安村彰浩さん(ヘアクリエイティブサロン ヤスムラ)

安村彰浩さん(ヘアクリエイティブサロン ヤスムラ)| この人から学ぶ成功の秘訣 TBMG

家業の理容室を継ぐため高校時代に通信課程で理容を学ぶ。厳しい修行時代とロンドン留学で技術を学び、実家に戻り父と共同でサロンワークに励んだ。その後、経営面に着目し、2代目たちを集めた研究会や経営塾を設立。さらに、女性スタッフの採用をきっかけにした付加価値メニューの導入や、勉強会を通じて理容業界の今後に目を向け始めた。現在、タカラベルモントのIKIMEN バーバープロジェクト等の講師として業界の活性化に尽力している。

※注:IKIMEN バーバープロジェクトは終了しております。

ライター 前田 正明 | カメラ 好川 桃子 | 配信日 2015.6.18

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修行を積むためあえて厳しい環境を選択したが・・・

理容師になられた経緯と修行時代のエピソードを聞かせていただけますか?

安村彰浩さん(ヘアクリエイティブサロン ヤスムラ)

父がこの場所で理容室を開業して今年で40年になります。その2代目として家業を引き継いでいます。
高校2年生の時に家業を継ぐ決心をしてすぐに通信課程で学び、卒業後は南大阪の理容室に入社し約6年間修行をしました。修行先のサロンはコンテストでチャンピオンを輩出するなど業界では有名なサロンで、支店も5店舗ありスタッフは30名くらいいました。当時の私は生意気にも「どうせ修行を積むなら厳しいサロンを紹介してほしい」と父に言いました。身内で修行をする人も多いですが、私は甘えになると思い外へ出る決心をしたんです。そして、理容師になれば長期的な休みは取れないと思い、入社が決まって勤めるまでの1ヶ月半ほどバックパッカーで北海道へ放浪の旅に出ました(笑)。その後、予定通り入社したんですが、すぐに後悔しました。厳しいサロンだとは聞いていたんですが、あまりにも厳しすぎて。当時は先輩と相部屋の寮生活で、サロンワークはもちろん日常生活においても上下関係の厳しさを実感しました。

理容師としてレディスカットを学ぶためロンドンへ留学

 ヴィダルサスーンへ留学の経験があるそうですが理容師としては珍しいですよね?

修行は5年と決めて、その後は留学したいという希望を持っていました。父がサロンをオープンした当初からユニセックス・サロンとして展開していたので、私もレディスカットを勉強しようと思い、サロンを退職してロンドンのヴィダルサスーンへ留学することを決めたんです。
ロンドンでの半年間は毎日が刺激的でした。アパートで一人暮らしをし、ヴィダルサスーンアカデミーで授業を受けながら現地の英会話スクールにも通い、夜は日本食のレストランでアルバイトもしていました。授業では業界用語はなんとなく理解できましたが、カットモデルとのコミュニケーションを取る際に言葉が通じなくて、教官から通訳を雇うように言われました。しかし、当時の通訳契約料は1日2万円もしたので、必死で分かったふりをしながら雇わずに頑張りましたよ(笑)。午前中はレクチャーやデモンストレーションなどの講義、午後からはディスカウント料金で来店されたお客様をモデルにして実践形式でカットをしました。ネープやサイドなどの各セクションをカットするたびにチェックが入り、たとえ2mmでも長さが違うとやり直しをさせられるほど厳しく、1人カットするのに、2時間ほどかかる事もありましたね。

ヘアクリエイティブサロン ヤスムラ

将来、オーナーとなるために必要な知識を学びたい!

研究団体を設立してさまざまな活動をされていますが最初の展開はどんな内容でしたか?

この業界は昔から経験年数を目安にしてスタッフに独立を勧める傾向にあります。また、修行中も教育や指導は技術面が中心で、経営者として必要な教育はおろそかにされがちでした。これまではそれでも経営が成り立っていたかもしれませんが、今の時代では難しいでしょう。いまでも、技術さえあればお客様は来店されると思っている方もおられます。そんなことに疑問を抱き経営者として必要なことを学ぼうと考え、研究団体を立ち上げました。帰国して実家のサロンに戻り、約10年後に2代目たちを集めて立ち上げたのが「mane's(メインズ」)という研究団体です。これは、技術的な勉強のみならず、経営面など将来的にオーナーとなるために必要な知識を学ぼうというのが目的で、経営コンサルタントなど業界外の方をお呼びして活発に活動しました。当初は友人と2人でスタートしましたが数年後には10名以上になりました。それからmane'sをメンバーに譲り、新たに経営塾としてBJRを設立し、現在でも月に2回、活動しています。

安村彰浩さん(ヘアクリエイティブサロン ヤスムラ)

サロン経営を円滑にする親子関係で大切なポイントとは?

 サロンワークや経営面に関して、お父さんとの共同でのお仕事はどうですか?

ヘアクリエイティブサロン ヤスムラ

父の接客に関して誰に対しても分け隔てなく入っていける点を尊敬しています。私は接客が苦手で、その点では勝てないと思っています。
セミナーでもアドバイスするんですが、2代目が自分の意見をはっきり言えるのは売上げの半分を占めてからではないでしょうか。修行先のサロンは先進的でそれを経験して帰ってくるんでしょうが、先代も職人としてのプライドがありますからね。まず、実績を上げてから自分の理想を進めないとトラブルになり、結果的に別のサロンを出店するというケースがよくあります。お互いによく話し合っていかに譲歩できるかが親子関係を円滑にするポイントでしょう。私も実績を上げながら徐々に私の意向を受け入れてもらい、経営権を譲り受けたのは帰店して17年後です。

サロンに自分の考え方を全面的に出したいと考えたのはいつごろですか?

新規のお客様の担当がほとんど私になり、売上げが70%くらいになったころですね。数年ごとに改装を行っているのですが、今から4年前には、はじめて父の意見を聞かずに私の希望で改装をして現在の個室を設けました。内装のデザインに関して反対されるのが分かっていたので、その間は旅行に行ってもらいましたが、帰宅して個室の壁紙を見た時は、絶句してましたよ(笑)。

女性スタッフの採用をきっかけにケアメニューを導入

 個室を設けてスパメニューを展開しているのは当初からの希望だったのですか?

きっかけは女性スタッフの川上が入店した時です。彼女はもともとブライダルの仕事を希望していました。そのために、カミソリを使ってシェービングができる理容師免許を取ろうと思ったようです。が、入店時には免許もまだ持っておらず、どうしたものかと、とても悩みました。そこで、女性スタッフとしてどのようにサロンに貢献してもらうのが良いかを考えた時に、まず導入したのがカット中のハンドケアでした。その後、肩やフェイシャルのケアメニューなどを増やしていき、最終的に個室でサービスする方がいいと考えて設置しました。最初からメニューありきではなく、彼女を生かすために導入したのが理由ですね。

道具

男性の世界である理容業において女性目線での発想や存在意義は大きかったのでは?

私の妻も一緒にサロンワークをしているんですが、女性スタッフがいることの一番のメリットはサロン内の空気感ですね。いわゆる「気」です。飲食店などでも、いい雰囲気のお店は美味しく感じますよね。女性ならではの気配りやケアができて華やかさが生まれる事が、良い「気」につながっているのではと思います。ただ、今思えばなぜ未経験の女性を採用したのか不思議ですが(笑)。初めて女性スタッフを育てることで自分も成長させてもらいました。彼女は芯が強く何より根性があります。この世界で生きていく上で自分を売り込む術も持っているので貴重な存在ですね。

安村彰浩さんと奥様(ヘアクリエイティブサロン ヤスムラ)

理容業が儲かる業界になるために考えなくてはいけないこと

付加価値メニューの導入やシステムについてどうお考えですか?

既存の理容室において付加価値メニューによる客単価UPは重要ですが、一定のラインで限界が来ます。例えば2,000円以上のプラス料金をいただくには、サービス内容の充実は言うまでもなく空間や設備を整えることも必要です。当店が、個室を設けた理由はそのためでもあります。このスペースはシャンプーイスのカルムを設置して女性のスパメニューに使用していましたが、私の勉強不足で思惑通りに行きませんでした。それを、改装時にメンズスパに特化して改めて売り出したところ軌道に乗りました。これはコンサルタントの先生からのアドバイスによるものでした。一般企業もコンサルタントされている方で、当店だけでなく、この業界全体に対しても客観的な意見をもらえるのでありがたい存在です。この方からは今でも勉強させていただいています。

ヘアクリエイティブサロン ヤスムラ

業界外の方からのご意見はどのような点で参考になっていますか?

例えば今は、大卒の若い人材が、一般企業に就職するのと同じようにこの業界で働くという事はほとんどありませんよね。一般企業と理容業界の差は何なのでしょうか。その差を埋めるための課題が山積していると思います。労務関係や社会保障などの点でまだ理容業界は遅れを取っていますし、社会的地位を向上させるために労働環境を見直す必要もあるでしょう。そのために生産性も向上させないといけません。勉強会ではこれらの事を学んでおり、大変参考になります。業界内での競争は価格競争になりがちなので、もっと外にも目を向ける必要があると思いますね。

ビジネスにおいて戦略を練り明確なビジョンをもつことが大切

タカラベルモントのIKIMEN バーバープロジェクトで講師もされているそうですが、今の理容業において何を変えていく必要があると思いますか?

私が思うのは、今までのビジネスモデルでは通用しない時代に突入していることを、どれだけの方が理解しているかということです。これから先、切って剃って洗って気持ち良かっただけではお客様は満足されません。満足すれば料金が高くても納得されるし、そうでなければできるだけ安い方を選択する、二極化が進んでいます。そんな時代の中で、ご自身のサロンはどのスタンスで展開するのかをまだつかめていない方が多いようですね。セミナーでもそのような質問が大半なんですが、まず自分のサロンを見て売上げを上げるには何をすべきかを自問自答し、自ずと見えたことを一歩踏み出して実践できるかが大きな鍵でしょうね。ビジネスにおいて「戦略・戦術・戦技」という言葉がありますが、略がなければ術が決まらないし武器も揃えられませんよね。略や術が決まっていないのにすぐに儲かる武器を欲しがる方が多いように思います。要は、きちんと戦略が練られていてどのように戦うかが大事です。そして、最終的にどうなりたいか明確なビジョンを持つことが大切だと思います。しっかりとビジョンを確立されているサロンは成功されていますよ。

ヘアクリエイティブサロン ヤスムラ

今後のマーケティングの主流は「自己実現」という新しい概念に

セミナーではどのようなお悩みや質問が多いですか?

アンケート用紙

やはり、親子関係や戦略的な質問をたくさん受けます。失敗しない適切な方法を教えてくださいという質問も多いですね。ビジョンを持っていても、100点を求めて、成功を確信するまで行動できない方が多いように思います。私は60~70%の確信で行動に移し、残りの40~30%のリスクは仕方ないと考えています。多少のリスクは精査して次の行動で対処すればいいんです。セミナーでは、少しでも多くの方に行動に移してもらえるように実践して向上しているサロン紹介をしながらお話をしています。また実際に店に来ていただいて、当店のメニューやテクニックをご紹介する事もあります。

サロンの今後の計画などを含めて安村さんは将来のビジョンをどのようにお持ちですか?

当店のお客様はカットのみではなく、癒しや、スッキリした気分を味わう為にリピートされているようです。私もそこに価値観を見出しているので、今後はお客様により一層幸せや嬉しさを感じていただくのが次のテーマです。次回のIKIMEN バーバープロジェクトのセミナー(粋男塾)でもお話する予定ですが、昨年のワールドマーケティングサミットジャパンにおいて「マーケティング4.0/自己実現」という概念が発表されました。これはマーケティングにおける4つめの過程で、今後は価値主導の時代から自己実現が根底になるだろうとされています。当店でもこの「自己実現」を目指していきます。私自身は50代でハサミをおいて、将来は理容業がもっと儲かって人材が多く集まる魅力的な業界になるように、セミナーやコンサルタント業を通じて業界の力になりたいと考えています。それが一部ではなく総体的に盛り上がるのが理想ですね。

ヘアクリエイティブサロン ヤスムラ

人材不足だからこそライバルが少なく勝ち残れるチャンス!

最後に理容業界で頑張っている人や若い人たちにメッセージをお願いします

安村彰浩さん(ヘアクリエイティブサロン ヤスムラ)

昔は私も『散髪屋の息子』という言葉の響きをややネガティブなイメージに感じていました。また、美容と理容を比較してどちらがかっこいいスタイルを作るかと問われると美容と答える方が多い気がします。私はそんな世間での風潮を払拭して、理容業は本当に素晴らしい職業だということをもっと明確に広めたいと考えています。こんなに接客時間が長くて、お金をいただきながら「ありがとう!」と言っていただける職業は他にないと思います。もちろん技術は大切で、そのために、努力や厳しい修行を積む必要があるでしょうが、今後は技術だけでは選ばれるサロンにはなりません。だから、この理容業界で頑張っている人や将来を担う若い人たちには、いろんなことを多角的に学びながら頑張ってほしいと思います。人材が不足している今は、ライバルが少ないと考えれば、それが逆にチャンスでもありますからね。
そして、お時間があれば「IKIMEN バーバープロジェクト」にもぜひご参加ください。今後の粋男塾は、10月から半年間、全国8会場でセミナーを行う予定です。皆さまとお会いできるのを楽しみにしています。

※注:IKIMEN バーバープロジェクト、粋男塾の募集は終了しております。

安村彰浩さん(ヘアクリエイティブサロン ヤスムラ)

安村彰浩(ヤスムラアキヒロ)

株式会社WIZARD、ヘアクリエイティブサロン ヤスムラ CEO。大阪府出身。大阪中央理容美容専門学校・通信課程理容科卒業。1981年、松本理髪店(大阪)に入社。1988年、ヴィダルサスーン(ロンドン)へ留学。同年に帰国し実家(兵庫県西宮市)のサロンに帰店。1997年に2代目の跡継ぎたちによる研究団体・mane'sを設立。2003年、サロンの経営権を父から譲り受け、2005年に経営塾BJRを設立。2010年、株式会社WIZAEDを設立し法人化。それまで数回にわたりサロンを改装しメンズスパに特化した個室を有する。現在は、サロンワークを中心に経営セミナー講師、コンサルタント業、コラムの執筆などで幅広く活躍中。

ヘアクリエイティブサロン ヤスムラ

ヘアクリエイティブサロン ヤスムラ

大人の男性がラグジュアリーな気分でくつろぎながら身だしなみを整えていただけるヘアエステサロン。個室ブースやスパブースも併設しており、いつものヘアカットだけではなく、スチームシェービング・フェイシャルエステなどさまざまなオプションメニューをご用意しています。また、女性専用メニューとして理容室ならではのレディースシェービングやエステもあります。どのメニューもお客様がご満足いただける充実した内容でご提供しています。


https://yasumura.net/

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