夏目晃宏さん(in'dex hair)

夏目晃宏さん(in'dex hair)| この人から学ぶ成功の秘訣 TBMG

ライター 前田正明 | カメラ 更科智子 | 配信日 2008.8.7

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初めてヴィダル サスーンと対面した時の衝撃

私は神戸の出身で、東京の大学を卒業してタカラ・ビューティーメイト(現 タカラベルモント)に就職しました。当時は、ヴィダルサスーン関係の営業を担当していました。タカラベルモントがヴィダルサスーンと提携して、まだ2・3年目の頃の入社だったと思います。私は10年間在籍しましたが、その当時の思い出として、やはりヴィダルサスーンご本人とお会いしたことが今でも印象に残っていますね。非常に強いオーラを感じましたし、写真でしか拝見できなかった人でしたから、伝説の人に会えて大変感動したことを覚えています。当時の日本の美容界は、技術を見て学んだり口頭で指導することがほとんどでした。ところが彼は、『展開図』を用いて書面にて伝達する技法で指導を行っていました。そんな発想力の高さがすごいなと思いましたね。すでに論理的なカットの技法が構築されていて、彼のお陰で日本の美容界のレベルがアップしたと思っています。

営業時代

有名美容師ほど来店客との距離感が近い

また、日本人のある著名な先生にも多大な影響を受けました。その方は、『我々の仕事は金太郎アメを作ること。つまり、後進を育てることが大切なんだ』とおっしゃっていました。この世界は教育産業的な面が強く、技術や道徳的なことすべてを含め、自分の分身を作ることで業が発展するんだと…。その言葉には大いに感化されましたね。しかも、特定の人間を育てるだけではなく、誰がやっても一定の水準まで達することが大切だと言われました。その分身が各支店にいることで、サロンのブランド力が高まるわけですから。それができないと、サロンや企業の成長は終わってしまいますからね。そんな発想をされていた事に、大きな衝撃を受けました。また、当時都心で開業されていた有名美容師の方たちのほとんどが、かなりフレンドリーな接客をされていたのにも驚きました。70年代には、いい意味での友だち感覚のサロンがたくさんありましたね。

夏目晃宏さん(in'dex hair)

若い美容師のために独立を支援をする

私はタカラ・ビューティーメイトに10年間在籍しましたが、当初はずっとタカラに勤めようと考えていました。現在は退職して、サロンの経営者という立場にいますが、私は美容師の免許を持っていないので接客することもないし、また経営者になろうと思ったことも実は一度もなかったんですよ(笑)。なぜかこうなった、というのが本当のところなんです。この世界では、20代後半になると独立を意識し始める若い美容師さんがほとんどです。自分のイメージするお店を持ちたいのは、今も昔も変わらないですよね。それならば、若い人たちの独立を支援できる形態はできないものかと考え、当時私が在籍していた団体の中で別組織を作って、ビジネスモデルとして立ち上げたのがきっかけでした。美容師になっても店長クラスになる人はわずかです。その中から独立して出店し、成功する人もわずか。それなら、組織運営をしながら若い人たちのために出店をサポートできたらいいなというのが原点。私は、その任務を任されたんです。

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理想は約20坪でスタッフ6人の小規模サロン

独立する若い美容師さんの中で、成功するのは数百人に一人と言われています。それならば、組織運営としてサロンを出店し、若い人の独立心を支援することができないか…。そんな発想からインデックスヘアを立ち上げ、私がその経営者になったというのがそもそものきっかけなんです。私たちがレールを敷いてあげて、後は彼らに運転を任せる。だから、サロンの形態にこだわりはなく、ただ継続するところに重きを置いています。それが大きな理念です。このインデックスヘアは、全国に17店舗を展開し、11店舗の直営店の他にフランチャイズも含まれています。特に、東京都江東区には13店舗を展開しています。江東区に集中した理由には、まずモデルケースとして20坪前後の小規模サロンを展開しようという考えがありました。それに見合うスタッフ数は約6人が理想的です。しかし、常に売上げとスタッフをキープするのはこの世界では困難です。そこで、コンビニエンス的な発想で、一定の地域に集中して出店すれば、お互いにフォローできますよね。江東区は42万人という高い人口密度だからこそ、この形態が可能だったんです。

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スタッフには旬な時期に成功体験をさせたい

大規模サロンならスタッフ数が多くなり、個々のポジションも制限されます。数十人いても店長は一人だけですから。私たちは当初、25才で店長になれるかにチャレンジしました。25才といえば一般のサロンではジュニアスタイリストからスタイリストに昇格する年齢です。さらに、技術志向のサロンでは、25才で店長なんてとても無理な話ですよ。しかし、小規模サロンならその点をスピーディーにクリアできるのではないかと考えました。私は美容師の旬な時期は25~30才だと思っていますから、一番いい時にいい経験をさせてあげたいというのが発想の原点なんです。大規模サロンなら人数や年齢差が激しくて、25才で管理するのは難しいですよね。そんなところからも、小規模サロンへのこだわりがありました。支店の数だけ店長が存在する。店長が多いと経営者との親密度も深まりますからね。それと、スタッフに失敗経験をさせるのはよくないので、できるだけ成功体験ができるようなサロン作りを心がけています。

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徹底したマーケットリサーチで集客面をクリア

出店に関して、当初は集客に対する不安はほとんどありませんでした。逆に、私は技術者ではないので、スタッフの教育面に関しての不安はありましたね。集客面では、徹底したマーケットリサーチを行いましたから、成功するかは別として大きな失敗はしないという自信はありました。サロンのコンセプトとターゲットとなる客層やエリアの特長をかなり調べましたから、大きく外れることはないと思いましたね。実はそれまでに、高級サロンや都心型の最先端サロンあるいは郊外型の大型サロンなど、さまざまなサロンの運営に携わっていたんです。いずれも経営は大変だと実感しましたから、それらの経験を生かして現在のサロン展開に落ち着きました。やはり、大衆を意識したサロン作りが大切ではないかと思いましたね。だから、江東区という下町的な立地を選びました。お店作りで注意した点は、できるだけ経営者のこだわりは捨てよう、凝った作りにはしないようにと心がけました。

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路面店にこだわった1号店の成功がモデルケース

内装に関しては、凝ったデザインにするとお客様の層が絞られるので、シンプルさを心がけています。インデックスヘアは若い人たちが運営するサロンなので、できるだけ間口を広げて幅広い年齢層に支持されるように、小さなファミリーサロンというコンセプトで進めました。あまり斬新なサロンにすると、特定の方々が来店しにくくなるし、時代性で飽きがくることもありますからね。だから当初は、いかにナチュラルでシンプルなサロンにするかで苦労しました。物件に関しては、1階の路面店にこだわりました。かつての美容室は、テナントビルや地下などの目に見えない場所での出店が好まれていましたが、バブル以降は人目につく1階のロードサイドが主流になりましたよね。そこで、不動産屋さんを訪ねて、1階で25坪の物件を紹介されました。それが第1号店です。それがかなり繁盛しましたから、その後のモデルケースになりました。セット面が8台で、今でもコンスタントに500万円の売上げがありますから優秀ですよね。

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ドミナントで出店した小規模サロンとしての強み

1 号店が成功したお陰で、その後の出店は順調に運営できました。客単価はサロンに応じて、5,000円、6,000円、7,000円、10,000円台に設定し、それぞれメニュー構成も変えています。スタッフの生産性もサロンごとに設定しており、毎月計算通りに納まっています。スタッフ教育に関しては、店長が大勢いますので彼らが中心になって指導しています。それと、外部から講師を招いて、新しい技術の指導もお願いしています。今では、技術面よりも接客面やおもてなしといった高いレベルでのサービスの向上が課題ですね。集客に関しては、お客様はいろんなサロンに通っていらっしゃるので、できればインデックスヘアのグループ内で顧客になっていただければと考えています。そのための集中型の多店舗展開(ドミナント)であり、それが我々の強みであると考えています。また、小規模サロンとしての形態をとっているので、お客様がスタイリストの指名を変えたい時は、気兼ねなく違う店舗に行けますよね。これが、同じサロン内なら指名を変えることは難しいでしょう。それも強みの一つです。

夏目晃宏さん(in'dex hair)

地域の基準店として支持されるサロンでありたい

今までのデータから見て、お客様はインデックスへアを、「気楽に行けるサロン」として捉えているようです。そこで我々は、一つの平均的なサロンでありたいと考えています。それは、「江東区でインデックスヘアに行けば合格点」といったポジションです。ファッションやレストランでもありますよね、平均的なお店が。つまり、決して高級店ではないですが、コストパフォーマンスで満足していただけるサロン設定を心がけています。それとスタッフに対しては、独立を支援する意味で、店長クラスのスタッフに経営面に関する指導も行っています。最も大切な初期投資と生産性管理のノウハウなどを店長会議などでレクチャーしています。今後は、理容と美容の垣根を越えた一体型サロン展開の推進を考えています。今でも、若い男性客の比率が、45%の店がありますから。以前ほど、男性客が増えることに違和感がないようで、むしろそれが日常的になりつつありますね。それと、一つの建物の中にサロンとネイルショップやエステティックなどが共存した複合店の展開も検討中です。すでにモデルケースとして導入している支店がありますから、それが今後の課題ですね。

in'dex hair
夏目晃宏さん(ind'ex hair)

夏目晃宏(ナツメアキヒロ)

兵庫県出身。有限会社インデックス代表取締役。大学卒業後、タカラ・ビューティーメイト株式会社に入社。10年間在籍し、その後、大手老舗美容室を経て現在に至る。主に、住宅降接型・小型サロンの経営を事業とする。2002年9月にin'dex hair 東大島店をオープン。その後、 03年2月に住吉店、04年2月に東陽町店、7月に 亀戸店、8月に名古屋・栄店、05年4月に大島店、7月に菊川店、8月に清澄白河店、 06年2月に DISTRICT OF in'dex hair 森下店、4月に錦糸町店、4月にin'dex hair rive gauche 門前仲町店、7月にin'dex hair rive gauche 清澄白河店、07年3月に in'dex hair rive gauche spa 両国店、8月にin'dex hair PLUS 西大島店、9月にDISTRICT 清澄白河店、11月にin'dex hair TIME 北砂店、08年2月にHOUSE OF in'dex hair 富岡店をオープン。

※2008年9月4日現在

シリーズ:この人から学ぶ、成功の秘訣「TBMG」

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