加藤孝子さん（ROOTS）| この人から学ぶ成功の秘訣 TBMG

私の叔母が銀座で美容室を経営していまして、子供の頃から『あなたは美容師に向いてるわよ。』ってずっと言われ続けていたんです。まるで、洗脳されるかのように（笑）。幼い頃から銀座のお店に足を運び、訪れるクラブのホステスさんたちが叔母の手にかかると魔法をかけられたお姫様のように変身して華麗なオーラ全開でお店を出て行く様子にワクワクしていました。子供のくせに銀座に遊びに行くのが楽しみでした。それが、美容師を目指したきっかけですね。しかし、高校時代私は、美術系の仕事に就きたいと思っていました。叔母も最初は美術の先生でありながら個展を開いたりもしていたんですが、30才くらいから美容学校に通い始めて美容師になったんです。私も美大に進もうかと悩んでいたのですが、叔母から“静止画より人間と携わっている方がリアルで面白い”とアドバイスされて気持ちが少しづつ変わりました。同じデザイン的な仕事で、動く彫刻なので面白いと。

美大への進学はまだ諦めきれず、高校時代は美術の画塾にも通ってました。随分、この２つの選択で悩みましたね。実は当時の美容学校は今とは違って不良っぽい人が多かったのでかなり抵抗がありましたし、美大は美大で進学した先輩たちが希望通りの道へ進めなかった現実を目の辺りして将来の不安もありました。こんな気持ちの中、叔母に『大事なのは周りの環境ではなく自分自身の気持ちでしょう。』と言われ、新たな美容の世界にチャレンジしようと決断しました。ただ、頭の片隅にはダメならすぐに美大の道に戻ろうと考えていましたけど…（笑）。それから、叔母のすすめで東京の美容学校に入学することにしました。

美容学校に入学した当初は、デザイン志向のまじめ生徒とやはりヤンキーっぽい感じの生徒の2種類に分かれていて、そんな雰囲気の中で続けるのは無理かなと思いました。その頃、ワインディングコンテストがあり、私はロクに練習もせずにコンテストに出場したんです。しかし結果は全校で第4位！！美容学校を辞めて美大進学を考えていたので全くやる気がなかったのに。。。本気になれば1位になれるかもしれないと思い、真面目に練習を始めました。なんと、次の大会では 1位！！！そこから私の負けず嫌いに火がつきましたね。『やれば出来るじゃん！』って（笑）。それ以降も一生懸命頑張って、卒業の時に最も数多くのコンテストで入賞した生徒に贈られる『MVP』を頂いたんですよ。人より練習すれば確実に技術は身に付いてその分の成果を得られる世界なんだなと実感しました。とても充実した学生生活でした。それがきっかけで本腰を入れて美容師の道に歩もうと決心しました。そして就職したサロンはスタッフが500名ほど在籍する大手サロン。私は渋谷店に配属になり初出勤に臨もうとした当日のことでした。今迄学生時代から無遅刻無欠勤だったのに、なんと大寝坊!!起きたらお昼過ぎだったんです。ここで私の美容人生が終わったと思い途方に暮れました。

実は、入社に伴い引っ越しをしていたのですが、新しい部屋の鍵を初出勤前日の3月31日にもらい、深夜まで友達と荷物の整理をしていました。『このまま寝ずに出勤すればいいかな。』と思っていた矢先に爆睡。ひどい有様です。起きて気がつけばお昼過ぎ！急いで会社に電話して『今日から出勤するはずの加藤なんですが、、、』と言うと『えっ！とにかく今から来なさい。』と言われまして（苦笑）。私の中ではケジメをつけるつもりで『早々ですが、責任を取って退職させて頂きます。。。』って言ったんです。今までの人生の中で遅刻や欠席をしたのも初めてだし、ましてや初日。私が逆なら怒りますよ。しかし、予想に反して店長から『一度の失敗でくじけてどうする。石の上にも3年！これからの頑張りで名誉を挽回しなさい。課題が出来たな。』と励ましてくれました。その後は、朝1番に出勤して夜は最後まで働くように心がけましたね。あの時の店長の強いアドバイスで、今の自分があるのかもしれません。

在籍中、私の中には幾つかの課題がありました。まずは初出勤の名誉挽回、スタイリストになったらナンバー1になること。更に、将来は独立という夢があったので大手サロンの技術やシステムなど学びたいと考えていました。そのために実績、スキルを上げなければと思い、カット・パーマ・カラーリング以外にもメイクスクール、着付け教室など、トータルビューティーを学ぶ為に、出来るだけ多くの世界を見て幅広い知識を身につけました。実は、当時私が目標にしていたのは叔母なんです。着付けやセットはもちろん、当時から海外に積極的に行き、いろんな資格を修得していろんな技術をマスターしていました。プライベートでもバイクに乗ったりスキューバーダイビングもしているんです。今でもバイタリティーがあり会うたびにパワーをもらえる人！その影響が強くて、いつも目標にしていましたね。

その後は、同じサロンでお世話になった先輩が独立することになりオープニングスタッフとして参加させて頂きました。個人店の立上げは想像以上に細かいことばかり。集客のための宣伝広告から経営に関する数字の管理まで、大手サロンでは経験した事のない仕事を任されました。技術者でありながら、マネージャー的な裏方の仕事をこなすのはとても大変でしたね。しかし、以前から自身のサロンを持つことが目標だったので、異なるタイプのお店の経営ノウハウを学ぶことができ、とてもいい経験になりました。それからしばらくして、表参道の美容院に移りました。オーナーは業界誌・一般誌・セミナー講師・ヘアショーなどで名前が知られ活躍している方で、更に違った形態を実体験で学ばさせて頂きました。

3店舗目のサロンも出店したばかりだったのですが、オーナーはヘアショーやセミナー講師など業界内で活躍している方で、サロンワークより主に外の仕事を行っていました。そこで、私なりにお店を盛り上げようと、今ではあり得ない行動をとったんです。一般誌の会社に自分をアピールしに行き、ヘアー雑誌の仕事を頂いて集客に繋げたり、TVの変身コーナーなどを担当して話題を作ったり!! いろんな経験をしながら夢へのイメージを膨らませていましたね。その後、表参道店に続いてオープンした渋谷店の店長を任されました。この頃には独立意識がかなり高まっていましたね。そして、2003年3月1日遂に渋谷に『ROOTS』をオープンさせました！大手サロンから個人経営のサロンまで様々な形態を実体験で学んで美容の世界が広がりました。この仕事は学ぶことが多すぎて時間を無駄に出来ないですね。しっかりとした目標を持つコトが大切です。具体的に、1年後...5年後...など、目標に向けて努力を重ねれば、きっと達成できるはず。自分自身の技術を磨くことも怠らずに、口で言うより行動あるのみですね。

独立で苦労したことは物件探し。こればかりはご縁ですからね～。場所は自ずと渋谷と決めていましたが、最初は閑静な住宅街を希望していました。ところが不動産屋さんに『これからは都心部の時代だよ』と半ば強引に勧められて今の公園通りにオープンしました(笑)。結果的には、駅から近いのでお客様に喜んで頂きました。実際に自分のサロンを持ってみて、いろんな人の協力があったからだと感謝しています。特にスタッフは財産ですね。オープン当初はスタッフがすぐ辞めてしまうと聞きますが、７年目を迎える今でもオープニングスタッフが活躍しています。やはりチームワークが大切だと痛感しています。スタッフ教育で１番気を使っているのはモチベーションの維持です。美容の楽しさと厳しさをもっと知ってもらい幅広い年齢層のお客様に対応できる個性的なスタッフになってほしいと思っています。同時に、オーナーだからと言ってスタッフと距離を置くことはせず、彼らと同じ輪に入って共同作業をしています。いつまでもいい関係でいたいと考えているんです。

私は昔から、彫刻的なカットで作るメンズスタイルに関心が強く、オープン当初から他のサロンにはない男性客の獲得に力を入れていました。今では美容室にメンズがいらっしゃるのは当たり前ですが、20年前ではあり得ないことでした。そのおかげでメンズ雑誌のいろんな創刊に携わり、集客に繋がりました。今では来客の男女比率は５：５。お客様の層も老若男女を問わず来店され、ファミリーサロンのような形態になっています。そんなお客様のニーズにもっと応えるためにスタイリストを増やして更に活気のあるサロンにしていきたいですね。私自身、仕事が趣味と言っているくらい美容が好きなので、いつもやりがいを感じています。 1日仕事がギッシリと詰まっていると、ワクワクして仕方ありません(笑)。最後に今アシスタントとして頑張っている人、これから美容師を目指す人に伝えたいことがあります。いろんな悩みや壁にぶつかった時こそがレベルアップしている瞬間です。くじけず前に向かって下さい。私もいろんな経験をしたからこそ今があるんだと思います。経験は財産です。そんな時こそ、プラスに考えてポジティブに進んで行ってほしいです。人に刺激と感動を与えられる美容師になれたら素敵だなと思います。