ライター 前田正明 | カメラ 更科智子 | 配信日 2007.3.1
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世界のトップクラスに影響され美意識が根本的に変わった
本当は学生の頃は芸術家になりたかったんですよ。彫刻や油絵をやってましたから。でも当時、ヘアメイクのサイクサ・サトシさんの影響を受けました。彼は後にパリに渡ってカメラマンになり、それからイタリアン・ヴォーグなどのカバーを担当するんですが、彼の感性に憧れてヘアの道に進んだんです。そして日本のサロンで働いている時に、パリコレのヘアメイクのアシスタントをするチャンスをもらいました。かなり有名なヘアスタイリストのチームでしたから、有名なメゾンばかりでした。モデルもリンダ・エヴァンジェリスタやナオミ・キャンベルなどのスーパーモデルでカッコよかったですね。彼から受けた影響は、デザイン性とバランスです。それまで、首から上など一部分しか見ていなかったのが、コスチュームなど全身で捉える重要性を学びました。それ以来、僕の中での美意識が根本的にガラッと変わりましたね。
オリジナリティが求められる海外の美容事情に触発される
それから後に、世界的に有名なヘアスタイリストのオディール・ジルベールと出会い、帰国後もパリコレのシーズンはパリで仕事。東京とパリを行ったり来たりでした。彼女のセンスやテクニックを、そのままサロンワークでインスパイアーしたいなと考えました。それまで勤めていた日本のサロンでは、約9年間で一生分くらいのカットをするほど忙しくて。それくらい忙しいサロンワークを経験したからこそ、海外に行ってヘアメイクの仕事をした時には、今までにない刺激を受けたり触発されて、いろんなアイデアがいっぱい浮かんできました。日本では、流行のスタイルを作るためにカットなどの基本テクニックを学びましたが、海外ではオリジナリティが求められるんですよ。それは、他の人がやってないデザインなんです。その発想から受けた影響力は大きかったですね。
ベーシックを身につけていたことが海外でも大きな力となった
日本のサロンを退職してパリに渡る前には、1年かけて人を育てたりお客様を紹介したりして、自分の抜けた穴を埋めてから退職しました。それがルールだったので…。でも、独立して自分のサロンを持ちたいという気持ちは、当時はなかったんですよ。やっぱり、パリに行きたいという気持ちが強かったですから。それで、パリに行く時には、ハサミを持っていかなかったんです。当然ヘアメイクの仕事ということもありましたが、向こうでは発想が違ってて、道具にこだわったりハサミを使ってカットするというのではなく、いかにしてヘアを創作するかという考え方ですから。だからスタイルを見ても彫刻的で、今までの仕事とはまったく違いましたね。でも、日本でベーシックを身につけていたので、その点ではスムーズに仕事に馴染むことができました。
一緒に働きたいという友人たちに後押しされて出店
パリで3年間を過ごし、しばらくしてから日本に一時帰国しました。サロンを出店するのが目的ではなかったのですが、『もし、池部さんが出店するなら一緒に働きたい』って言ってくれた人が何人かいたんです。その時は『じゃあ、考えておくから』とだけ返事をして、不動産屋さんにもしいい物件があったらフランスにいるから連絡をしてほしいと伝えたんです。するとパリに戻る前にFAXがきて、『一度、物件を見ませんか』と書いてあったんですね。そこは中目黒の川沿いにある、倉庫みたいなところだったんです。今は人気の場所なんですが10年前はへんぴなところでね。だから、みんなは反応がよくなかったんですが、僕だけなぜか気に入ったんですよ(笑)。
日本とフランスを往復しながら仕事をこなす
それで、出店しようという気になったんですが、話が急だったので大変でした。フランスからは『何やってるんだ? 早く帰ってこい!』っていう連絡が入るし、こちらでは契約をお願いしますって言われるし…。でもよく考えたらお金がないしで、てんやわんやでしたね(笑)。そこで、あるメーカーさんにお世話になって、いろんなアドバイスをいただきました。結局、サロンをオープンしましたが、フランスの家はそのままだったので、半年後にまたパリに渡ったんです。向こうでもいろいろと事情があったんで、日本とフランスを往復しながら仕事をしていました。無事日本でサロンをオープンしましたが、オープン当初は暇でしたよ。当然、海外から帰国したばかりで顧客がいませんから。暇すぎてキャッチボールをするスタッフもいました(笑)。でも、妙な自信はあったんです。それは、自分がいれば、自然とお店が流行るという自信。なぜか、お客様の方から来てくださるんですよ。
雑誌を見て昔のお客様がまた来店された
例えば、原宿とかを歩いていると、昔のお客様にバッタリ出会ったりするんですね。『池部が歩くと、客に当たる』って言われていたくらいです(笑)。それで、帰国してサロンをオープンしたことを告げると、それが口コミとなってまた大勢の方に来てもらったり…。オープン後3ヶ月くらいしてから、一気に来店客が増えました。それ以外にも、以前お世話になった雑誌の編集長が来て『どうして雑誌の仕事をやらないの?』って言われたりもしました。それで、『じゃあ、やりますよ』って返事したら、雑誌のお仕事のFAXがたくさん送られてきて。サロンワーク以外の仕事もするようになると、雑誌を見て以前のお客様がまた来店されるというケースもたくさんありました。
携帯電話で予約して濡れ髪のまま他店から来店する客も
雑誌の仕事を再開することになって、おもしろい現象もありました。それは、パリに行く前に担当していたお客様たちが、他の美容室での施術中にそこで読んでいた雑誌で僕が紹介されているのを見つけ、携帯電話でそこから予約してくるんです。そのサロンでは、『今日はカットはいいから』と言ってカラーだけして、僕のサロンに来るとか。だから、髪は濡れたままという方もいました(笑)。うれしい反面、携帯電話の普及は恐いなあと思いましたね。でも、クリエイター系のお客様が多いので、本当の意味で口コミのお客様が多いです。
スタッフにも同じようにコレクションでヘアメイクの経験をさせる
出店してからの問題点として、スタッフ教育があります。これに関しては、以前勤めていたサロンで徹底的に叩き込まれましたから、指導方法に迷いはありませんでした。しかし、そこから先は本人たちの問題ですよね。しかも、いろんなことを経験した方が吸収も早い。そこで、オディールが来日してシャネルのショーやトウキョウ・コレクションを手掛ける際に、ヘアをエイト&ハーフだけでやらせてもらいました。つまり、僕が今までやってきたことをスタッフたちにも経験してもらおうと考えたわけです。美容師として、ファッション・ショーでヘアメイクの仕事をするのは、当時ではめずらしいことでした。しかも、オディールと一緒に仕事をしたい人は、世界中に山ほどいますからね。そのおかげで、スタッフたちもいい仕事ができるようになりましたから、本当に感謝しています。
若い人たちにはイメージ作りを大事にしてオシャレになってほしい
経営者になっての悩みは、経営面。最初はなりたくて経営者になったわけじゃないので、いまだに技術の方が得意です(笑)。大事なことは、どんなヘアスタイルを作りたいか、どんなスタッフに働いてほしいか、どんなサロンがカッコイイかということです。そのためのイメージがとても重要だと考えています。具体的に、『こうあるべきだ!』という自分の強い意思を持っているかどうかが大切です。これから美容を目指す若い人たちにも、イメージを大切にしてほしいと思います。技術の修得も大事ですが、どんなヘアスタイルを作りたいか、どんな人の髪を切ってみたいかなどを、きちんとイメージできるかということです。それと、自分自身がオシャレじゃないとダメですね。それは、オシャレな人はオシャレな人に髪を切ってほしいと思っているからです。だからこそ、これからもヘアスタイルはクリエイティブでないといけないと思います。
池部隆司(イケベリュウジ)
1994年に渡仏。帰国後に『EIGHT & HALF』を設立。代官山・青山・アトリエの3店舗を展開し、サロンワークの他に雑誌、広告、CM、コレクション等で活躍中。その他の雑誌やメーカーのプロダクトデザインも手がける。
※2007年4月5日現在
シリーズ:この人から学ぶ、成功の秘訣「TBMG」
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木村 和彦さん(株式会社 友美) | この人から学ぶ成功の秘訣 TBMG
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