タカラベルモントのキャリア支援プロジェクトとは理美容師または理美容師を目指す方々が “自分らしいキャリアを築けること” “理美容業界で輝き続けられること” を目的に、 これまでの常識を疑い、環境改善から学習支援の開発まで幅広く業界発展のために活動する取り組みです。
今回ご登場いただくのは、株式会社apishにて専務取締役を務める ひぐち いづみさん。産休・育休を経て現場復帰され、子育てをしながらスタイリストとして活躍するママ理美容師のみなさまにフォーカスしたインタビューシリーズ第6弾をお届けします。
目次
【サロンへの報告編】
【産休・育休編】
【復帰編】
【スキルアップ編】
【おわりに】
お話を聞いた方
ひぐち いづみさん
apish 専務取締役
1児の母(15歳)
<産休・育休期間>
出産50日前から産休/生後7ヶ月半で復帰
※2024年9月現在
インタビュアー
キャリア支援プロジェクト メンバー 一同
【サロンへの報告編】
理美容師を「続けるため」の働き方を模索する
現在、apishには12名のママ理美容師さまが所属されているとお聞きしましたが、スタッフの方がご妊娠された時はどのタイミングで報告を受けていますか?
本人に任せていますが、安定期に入ったタイミングが多いですね。ただ、店舗内の同僚スタッフには早めに伝えている場合が多いです。
個人に任せているのですね。報告を受けた後はその方とどのようなお話をされますか。
apishの場合は(出産後も)美容師を続けたいと考えているスタッフが多いので、すぐに「これからどうしていこうか」と妊娠中の働き方について話します。もし身体に何かあった時に自分を責めてほしくないですし、会社としても責任は持てないので、「辛かったら無理せず休んでくださいね。自分自身しか赤ちゃんを守れないよ。」と伝えています。
apishにとっては私が1番最初のママ美容師だったのですが、約15年前は社長も副社長も「ひぐちさんなら大丈夫だよね!」というテンションだったので、産休までそれまでと変わらずフルで働いていました。
時短勤務にするとかはなく…?
そういう観点も無く、結構ギリギリまで働いていました。ただ、この後続いていくかもしれないスタッフのことを考えて、私が出産や産休復帰を終えてから、副社長と私で制度やお給料の話を細かく整理していきました。
今は国全体で働き方改革や子育て支援に取り組んでいると思うのですが、昔は違ったので私より上の世代の女性美容師の方は出産後も美容師を続けられている方は少なく、辞める選択をした方もたくさんいて。もしかしたら今みたいな制度があったら違ったのかもしれないとも思います。
お客さまの引き継ぎについてはいかがですか?
私が妊娠していた当時は紙のカルテでしたが、今は電子カルテなので情報の引き継ぎはやりやすくなっていると感じています。引き継ぎスタッフの紹介は、今も昔も変わらず産休直前の来店タイミングで直接ご紹介しています。
産休に限らずですが、担当が不在の日にたまたまお客様がいらっしゃったときは、担当スタッフに連絡して接客で気を付けるポイントを聞くことはありますね。「apishに行けば安心だよね」と思って来てくださる方も多いので、なるべく情報共有しています。
【産休・育休編】
選べる制度と1人ひとりに合わせた勤務スケジュール
次は産休・育休中について聞かせてください。休業期間中にサロン側からサポートしていることは何かありますか?
休業中もスタッフであることに変わりないので、apish全体や店舗ごとのLINEグループには引き続き入ってもらっています。嬉しいニュースを共有したり、店舗ごとのイベントに誘ったり、休業中も会社の一員として身近に感じられるよう工夫しています。
ひぐちさんご自身が休業中に感じていた不安や取り組んでいた事はありますか?
家族や友達のカットをしてなるべく手を動かすようにしていましたね。スタッフが会いに来てくれたりしていたので、お店の雰囲気や新しい薬剤の情報などは共有してもらっていました。
続いて復帰後について聞かせてください。復帰直後は時給制とお伺いしたのですが、曜日や時間等の働き方も選べるのでしょうか?
大きく分けると扶養範囲内でパートとして働くか、正社員で働くかを選んでもらいます。時給の場合は休業前の売り上げ等に応じて決めていて、復帰が早いほど時給は高いです。正社員の場合は、今は週30時間の勤務を本人にやりくりしてもらっているので、絶対に土日に出勤しないといけないということはないです。一切土日に出勤していないスタッフもいますね。
本人の事情によって選べるのは嬉しいですね。
【復帰編】
大切なのは「応援してもらえる人」になれるかどうか
休業期間が長い方へ、復帰に向けてのサポートはありますか?
育休中のスタッフは復帰する少し前からサロンに来て、新しい薬剤やスタイルについて周りのスタッフから教えてもらっています。
復帰まで自分のペースで整えていくのですね。復帰後といえば、お子さまが急に体調を崩して休まなければならない場面もあると思いますが、どのように対応されていますか?
特別なことはしていなくて、お客さまにご連絡した後に予約を取り直すか他の担当者を紹介する対応をしています。毎日の業務連絡やスタッフ個人のSNSを通して子供の体調不良で休んでいるスタッフがいることを知るのですが、そういった時は自分の店舗じゃなくても声をかけてフォローするようにしています。
そうなのですね。ママ理美容師以外の方々への理解を促すために工夫されている事はありますか?
昔に比べると理解はめちゃくちゃ深まっていると思います。ママ美容師自体が増えてきたこともありますが、「あと数年したら自分もそうなるかもしれない。そうなりたい。」と思っているスタッフもたくさんいるので、比較的ママ美容師の存在は身近に感じていると思いますね。男性スタッフも子供の用事で休みを取ることは日常的なので、周りもそれを自然なこととして見守っています。これはママ美容師に限った話ではないですが、周りから理解してもらうにはちゃんと仕事を頑張って応援してもらえる人になれるかどうかが大事だと思います。
ママ理美容師に限らずスタッフそれぞれに事情がありますし、お互い様の考え方は大切ですよね。
「ママ美容師」といっても、やっていることは人それぞれ違うということはスタッフにもよく伝えています。だからママ美容師と話す時も、ママというよりは1人の女性として、1人の社員として話をするようにしています。
サロンのファンを増やしチームで失客を防ぐ
時短勤務の方は、ミーティングや講習にはどのように参加していますか?
コロナ禍以降スタッフの帰宅時間が早まったので、今はもうミーティングや講習は全部朝なんですよ。なので時短勤務のスタッフも割と出られていると思います。難しい時はオンラインで共有していますね。
情報をキャッチしやすい環境なのですね。休業期間があると少なからず失客もあると思いますが、現状はいかがですか?
もちろん失客はありますし、引き継いだスタッフからお客さまが戻ってこないこともありますが、それはサロンについてくださったお客さまだと考えています。
切り替えも大事ですよね。サロンのファンになっていただくという部分で気を付けていることありますか?
サロン全体でお客さまをお迎えしたり、自分のお客さまじゃなくてもコミュニケーションを取ったり、当たり前なことばかりですが日々の積み重ねだと思います。サロンを好きでいてくれるお客さまを増やした方が店舗としての売り上げも安定しますし、給与面の不安要素もなくなります。スタッフ個人にだけお客さまが付き始めると売上も安定しないので、会社としても失客へのフォローは必須だと考えています。
売上キープの鍵はお客さまとの信頼関係
樋口さんご自身が復帰後、売上維持のためにされた事はありますか?
復帰した時点で来てくださったお客さまは、私を待っていてくださったお客さまだと思うんです。なので、1人ひとりと向き合う時間を増やし、なるべくお客さまに携われる時間を増やしてコミュニケーションを取るようにしていました。メニューの提案や解説など、プロフェッショナルとしてのコミュニケーションを少しずつ積み重ねていくことで信頼関係を築けると思います
一人ひとりとよく向き合うことで、さらに関係性を深めているのですね。
私が本当にいいと思っておすすめしているものに関しては「じゃあそれもお願いします。」と言ってくださる方がほとんどで、それが結果的に時間単価UPにも繋がっていると思います。
【スキルアップ編】
「会社にとって必要な人材」とは?
お子さまが大きくなるとキャリアにも様々な選択肢が出てくると思いますが、そういったタイミングでスタッフの方と話し合う機会はあるのでしょうか?
随時面談はありますが基本的には自分次第で、会社としては全て応援するスタンスなんですよ。
出産前の私の肩書きは美容師だったのですが、今は着付けや訪問美容師、認定脱毛師など様々な資格を持っています。今すぐ必要という訳ではありませんが、将来長く働きたいと思ったときに「会社はどういう人材が欲しいか」を自分なりに考えて、勉強をしました。頑張り方はみんなそれぞれだと思うので、自分の中で頑張れる何かを見つけて欲しいと思っています。
最後に、ママ理美容師に向けてメッセージをお願いします。
何事もチャレンジだと思います。せっかくお仕事するなら輝いていた方がいいと思うし、やりがいを持っていた方がいいと思うので、失敗してもいいから自分なりにチャレンジして欲しいです。チャレンジしないと何が向いているのかわからないし、これだったら頑張れそうというものが見えてくるならそれを1つ貫いてもいいと思うし。怖がらずにチャレンジしてほしいなと思います。
【おわりに】
インタビュー後記
ご自身の経験を活かし、経営幹部として後輩のママ理美容師だけでなく、男性スタッフも含めて育児しやすい職場環境を作ってきたひぐちさん。「ママだから」とひと括りにするのではなく、ひとりひとりに丁寧に向き合うこと。そして自分自身は「ママ」を言い訳にするのではなく目の前の仕事に真摯に取り組むこと。そうやって、スタッフ同士が互いに応援しあえる関係でいることが心地よいサロンを作り、そこにファンが生まれるのだと感じました。
ママにフォーカスした取り組みをしている当プロジェクトですが、今子育てやキャリアに悩まれている方だけでなく、これからママ・パパになる皆さんがキャリアを考えるきっかけになったり、明るい未来が描けたりするような情報もお届けしていきたいと思います。
ママ理美容師のためのキャリアヒントBOOK
【ママ理美容師のためのキャリアヒントBOOK】 は、理美容業界における産休・育休にフォーカスした復帰支援サポートブックです。出産を控える理美容師のみなさんが安心して産休・育休に入ることができるように、事前準備のサポートとして活用いただくことに加え、復帰後に理美容師として働いているイメージが膨らむよう、先輩ママのみなさんの声が掲載されています。
※キャリアヒントBOOKは「キャリア支援プロジェクト」ページよりダウンロードできます。
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