浅井 陽介さん（Landmark）| この人から学ぶ成功の秘訣 TBMG

私が美容師になったきっかけは、東京でヘアメイクをしている親戚の叔父の影響です。当時の叔父は第一線で活躍しており、有名人のヘアメイクを多数担当していました。そんな叔父が、私が中学生の頃に大好きだった女優さんのサインをもらってきてくれたんです。しかも、私の名前入りで。それがすごく嬉しくて、自分もヘア関係の仕事に就きたいと思うようになりこの道を選びました。最初はタレントさんを担当できるヘアメイクの仕事をしたいと思っていましたが、叔父に基礎を身につけるためにまず美容師になることを勧められ、地元の美容学校に入学しました。私は子供の頃から負けず嫌いで、とにかく何でも一番にならないと気が済まない性格だったので、専門学校時代は一生懸命に努力して技術をマスターしました。当時はまだインターン制度があった時代です。私は将来的にパリに留学したいと考えていたので、その夢を叶えるためにまずは東京に出て、パリに本店を構える有名サロンの直営店に入社しました。

入社して意気込んでいたのですが、実はインターン時代を経てわずか2年で退職しました。理由は、先輩たちと私の仕事に対する想いに温度差を感じてしまったから。早く一人前になるため、夜遅くまでレッスンすることなどは覚悟していましたが、なぜか自分が思い描くイメージと違っていると感じました。その後、名古屋に戻って全国展開をするサロンに入社。私はそこでスタイリストとしてデビューしました。その当時もヘアメイクの仕事をしたかったので、自分で作品撮りをしてブックを作り、地元の出版社などへ売り込みに行きました。ギャランティはいらないので、ヘアメイクの仕事をさせてくださいと。そこで5～6回ほど雑誌の撮影を経験させていただきました。メイクアップは先輩に教えていただいたり、雑誌を見たりして独学で学びました。順調に進んでいるかのように思えましたが、そこでもなぜか他のスタッフの姿勢に疑問を感じ、わずか約3年で退職しました。

3店舗目に入社したのは名古屋の栄にある人気サロンです。実は、新店舗を出店するので来てほしいとお誘いをいただき、今までそんなお話はなかったので感動して入社を決意しました。当時は美容ブームということもあり、ヘアショー・雑誌・テレビ関係のヘアメイクやセミナーの講師など、サロンワークの他にもたくさんのお仕事をさせていただきました。そんな25才くらいの時でした。自分ではトップになった気分で少し有頂天になっていたんです。売り上げも一番になり、オーナーから可愛がられていたことで自分がこのサロンを支えているんだと勘違いし、後輩たちにも厳しく接していました。そして、ある日のミーティングがきっかけで邪険に扱われたと勘違いし、店長に対して高圧的な言動をとってしまいました。今思えば私が調子にのり、天狗になっていただけなんですが、その頃はプライドが高くアツくなってしまいました。そこで周りが自分を理解してくれないのであれば退職しようと考えましたが、自分の存在意義を確かめる為、パリに修行に行くことにしました。今思えば本当に甘い考えですが、パリに行く間、お店には期間も決めずにお休みが欲しいとお願いをしました。

休業を申し出ると、オーナーは快く了承してくれました。きっと私の未熟さを理解してくれていたんでしょうね。それから単身でパリに渡りました。叔父や知人のコネクションに頼ることもなく、事前の準備は旅行代理店へ宿泊の相談に行ったくらい。フランス語も話せないのに、最低限のお金だけを持って行けば何とかなるだろうという安易な考えでいました（笑）。そしてパリに到着してサロンを探しましたが、すべて門前払い。ドイツやニューヨークの支店であれば雇ってくれるというお話もありましたが、パリへのこだわりがあったので断ってしまいました。最終的にお金がなくなれば野宿も覚悟していたし、路上でカットをしようと看板も準備していました。「私は日本の美容師です。あなたの髪をカットさせてください」とフランス語で書き、最低限のカット道具を用意して。ところが、誰も相手にしてくれないんですね。現実はそんなに甘くないんだと痛感しました。お金がなくなりやむを得ず帰国しましたが、現地の日本人と友達になったり見聞を広げることができて、今では貴重な経験ができたと思っています。

パリでは約1ヶ月の滞在でしたが、結局1人もカットできませんでした。帰国して感じたのは、自分が認められる存在でありたいということです。パリの路上では大勢の大道芸人たちがパフォーマンスをしていました。そんな彼らも実は一流で、路上といえどもそこは表舞台なんです。そんな中で実力も実績も無い日本人の私が路上カットにトライしても、当然誰も見向きもしません。帰国してそんなことを思いながら自分のあり方を見つめ直しました。結果も残せず1人では何もできない、技術的にも人間的にも未熟だとその時に気づいたんです。そして帰国後に、オーナーに挨拶に行きました。長い休業にも関わらず復帰を認めてくれましたが、今さら私の居場所はないと思い退職させていただきました。その後、体調を壊して美容師を辞めようと他業種の仕事をしましたが、やはり私のやりたいのは美容の仕事だと感じ、FC展開をしているサロンの本部に入社して美容師の教育業に就きました。そこではサロンの現場を離れてスーツ姿でマニュアル作りなどを担当しました。

今では約80店舗のFC店を有している会社で、マネージャーとしてスタッフ教育や財務管理などの仕事をしました。サロン経営ではそんな仕事も大切なんだと実感し、楽しさも感じるようになりました。そして、サロン経営に徐々に魅力を感じ、自分も独立してお店を持ちたいと思い始めたんです。サロンワークの魅力を再認識しつつ、自分が探し求めていたものが見えた気がしました。自分が成功するために、他人に迷惑をかけてはいけない、自分の実力を過信してはいけない、ベストを尽くしていてもそれがマックスではない。そんなことが、それまでの経験とマネージャー業を経て論理的に考えられるようになりました。ずっとサロンに勤めていて独立するという一般的なケースではなく、私はいろんな経験をさせていただいたので違う角度から物事を見ることができました。苦い思いをし、また一度ハサミを置いたことで経営者の目線で見ることができ、そこで独立する自信ができました。

独立して出店したのは、ここ三重県松阪市です。当初は名古屋での出店も考えましたが、美容バブルだった当時、自分の実力や人口に対するサロンの増加率を考えると名古屋での出店は難しいと不安を感じたからです。そして、名古屋で知り合って結婚した妻の実家が伊勢市だったので、最初はそこをターゲットにしました。しかし、観光地としては有名ですが、人口は決して多くはなく、地域密着でやっていくには難しいと判断し、隣の松阪市に出店することにしました。前に勤務していたFCのお店が、近隣の市は1店舗しかなかったのに、松阪市には3店舗あったんです。それも決め手となり、松阪市内にオープンすることにしました。オープンしたのは2006年です。フロア面積は12坪で、セット面が3面でシャンプー台が2台でした。見知らぬ土地だったので、1ヶ月前からリーフレットを作ってご近所の方々に手渡しをしました。ポスティングではなく直接お渡ししたのは、ご挨拶と同時に私の人間性を知ってもらいたかったからです。そこで、近所のお宅1件1件を訪ね、お話をしながら熱意を伝えました。多分、その時の私は必死なあまり泣きそうな顔をしてしていたと思います（笑）。

当初は妻と2人でスタート。前のお店からの引継客はゼロでしたが、手渡ししたリーフレットのお陰で初日からお客様が来られました。その時、パリでの苦い経験も無駄ではなかったと思いました。まったくゼロからのスタートで、自分がやらなければいけないという強い信念が生まれましたから。それと、有頂天になっていた自分を反省して、独立してからは謙虚な姿勢で接客を心がけました。その後、口コミやご紹介でお客様が徐々に増え、お陰様で順調に売り上げを伸ばしていくことができました。当初の目標は、3年後に法人化して5年後に2店舗目を出店することでした。しかし、キャパシティがいっぱいになったので3年で今の場所に拡張移転しました。フロア面積は45坪で、コンビニエンスストアの跡地ということで駐車スペースは15台もあります。今では遠方から来店される方も多いです。有難いことに、スタッフを含めてお店の雰囲気がいいという理由で長年お付き合いしてくださる方がたくさんいらっしゃいます。それと、集客に関してオリジナルの特典を設けたのも好評の理由の1つかも知れません。

ご紹介に関して、双方を10％オフにするのはよく聞くサービスです。そこを、当店では30％オフにしました。さらに、複数の方をご紹介していただくと、その人数分をストック。例えば、50人を紹介していただくと、紹介者には50回分のサービスとなります。その他の独自のシステムとしてスタッフに対しては、1050円以下のメニューならアシスタントでも自己判断でご提供できるルールになっています。お客様に喜んでいただけるのなら、時間をかけて確認をするよりも、即実践をすることが大切だと思うからです。アシスタントでも売上に貢献できるチャンスがあることで、彼らのやる気にもつながります。また私は、夢と情報はスタッフたちと共有することが大事だと考えています。私が過去に勘違いしたことを正しく理解してもらい、責任感を持って仕事をしてほしいです。今後の計画として、近い将来支店を出して最終的には名古屋に進出したいです！最後に、この世界で頑張っている若い人に一言。何度でも失敗してください。苦い経験は必ず後に役立ちます。恐怖心や不安感で躊躇せずに、失敗してもいいから何でもトライして多くのことを学んでください。