TBCA2023 vol.3　受賞作品・ノミネート作品を紹介！

二児の母でもあるオーナーさまが、長男の大学進学を機に独立開業された東京都江東区のサロンです。オーナーさまは長い理容師経験を経て、その後美容師免許なども取得されていました。物件は約20坪の広さでしたが、カット、シャンプーはもちろん、シェービング、セルフメイク、エステなど、オーナーさまの幅広いキャリアを生かせる「自分らしさを表現できる場所」であることを大切にしたいと考え、今回はメニュー別にブースを作ることにしました。

カーテンを開けてブースに入って、しばらくすると髪型が整って、オシャレになって出てくる、まるでブティックの試着室のようですね。来店されるお客さまの時間軸上のシークエンスを感じさせる、面白いデザインに感じました。仕切りを設ける場合、板などで囲むことが多いですが、直線的な素材を使わずにデザインしている部分も優れています。

カーテンの柔らかさを、ミラーで増幅させてうまく見せていますよね。空間をミラーで操るテクニカルなデザインによって、面積以上の広さも感じられます。オーナーさまの「自分らしさ」を表現する一方で、来店されるお客さまの美しさも引き立つような空間のコンセプトやデザインも秀逸に感じました。特に床の影が面白いですよね。カーテンが床から少し浮いているので、象徴的な光と影を生み出しています。天井の鉄骨がむき出しですが、少しの光で鉄骨の赤味を拾ってしまうため、そこに人の焦点が向かわないようにできれば、なおよかったと思います。

カーテンが床から浮いているのが、とても効いていますよね。また、ブースと違って、通路側は少し暗くさせていて、意図的な明るさのメリハリも効いているように感じます。鏡の効果もいいですね。合わせ鏡は少しでもずれてしまうと、こちらの意図や効果がうまく出せませんが、難しい技術をうまく施工されています。

ブースの内部やブースとブースの間にも明確なデザインの意図があれば、よりよくなったように思います。特にブース内は、来店されるお客さまにとって大事な空間ですからね。それでも全体として非常に印象に残る、すばらしい空間に仕上がっています。

神奈川県藤沢市にあり、上質な技術・接客で多くの人から支持を集めているオーナーさまのサロンです。オーナーさまは数年後の拡張を視野に入れ、面積の広いテナントを選ばれていますが、今後どのようなメニューを充実させていくのかはまだわからないため、将来に備え、開業当初は面積にして1/4程度を空けておきたいという話がありました。そこで、今回はこの「空き」の空間の活用を考え、デザインを行いました。

オーナーさまからのご要望は、落ち着いた空間でサービスを提供するために全室を個室化して欲しいというもの。そこで、旅館の「離れ」形式を念頭に置き、通路をつたって入室し、個室の中で落ち着いた時間を過ごしてもらえるような空間づくりを重要視しました。その中で、通常は奥や端にレイアウトしがちな「空き」のスペースを中央に配置。光沢のある黒色床を用いて池（水盤）に見立て、これを取り囲むよう通路を配しました。

個室には保健所規定でドアが設置できないことから、クランクして入室する動線を提案。完全に空間を閉じないことで、お客さまが緊張せずに済む、ほどよくプライベートが保たれた空間となっています。物件は天井が低かったため、特に天井が低くなる梁下を通路にあて、中庭を囲む軒や庇（ひさし）として表現。その一方で、個室内や池のある中庭部分では天井を高くとることで、高低差の表現により、移動にともなうシーンの変化がより効果的となるよう計画しました。

埼玉県戸田市にある半個室型サロンです。オーナーさまはコロナ禍前から、個室を一つの価値としてサービス提供するサロンを経営されており、今回はその支店のサロンとなります。

個室化はもちろん大切な要素でしたが、各ブースに目が行き届きにくく、若いスタッフさんの教育面では課題もありました。そのため、個室としてブースを囲う一方で、目線もある程度通せるようにしたいという、少し難しい要望をいただいた上で、サロンデザインがスタートしました。

当初はフレームで囲うイメージを持っていましたが、粧材などのディスプレイをうまく盛り込んで欲しいという追加のご要望がありました。

そこで、粧材のボトル1本分程度の円形の筒（円柱）を一つの単位とし、それらを集合させ、高低差をつけることで、印象的なオブジェクトを作りました。視線を通したくないところは高く、逆に視線を通すところは低く、また場所によってはディスプレイになるなど、複数の機能を持たせながら配置しました。この集合体オブジェクトを使い、空間や視線をコントロールすることで、空間にリズムやアクセントを加えています。