段の会話から腹を割って話し、相手の悩みを聞く姿勢を持つことで、信頼関係を築いています。

仮

参加者

スタッフの評価は売上が中心ですか? 行動面なども評価していますか?

松岡さん

松岡さん

現在は売上歩合が中心で、指名売上60万円以上から歩合が発生する仕組みです。あわせて、私たちが求める美容師像や行動に対する、定性的な評価基準をつくっているところです。

スタッフ写真

最後に、司会者から今後の展望についてお伺いしました。

松岡さん

松岡さん

幹部合宿で決めたコンセプトは、「上手くいく理由を全員で作る」「同じゴールに、同じ基準で」です。割引に頼らない価値づくりと、理念やビジョンの浸透を通じて、社員一人ひとりが美容師としての喜びや幸せを感じられる組織づくりを、今後も続けていきたいと思っています。

これから

■セミナーを終えて

今回のセミナーでは、人口750人の地域での料金改定や売上向上という成果だけでなく、その背景にある人材育成や組織づくりの考え方について学ぶことができました。特に印象的だったのは、オーナー自身の顧客を若手スタッフへ引き継ぐ「失客プロジェクト」です。目先の売上ではなく、スタッフの成長や将来の組織づくりを優先する考え方に共感しました。また、お客さまやスタッフの声を取り入れながら改善を重ね、自ら考え行動する組織をつくり上げている点も大きな学びでした。変化の多い時代だからこそ、スタッフが長く活躍できる環境づくりについて改めて考えるきっかけとなるセミナーでした。

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